1) 手術が必要な大動脈の病気とは?―「こぶ」と「き裂」?

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◾️大動脈の病気にはどういうものが?

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真性大動脈瘤と大動脈解離(別名 解離性大動脈瘤)があります。

真性大動脈瘤は大動脈の「こぶ」で、大動脈解離は大動脈の「亀裂」とも言えましょう

それぞれ油断すると怖いところがあります

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◾️真性大動脈瘤とは

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大動脈瘤はあるサイズを超えると破裂しやすくなります真性大動脈瘤(りゅう)は大動脈の壁が弱くなり 膨らんでこぶのようになる病気で、近年増加の傾向にある病気群です。

あまり症状がない場合が多く、瘤の場所によって嗄声つまり声がかすれるなどの症状がでる程度ですので、注意が必要です。

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瘤が破れるとほとんど即死 になってしまいますし、血栓などが瘤の中にできてそれが血管を塞いでしまうとその臓器に大きな問題が起こり ます。

たとえば脳ならば脳梗塞が起こり命にかかわる事態となることも少なくありません。

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A309_084真性大動脈瘤は胸部大動脈の場合直径6cm前後になれば破裂の危険が高まります。胸部レントゲン写真である程度わかることがありますので、健診が大切です。

腹部大動脈では直径約5cmが目安です。こちらの大動脈瘤は触診つまり手で触ると判ることが多く、エコーがあればほぼ診断できます。CTはもちろんベストです。

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危険なサイズは上記のように胸部直径6cm、腹部直径5cmですが、マルファン症候群や大動脈二尖弁などの結合組織疾患がある方や、大動脈炎の患者さん場合はそれより小さい直径で破裂することが知られており、胸部大動脈で言えば直径5cm前後で手術が勧められることもあります。

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また動脈瘤の形が紡錘状では上記が目安ですが、局所的にぽこっと膨らむ「嚢状瘤」では、サイズが小さくても破れやすいため治療が必要となります。

その患者さんの大動脈の強さも勘案した、キメ細かい対応がいのちを救うのです。

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◾️大動脈解離とは

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大動脈解離は大 A309_095動脈の壁が内外に裂けて、

出血したりさまざまな内臓の虚血を起こし、そのままでは命にかかわる重い病気です。

症状は強烈な胸、背中やお腹の痛みがあります。解離つまり裂ける場所によって痛みの場所は違います。また大動脈が裂ける時にその枝が潰れ、そのためその枝に関係した臓器の症状が出ることもあります。例えば心臓なら胸の痛み、下肢なら下肢の痛みですね。

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そのタイプによっては即、緊急手術によってのみ救命できるA型解離と、お薬や点滴その他でゆっくりと安定を図るB型解離があります。

これらの見極めはCTなどの検査で容易にできます。ともあれ強烈な胸や背中その他の痛みがあれば、直ちに病院へ行きましょう。命を守るために。                                                                                                                                   .

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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