お便り57: 上行大動脈置換術後の大動脈弁置換術の患者さん

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大動脈二尖弁大動脈弁膜症を発生しやすいだけでなく、上行大動脈瘤などを合併しやすいことでも知られています。

患者さんは関西在住の69歳の男性で数年前に京都で上行大動脈瘤に対して人工血管置換術を受けておられます。

もとの術者にお聞きしますとその時点では大動脈二尖弁はそう悪くなく、そのままになっていました。

IMG_5500bこれは正しい判断だったと思います。

 

それから時間が経ち、大動脈弁が狭くなって(大動脈弁狭窄症)危険な状態となったため、名古屋ハートセンターの私の外来へ来られました。

再手術は私の得意種目のひとつであり、患者さんたちもそれをよく御存じのようで、全国から再手術の患者さんが名古屋まで来て下さいます。

 

ところがこの患者さんの場合は診察と検査で、以前の手術で植え込まれた人工血管が胸骨という骨にびったりと癒着し、一部は骨に食い込んでいることがわかりました。

Illust191こうしたケースでは骨をのこぎりで切る際に人工血管が破れやすいため、一般には極めてハイリスクと言われます。

「安全管理」と称してこうした患者さんを断る公的病院も少なくありません。

しかしこの患者さんは生きるために大動脈弁置換術が絶対必要なのです。

そこでさまざまな安全対策を立ててのぞみました。

 

結局、強い癒着の剥離には長い時間を要しましたが、手術はスムースに進み、病気で壊れた二尖弁はきれいな生体弁に取り換えられました。

さらにまだ比較的お若いご年齢を考慮し、将来はカテーテルで人工弁が入る(略称TAVIあるいはTAVR)ことができるような工夫も行いました。

同時に、もし将来何らかの心臓手術が必要となったときにも困らないように、今回は人工血管などをがっちりと守り、骨に癒着しないようにしました。

 

患者さんは術後経過順調でまもなく関西にもどられました。

まさにいのちを預けて下さる、死んでも悔いはないとまで言って下さる厚い信頼にお応えできてこんなにうれしいことはありません。

医療はやはり患者さんあってのものと改めて痛感いたしました。

 

**********患者さんからのお便り*********

 

米田先生
手術に携わっていただいた諸先生
看護師の皆様

 

お便り57大変ご無沙汰いたしております。私の大動脈弁置換手術に際しましては大変お世話様になりました。

お陰様で経過もよく順調に回復しています。

 

思えば、今年の2月上旬に京都の病院で定期検査を受け、

大動脈弁閉鎖不全症でこのままでいると心臓が送り出している血液が逆流し心不全等で突然倒れて死に至る恐れがあり、倒れた時の緊急手術もリスクが高いと聞き愕然としました。

それまでシニアー野球で投打走と又、ジムにも通い鍛えて身体的には何もなく安心していたのですが、それから一週間は悩みました。

 

しかし、同じ倒れて手遅れになるより手術をして元の生活へ戻れるのであれば早くやろうと決心しました。

その時、家内がテレビでスーパードクターの番組をよく見ていて、気にかかる病気の名医のお名前と病院を記録していましてその中で米田先生を知る事になりました。

弁置換術においては沢山の手術を手がけられいろんな修羅場を潜ってこられた先生とお聞きし、同じ手術を行うのであればGod Handと言われている米田先生にお願いしようとお探ししました。

 

前京都大学病院に勤められていたと聴いていたのですが、代わられていて名古屋のハートセンターへ勤務されている事を聞き早速電話をして受診をお願しました。

当日はエコー検査、CT検査等を行い映像やデーターを基に米田先生から私の現在の心臓の状態と手術の方法やリスク等懇切丁寧に解りやすく説明して頂きました。

「手術は任して下さい。後はあなたのリハビリ次第で回復も早くなりますよ」と自信に満ちたお言葉を頂きお願いしようと決心しました。

 

又、私が4年前別な病院で大動脈瘤の手術を行いかなりの癒着もあり、米田先生が前の手術を行った先生をご存知で情報をとって頂きより安全な方法で手術を行うことにしました。

そして、2月27日に入院いたしました。

病院の前の学校のグランドに集う学生の元気な姿を見るにつけ「もう一度元気になってスポーツをやりたい。ガンバルぞ!」という気持になり勇気が湧いてきました。

 

そして3月2日手術の日を迎えました。当日は、意外と落ち着いて手術室へ行き2~3分の内に全身麻酔がかかり、家族の心配をよそに眠ってしましました。

 
翌朝に目を覚ましましたが、先生や看護師さんの優しいお顔が目に入り、再生さして頂いた実感がこみ上げてきました。

丁度、浦島太郎の感覚でした。

 

手術した翌朝の朝までが本当に短い時間に感じました。

それから3日にはベッドに座れる様になり、5日目から歩行が出来る様に成りました。

8日を過ぎると食事もすすみ、痛みは有るものの院内の階段を1F~5Fまで上り下りするまでになりました。

院内散歩が唯一の楽しみになりました。

そして3月14日に無事退院する事が出来ました。

米田先生のオペの技術は勿論の事、手術に携って頂いた諸先生方、看護師の方々のチームワークは最高と思われます。

それは手術後のケアについてもよく分かりました。

回診時に手術を担当された先生方が優しく丁寧に術後の状態を診て頂き私達の不安を取り除いていただきました。

 

又、ベテランの看護師さん・若い看護師さん方のテキパキとした対応や気配りや笑顔はどんなに私達患者の心を癒して頂いた事でしょう。

その他、美味しい食事を造って頂いた栄養士さん・調理師さん、お茶や食事の準備をして頂いた方々、部屋を清掃して頂いた方々、その他、たくさんのスタッフの皆様へ支えられ 無事に退院する事が出来ました。

 

現在は、胸に違和感は少し残っていますが痛みもとれて、毎日散歩に花見や自身の野球のチーム練習の球拾いをやりながらリハビリに務めています。

本当に有難う御座いました。米田先生他、手術に携って頂いた諸先生方、看護師の皆様、その他スタッフの皆様方のご健康とご活躍、そして名古屋ハートセンターのご発展を心よりお祈り申し上げます。

 

2012年4月19日

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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