4b) 下肢の閉塞性動脈硬化症に効く手術は―正しい選択を

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近年、高齢化や食生活の変化のため動脈硬化症が増えており、下肢の閉塞性動脈硬化症もずい下半身を支える動脈です。これらが詰まったり狭くなったりすると治療が必要になりますぶん増えました。

よくあるパタンは腸骨動脈(腹部大動脈がおへそのあたりで左右に枝分かれした直後の動脈です)や大腿動脈(腸骨動脈より足側の動脈です)、その先にある浅大腿動脈膝窩動脈などが細くなったり詰まったりする形です。いわゆるASOですね。

歩くと足が痛むのは要注意です。こうなりますと、ある程度歩けば下肢が痛みます。そこで休憩すると痛みが取れますが、再び歩きだすと、しばらくしてまた痛みます。下肢の動脈の状態が悪くなればなるほど、その歩ける距離が短くなり、さらに悪化すれば、安静時つまりじっとしていても痛くなります。

脊柱管狭窄症という脊椎(つまり背骨)の一部が狭くなって神経痛が出る病気と症状が似ることがあり、診断が大切です。

ASOがさらに悪化すれば、足に潰瘍ができて強い痛みに苦しんだり、足が腐ってきて痛みと毒素が全身を侵すため、命を救うために足やゆびを切断する場合もあります。

上記の太い動脈レベルでの病気(狭くなったり詰まったり)で、かつその足側の動脈がまずまずのサイズと形を保っていれば、下肢血管のバイパス手術によって改善します。痛みも改善し、歩く距離も伸びる方が多いです。

下肢動脈の血行再建のためのバイパス手術を示します具体的には動脈が狭くなったり詰まったりする病気の部位によって、大動脈―大腿動脈バイパスとか大腿動脈―膝窩動脈バイパスなどがあります。左に模式図を示します。

また状態の悪い方、超高齢の方などには負担が少ない方法として、大腿動脈ー大腿動脈バイパス(左図)や腋窩動脈ー大腿動脈バイパスなどで安定化を図ることもあります。

カテーテルで動脈を広げる治療(PTAと略します)も近年進歩し、状態の悪い患者さんや、病変部が短い患者さんあるいは糖尿病血液透析などの基礎疾患が比較的穏やかな方には適応になることがあります。

それらの選択は内科の先生方とも相談して、もっとも患者さんに合うものを選ぶようにしています。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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