心房細動とは 【2020年最新版】

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最終更新日 2020年2月12日

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◾️心房細動とは

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心房細動とは心臓が打つリズムが不規則になる、それも規則性のない不規則をもつ不整脈です。たとえば4回に1回抜けるとか、1回おきに大きく打つなどの規則性がないaf、バラバラなリズムですね。

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心房細動は心房のなかで電気信号がぐるぐる回るために起こります。多くの場合、肺静脈から左房へ入る付近が悪い電気信号を出すのに関係しているようです。

心房細動は一番多い不整脈の1つで、日本人では70代の5%、80代の10%が心房細動で苦しんでいるというデータもあります。国民病と言っても過言ではないと思います。

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また同じ理由で血液がよどんで血栓ができやすくなります。心房細動では毎年7%の患者さんが脳梗塞を起こします。すごい数ですね。しっかりと対策を立てるのが患者さん個人とご家族、ひいては社会のためです。脳梗塞のリスクファクターとして,リウマチ性弁膜症,甲状腺機能亢進症,高血圧症,糖尿病,左心不全,または脳梗塞などの既往が挙げられます

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◾️心房細動の原因 ——— どんな時に起こる?

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代表的なものとして高血圧症,心筋症,僧帽弁または三尖弁の弁膜症,大動脈弁の弁膜症、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、甲状腺機能亢進症,飲酒が挙げられます。その他の原因としてさまざまな心疾患、肺塞栓症、心膜炎、COPD、などがあります。60歳未満の患者でとくにはっきりとした原因がない心房細動を孤立性心房細動と呼びます。

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◾️心房細動のタイプ ——— 時間経過から

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1)急性心房細動とは,48時間未満に終息する新規発症心房細動です。

2)発作性心房細動(PAF)とは,48時間未満に終息し,正常リズムに自然に戻る再発性心房細動です。

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3)持続性心房細動は1週間以上持続し,正常リズムに復帰するためには治療を必要とします。

4)慢性心房細動は正常リズムに復帰させることができません。心房細動の持続期間が長いほど自然復帰はしづらくなります。これは心房の拡張するためで、除細動はやりにくくなります。ただしカテーテル治療や外科治療では治せることがあります。

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◾️症状と徴候 ——— 知っておくと役立ちますilm09_ad09003-s

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心房細動そのものでは症状はありませんが、脈拍が速くなり140〜160/分に達すれば,動悸や胸部不快感、呼吸苦などが出ます。脳梗塞などを合併すればもちろんその症状が加わります。

脈拍は不規則で、心室拍動が速いときには脈拍欠損(つまり心臓が空打ちする)が見られます。

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◾️診断

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診断は心電図でつきます。不規則なばらばらの間隔でのリズムです。

心エコー検査と甲状腺機能検査が重要です。

心疾患たとえば左房拡大、左室の動き方の異常、弁膜症、心筋症の評価や,脳卒中の他の危険因子たとえば心房うっ血や血栓など)の診断に役立ちます。心房血栓は心耳に好発し経食道心エコー検査によって診断がつきます。

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◾️治療 ——— 重要ポイントを押さえることが大切

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心房細動の治療では、その原因が治療されれば,以下の3つが治療の中心となります。

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1)心拍数のコントロールは通常安静時で80/分未満が目標です。

頻脈たとえば140〜160拍/分の急性発作に対してはβ遮断薬(例,メトプロロール,エスモロールなど)が望ましく、カルシウムチャネル拮抗薬(例,ベラパミル,ジルチアゼムなど)も有効です。これらは経口で長期の心拍数コントロールに使用できます。これらが無効のときには,アミオダロンが必要となります。

心拍数コントロール用の薬物に反応しない患者には,完全房室ブロックを惹起するためにカテーテル治療(房室結節の高周波アブレーション)を行うことがあります。

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2)リズムコントロール:

心不全患者などでは,心拍出量を改善するために正常リズムの回復が必要となります。ただし正常リズムにもどっても長期抗凝固療法が必要な場合があります。

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除細動には,同期式DC(電気ショック)またはお薬が使用できます。心房細動が48時間を超えている場合は抗凝固療法を行います。 ワーファリンを用いた抗凝固療法は,可能な場合,除細動3週間前以前から維持し,心房細動が再発しうるため,無期限に継続します。

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同期式DCは,患者の75〜90%で心房細動を正常洞調律に復帰させますが,再発率は高いです。DCは,持続期間の短い心房細動,孤立性心房細動,または可逆的な原因を伴う心房細動の患者で良く効きます。その一方、左房が拡張しているとき(径50mm超),心房心耳の血流が遅いとき,または顕著な構造的心疾患が基礎にあるときにはあまり効果はありません。

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洞調律に変換するための薬物には,クラスⅠa(ジソピラミドなど),Ⅰc(プロパフェノンなど),およびⅢ(アミオダロン、ソタロールなど)の抗不整脈薬があります。

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3)ほとんどの患者の長期治療中には,血栓塞栓症の予防対策が必須です。

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血栓塞栓症のおそれがある場合、発作性心房細動を繰り返す時や,持続性または永続性心房細動を呈する患者には抗凝固薬を継続すべきです。

アスピリンはワーファリンよりも効果は低いのですが,血栓塞栓症のおそれが少ない患者またはワーファリンが禁忌の患者さんに用います。ワーファリンが使いづらいときにはDOAC(プラザキサ、エリキュースなど)を使う事が増えました。ワーファリンおよび抗血小板薬が絶対禁忌の場合などに左心耳を外科的に結紮やクリップするか,経カテーテル装置を用いて縫合します。

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◾️最後に

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心房細動の治療は、要するに薬でダメならカテーテルアブレーション、それでだめなら心臓手術があるわけです。

カテーテルや手術を恐れて脳梗塞になり、いのちを落としたり半身不随になる(死ぬよりつらいと言われたことがあります)というのは是非とも避けたいことですね。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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