最終更新日 2020年2月28日
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◾️エプシュタイン病に対するコーン手術
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エプシュタイン病の三尖弁は重症例では弁の位置異常や質的異常のため弁形成が困難なことがありました。実際以前の手術成績は必ずしも安定せず、外科医泣かせの病気のように言われたことが永くありました。
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これを解決したのが2007年に発表されたコーン(cone、円錐)手術でした。
文字通り三尖弁尖の大半を一旦取り外し、弁尖が右室と異常に繋がっている筋肉を切除し、弁として機能できるコーン(円錐)状にしてから本来の正しい三尖弁輪に取り付ける手術です。
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右図はそのコーン手術の説明図です。右側のコーンのような形に三尖弁を一度外して組み立てているところです。
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◾️コーン手術、もう一つの利点
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同時にエプシュタイン病特有の巨大右室をある程度縫縮し、かつ弁輪の位置を正常化することで右房になっていた右室を本来の右室に戻し、機能回復させるという、右室形成術のような利点もあるのです。
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ある意味、三尖弁の修復・自家移植と言った複雑な手術ですが、この手術はエプシュタイン病三尖弁形成術の革命と言われるほどの威力があります。ただしきちんと修復する場合のお話です。
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◾️そしてミックスでのコーン手術
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私たちは先天性心疾患の専門家と協力しこの手術を磨いてまいりました。
現在はこのコーン手術を傷跡の見えにくい、骨も切らないMICS(ミックス)で行えるようになりました。
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通常行われている胸骨正中切開(約25センチの傷が胸の真ん中に残ります)と比べて利点があります。
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上写真はMICSで行ったコーン手術の術前(左側)と術後(右側)の心エコー写真です。
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術前は弁尖どうしが届かず、弁がないのと同じほど血液が漏れ強い逆流がありました。当然患者さんの心不全は強かったです。術後はコーン(円錐形)のおかげで弁尖が届くようになり、きれいに噛み合い逆流はほとんどありません。患者さんは顔色も良くなり運動能も格段に改善しました。もちろん傷跡は外からはほとんど見えません。
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MICSなら仕事復帰も早く、からだの傷跡が小さく見えにくいため心の傷もある意味小さくなり、傷跡が仕事などに支障ある患者さんにも使えます。
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ただし心臓手術も安全第一です。MICSで正中切開に劣らない安全性を確保して行うことが大切です。
慎重な術前検討とプランニングが重要です。それによって患者さんに真に益する心臓手術になるでしょう。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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