心臓腫瘍について―しっかり取って確実に再建すれば多くは治せる

Pocket

心臓腫瘍という病気はあまり知ら

177372503

心臓腫瘍のばあい、悪い細胞をただやっつけるだけでは患者さんが救えないこともあります。しかしそのままではさらに困るものです。的確な作戦と実行が大切です

れていないと思いますが、

少数ながら存在し、患者さんにとってはその確実・的確な治療が大切です。

 

心臓腫瘍の多くは良性腫瘍ですが、ときに悪性のものもあります。

また良性であっても  心臓という場所がら、

その一部がちぎれて血流に乗って飛べば脳梗塞などを起こすものもあり油断できません。

ここでは大人の心臓腫瘍で主なものを挙げます。

 

1.粘液腫(ねんえきしゅ): Fotosearch_CCP09001


心臓腫瘍で一番多く、3分の1を占めるものです。

とくに左房粘液腫が多いです。

これがちぎれて飛ぶと脳梗塞などの問題が起こるため、速やかにオペすることが必要です。

良性腫瘍ではありますが、

不完全に切除すると何年か経って再発することがあり、

あくまでも完全切除が手術の原則です。

粘液腫は腫瘍?それとも?: かつては謎の病気でした

 

お便り11お便り43をご参照ください

 

粘液腫にたいするミックス手術: 比較的お若い患者さんをはじめ、創も痛みも小さいためお役に立ちます


2.弾性線維腫:Fotosearch_CCP01059心臓腫瘍には良性と悪性があり、悪性の中には転移性と原発性があります

弁に発生しやすく、ちぎれて飛ぶという心配があります

 

良性腫瘍ではありますが、もしちぎれて飛ぶと

右心系なら(右図の紫色のところから肺へ肺塞栓に、

左心系なら脳梗塞や腎梗塞その他の梗塞(右図の赤い色の大動脈から脳や腎臓へ)が起こり、危険です。

良性だからといって、油断は禁物なのです。

 

3.脂肪腫:

厚い脂肪組織のように見えることもあります

脂肪浸潤と呼ばれるものと見極めがつきにくいこともあります。

 

4.その他の良性腫瘍:

横紋筋腫、線維腫、血管腫、房室結節中皮腫、奇形腫などなど

 

5.転移性悪性腫瘍:他の臓器のがんが心臓まで転移し 208274545たものです。

次項の原発性悪性腫瘍の30-40倍と多いです。

肺がんや乳がんの患者さんの10%で同様の転移が見られます。

悪性黒色腫では75%に心臓転移が認められます。

この場合は根治術は不可能ですので、たとえオペする場合でも対症療法としてのそれを考えることになります。

 

6.原発性悪性腫瘍Fotosearch_CCP09002

心臓からがんあるいは肉腫(にくしゅ)が発生したものです。

悪性ゆえ治療に際してはさまざまな注意が必要です。

しかしそれでも生きる望みが絶たれたとは限りません。

頑張れる場合もあるのです。

なおこどもの心臓腫瘍では、良性腫瘍で一番多いのは横紋筋腫で40%を占め、

ついで線維腫が挙げられます。こどもの粘液腫は悪性あるいは悪性になりやすいため注意が必要です。

  154411073

それぞれの心臓腫瘍の詳細は別頁にゆずります。

心臓外科の観点からはできるだけ腫瘍をすべて切除し、再発を防ぐとともに、

心機能が損なわれないように確実な再建を行うことが重要と考えます。

 

とくに悪性度が高く、まだどこにも転移していないとい

Ilm2007_04_0071-s

心臓腫瘍を完全切除できるためには、再建技術がきわめて重要です。建物のリフォームと共通したところがあるかも知れません。

う状況のときには完全切除をめざし、

そこでできた大きな欠損を確実に再建することが予後を改善し患者さんの寿命を長くするのに役立ちます。

 

そこでは弁形成術左房形成術、大動脈・肺動脈などの血管形成術、

さらに左室形成術などの経験が役に立ちます。

逆に心臓のさまざまな部分が再建できるからこそ、腫瘍を完全に切除できるわけです。

 

腫瘍がすでに周辺に波及するなどして完全切除できない場合は大きな手術はかえって患者さんの寿命を縮めることがあります。

なのでできるだけ苦痛を減らす、その中でできるだけ寿命を延ばす、人間らしい状態での寿命を延ばすことが大切です。

 

7.心膜嚢腫(しんまくのうしゅ):

心臓の周りにある心膜という膜から発生する腫瘍で多くは良性です。

中に水がたまり心臓を圧迫したり、悪性との見極めがつきにくいときなどに手術します。

傷跡が見えにくいMICSで手術することが増え喜ばれています(心膜嚢腫のMICS)。

 


◆患者さんの想い出

Aさんは60代男性で、北海道から連絡をして来られまし Ilm12_ab02045-sた。もとプロ野球チームのスカウトをしておられた元気な方です。

地元の立派な大学病院で心臓悪性腫瘍のためもう手術できない、手が打てないと言われたそうです。そのため2か月以上もそこでじっとしているだけの入院生活を送っておられました。たまりかねたご家族が私のところへ連絡を取って来られたのです。

データを送って頂き、拝見しますと右室に腫瘍が充満し、危険な状態です。このままでは突然死の恐れもあるほどでした。

腫瘍の広がり具合から根治術は難しい状態でしたが、このまま突然死するよりは、まず当面生きられる状態にすることが必要と判断しました。というのは心臓腫瘍の中にはゆっく Pics1553りと増殖するタイプがあり、腫瘍が全部取れなくても当分はまずまずの状態で暮らせることが経験上、あったからです。

しかし動くこと自体が危険な状態で搬送も難しい状態でしたので、ハートセンターから医師を派遣し、飛行機+空港から救急車で随伴して病院まで来て頂きました。

まもなく心臓手術を行いました。腫瘍は取れる限り取り、取れないところも冷凍凝固などをもちいてできるだけ腫瘍細胞が死ぬか弱るようにしました。とりあえず突然死の恐れは消えました。

顕微鏡検査の結果が出て、悪性リンパ腫という、薬や放射線治療が効く可能性のあるタイプであることが判明しました。薬を使う化学療法や放射線療法は北海道の地元の病院がやって下さることになりました。

Gum11_sy01045-sまもなく患者さんはお元気になられ退院して北海道へ戻られました。

これから化学療法などで腫瘍をうんと弱め小さくできると期待していましたが、そうするまでに患者さんはがんの全身転移のため地元で亡くなられました。

そうなるとあの何も手が打てずただじっとしていた2か月以上の時間が悔やまれます。すぐに心臓手術し、まもなく薬を使えば当分は元気に暮らせた可能性があったからです。 162545312

この教訓から心臓腫瘍の患者さんには、あきらめずに速やかにかつ広く情報を集め、セカンドオピニオンをもらって治療してくれる病院を探ることを一度は御検討頂ければと思うのです。

心臓腫瘍とくに悪性心臓腫瘍のように稀な病気ではその経験が豊富なチームでしかできない治療があるのです。

 

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちらへどうぞ

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

はじめての方へ にもどる

.

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


*キャプチャコードは必須です。