心臓病患者さんで「エホバの証人」の方

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信仰はその人にとってはいのちです。

私は研修医時代にある宗教の関連の病院でそう教えその方の宗教は尊重されねばなりませんられました。

医学が病気のかなりの部分を治せても、患者さんの悩みのすべてまでは解決できない以上、信仰や宗教あるいは哲学などはひととしての患者さんを助けるために重要です。

 

エホバの証人と言われる宗教を信仰する方々は宗教上の理由から輸血を拒否されます。

SANYO DIGITAL CAMERA心臓血管外科では人工心肺(写真左)を用いることが多く、

血液が一時的に薄くなりまた固まりにくくなるため、輸血が必要な場合があります。

それは大きな手術になればなるほど必要になります。

 

エホバの証人の患者さんの場合、時には輸血さえできれば手術は成功、しかし輸血しなければ手術を乗り切れない、つまり次第に状態が悪化して死亡するということが起こり得ます。

こうしたケースでは患者さんを救命するために医療を行うものとして、大変つらいものがあります。

 

輸血は何百万人何千万人もの患者さんを助けて来ましたが、わけあってこれが許されない宗教もありますしかし私たちはエホバの証人の信者さんが自らの信仰と信念にもとづいて、輸血を拒否される場合、それを尊重するようにしています。

さまざまな工夫をこらして、出血を減らし、無輸血で乗り切れるように全力をあげています。

しかし大きな手術ではエホバの証人の患者さんの生命リスクは一般の輸血ができる心臓外科患者さんの数倍かそれ以上にもなることがあります。

大きな手術の場合は大変なリスクになることさえあります。

 

そこで上記の工夫や努力だけでなく、患者さんやご家族と十分相談し、納得できるラインを煮詰めてから手術を行うようにしています。

 

心臓手術事例:

冠動脈バイパス術を昔、他病院で受けられたエホバ証人の患者さん(60代男大きな手術を無輸血で行うためにさまざまな工夫を積み重ねます性)が、そのバイパスがまもなく全部閉塞し命の危険があると、再手術を希望してハートセンターへ来院されました。

昔のバイパスは1本だけ残っていて、それが閉塞しつつあるという所見で、確かに再手術によってのみ救命できる状態でした。

 

その病院にも立派な心臓外科があるのですが、手術は「不可能」ということで断られたそうです。

しかも以前の心筋梗塞のため心機能が落ちている。

再手術では出血がある程度は増えるのに、もともと貧血気味で、わずかな出血でも命取りの懸念がある。

しかし無輸血で、生きるチャンスを下さいと熱心に依頼され、手術をお引受けしました。

 

術後の冠動脈CT検査で2本の新バイパスがきれいに写っています こうした状況で、工夫して、前もって薬の使用も調整し、

前回の手術とアプローチを変え、出血を極力抑え、手術内容もコンパクトに抑えて、

再手術(オフポンプバイパス手術)は成功し(写真)、

胸痛はすっかり消え、運動もできるほどになられ、無輸血でお元気に退院されました。

退院の時には「第二の人生をありがとうございました」と言って下さいました。

 

お便り17をご参照ください。

患者さんとご家族の皆さんが、エホバの証人の信者さんの無輸血手術は高いリスクが伴うことを十分に理解し、協力して下さったおかげです。

こうしたぎりぎりの状況では密なコミュニケーションに支えられた、お互いの理解やチームワーク、協力体制が大切とあらためて実感しました。


◆患者さんの想い出: 絶体絶命の状態から心臓手術で元気になられたAさんのお話し

僧帽弁形成術のあとの傷跡が目立たないのが特長のポートアクセスMICSですが、エホバの信者さんの場合、絶対無輸血の心臓手術に貢献するのです。

というのは通常の胸骨正中切開(胸の真ん中を普通は25cmも切ります)では骨の切口からじわじわと出血しますが、MICSではそもそも骨を切らないためこうした出血の心配がないのです。

ということでエホバの信者さんにもこのMICSでの手術たとえば僧帽弁形成術はいっそうお役に立っています。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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