患者さんは虚血性心筋症の83歳女性。
主訴は労作時胸部不快感。左室形成術にはややご高齢ではありますが、これはお元気になって戴けると判断し、手術に臨みました。
心胸郭比CTR78%、冠動脈造影で3枝病変。心エコーにて左室拡張末期径LVDd48m、駆出率23%、MR I度。
高齢の患者さんですが、心臓が良くなればアクティブな生活を送れる方であり、かつ心臓を良くできるめどが立つため手術を行いました。
左室拡張末期(左)と
同収縮末期(右)像。
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2.まず冠動脈バイパス手術から。
右冠動脈4PD枝に
静脈グラフトをつけています。
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バイパスをつなぎます。
年齢と心機能を考えて
適切なグラフト選択を心がけています。
ここでは静脈グラフトが最適と判断しました。
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バイパスをつけました。
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ここでも完全血行再建は重要です。 .
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5.左室でやられたところが心尖部つまり先端付近であったためドール手術を行いました。
この病変の位置と性質ならドール手術でも左室の形を歪めず、
患者さんは元気になれると判断したためです。
なお現在はこれまでの100例以上の左室形成術を検討した結果、セーブ手術の特長をもったドール手術を開発し、心基部までやられた左室でも、形を崩さず形成縮小できるドール手術を行っています。国際学会でも発表していますが、近いうちにジャーナルでも発表いたします。
矢印が形成用のリングです。(僧帽弁形成術を参照)
左室形成術にこのMAPを併用することで、成績がさらに上がった感があり、
とくに術後のMRの出現はゼロに近づきました。
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左前下降枝つまり心室中隔がやられたケースでの左前下降枝に対するバイパスには議論がありますが、
私たちは心室中隔の根元の心筋とくに冬眠心筋や可逆障害心筋をできるだけ助けるために、
また時に右室機能をも守るために、左前下降枝にバイパスをつけるようにしています。
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8.左室駆出率も23%から42%へと増加し、患者さんはご高齢ですが十分な心臓リハビリと体力回復ののち術後30日目に元気に退院されました。この手術と年齢で、当時としてはまずまずの入院期間でした。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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