最終更新日 2020年2月28日
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◾️周術期心筋梗塞とは?
心臓手術たとえば弁膜症手術や冠動脈バイパス手術の際に心筋梗塞が合併することがまれにあります。
これを周術期心筋梗塞と呼び、命に係わることもある大きな合併症と位置づけ、その予防に全力を上げています。
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しかし世の中ではこの周術期心筋梗塞のためいのちを落とす患者さんは少なくありません。
中にはその病院のチームで全力挙げた治療で生き延び、しかしそのために拡張型心筋症になって心不全で苦しむというケースもあります。
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◾️周術期心筋梗塞がもとで拡張型心筋症になると
心筋梗塞を起こした部位が次第に広がり悪化すると、それ以外のもともと健康な左室壁が反応して広がり、悪化します。運が悪いと拡張型心筋症という、大きな動かない左室になってしまいます。
私たちはこれまで拡張型心筋症の手術で多数の患者さんをお助けして参りましたが、その中にこの周術期心筋梗塞による拡張型心筋症が含まれています。
この病気はケースバイケースであることが多いのですが、中に助けられる、元気になれることがあります。
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つい最近も他院にて2弁置換手術の際に周術期心筋梗塞を合併し、その後心臓が次第に大きくなり、左室の直径が10cm(正常の2倍、体積では8倍近いです)を超え、心不全が悪化して私の外来に来られた40代の患者さんがおられます。
基本的に心移植の適応ですが、まだ歩くちからがあり、補助循環(いわゆる人工心臓)では生活の質QOLが悪いからとこれを拒否されて私の外来に来られました。
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すでにCRTDという心不全用のペースメーカーも入っており、左室形成術は難しいと他院で考えられていましたが、工夫をしてCRTDケーブルを温存しつつバチスタ手術の改良型を施行し、元気になられました。左室の直径は65mmまで縮小し、駆出率は2倍以上の32%まで改善しました。これからお薬や心臓リハビリの調整で一層の改善を目指しています。
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◾️しかし、治せることが多々あります
周術期心筋梗塞にもとづく拡張型心筋症では左室の悪いところと良いところが比較的明瞭で、悪いところを形成しつつ、良いところがちからを発揮できるように左室をまとめあげる、こうしたことが他の心筋症よりやりやすいことがあるのです。ただし再手術というハンデがあり、再手術に熟練したチームであることも必須です。ちなみに上記の患者さんは4回目の手術で、癒着はかなりありましたが、これは手術の工夫で切り抜けることができました。
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もしこうした周術期心筋梗塞による拡張型心筋症でお困りの方がおられましたら一度ご相談ください。お役に立てることがあるかも知れません。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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