いい心臓・いい人生 【第八十六号】アジア弁膜症シンポジウム(その2)

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いい心臓・いい人生 【第八十六号】アジア弁膜症シンポジウム(その2)
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発行:心臓外科手術情報WEB
https://www.shinzougekashujutsu.com
編集・執筆:米田正始
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(八十五号からの続き)

 

TAVIをやっている先生方はその良さを発表され、それはそれで結構なのですが、
意外な盲点や弱点が明らかになりました。これから外科が内科のパートナーと
してもっとお役に立てるのであれば嬉しいことです。

 

私自信は大動脈弁形成術と心膜再建およびデービッド手術つまり自己弁温存式
大動脈基部置換術の比較検討を行いました。それぞれの持ち味と今後の課題を
示し、多数の質問を戴きました。

 

それからこの15年間改良を重ねて来た心房縮小メイズ手術とくにMICSで小さな
傷跡で行う手術を発表し、アジアではこの手術が必要な患者さんが多数おられる
ため関心を持って頂いたようです。中国をはじめフィリピンやカンボジア、
ベトナムなどの先生方から引き合いがあり、これらの国々でもお役に立てるので
あれば光栄なことです。

 

そして最終日にこれまた15年近く力を入れて来たPHO乳頭筋最適化手術の最近の
成績を発表しました。虚血性僧帽弁閉鎖不全症を含む機能性僧帽弁閉鎖不全症
の長期治療成績が極めて良く、なかでも大動脈弁膜症に続発する機能性
僧帽弁閉鎖不全症では術後遠隔期に心機能は正常レベルにまで回復することが
示され、多数の質問を戴きました。

 

とくにどうやって吊り上げ張力をベストに調整するのかという質問が多く、それに
しっかりと答えられたため、これから使いたいと言って下さる方が多く、これ
以上光栄なことはないと思いました。

 

シンポジウムでは午後の自由時間が取れる機会があり、皆でMuluの大自然を楽しみ
ました。遊びながら、休憩時間にはまた、あの手術で吊り上げをこうしたら
もっと良いのでは?等々のご質問を戴き、けっこう充実していました。

 

ちなみに初日の歓迎ディナーにはサラワク州の観光大臣が来られ、いかにして
世界遺産のMuluを守るか、熱く語っておられました。日本は公害予防の技術が
進歩しているため是非活用して下さいとお話しておきました。昔の四日市ぜんそく
などの苦い経験と、そこから這い上がった努力なども紹介し、質問をいくつも
頂きました。

 

最後の夜にはディナーの後、悪友で連れ立って地元の食堂へ行き天然ものの魚や鹿
などを地元の人たちと頂きました。これもボルネオの醍醐味と皆幸せなひと時
でした。

 

アジアを中心に世界中から集まった仲間とにぎやかに勉強できた4日間でした。
この機会を下さった医誠会病院の皆様とアジア弁膜症アカデミーの方々、
そして一緒に楽しい時間を過ごして下さった先生方に厚く御礼申し上げます。
敬具

 

平成28年11月22日

 

米田正始 拝
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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