心臓外科医の資質

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HP用◎カバー+帯田正始― 外科医の資質

日本の医療界の慣習に異議を唱え、単身海外へ飛び、一流の外科医となった米田。グローバルな視点から、外科医の資質として必要なものはなにか聞いてみた。

「三つあります。一つは、ネバーギブアップの精神です。目の前の患者さんをなんとしても助けようと思って全力を尽くすこと。そのために必要な勉強や技術があれば、どんな努力をしても習得する、という気持ちがなくてはいけません。

もう一つは、手術は一人ではできませんから、技士やナースなど、周りのスタッフをチームとして動かすことができる能力が必要です。そして、最後にバランス感覚です」

心臓手術をしていれば、突発的に予想もしなかったようなハプニングが起こることはよくある。その時に、パニックにならずに落ち着いて対処できるかどうか。ここでバランス感覚が重要となる。

そのためには、どんな状況にも慌てないよう、常にいろんなケースを想定した訓練をする必要があると米田は言う。

「縫うだけなら、ある程度のトレーニングでできるようになりますから、何もイレギュラーなことがなければ、上手に手術できる人はいます。でも、何か大変なことが起きたとたん、めちゃくちゃになってしまうようではいけません。

例えば、突然心臓が止まってしまった。どんな原因が考えられ、どう対処したらいいかなど、日頃から様々なシュミレーションをしておく必要があります。ですが、そのシュミレーション自体も場数を踏まなくては、どうやったらいいのかがわかりません。

だからこそ、数が大事なのです。自分が執刀しなくても、何千、何万という手術を真剣に見て、ディスカッションする。すると、中に数十例、数百例ぐらい、とんでもないことが現実に起こります。

その時の対処法を頭の中に入れておくことです。そうすれば、大変な事態が起こっても慌てることなどないはずです」

国内だけでなく海外でも豊富な経験を持つ、米田ならではの重みのある言葉だ。だが、それだけの症例を行っても、毎回必ず前向きの反省が生まれるという。

「今日は何も得るものがなかった、なんていうことはまずないです。若い先生なら、なおさら一例一例が勉強になります。他の先生の手技をできるだけ多く見て、いろんなシュミレーションをしながら、バランス感覚を磨くことです。『熟練度』が非常に大切なのです」
「手術は日常の中にある」という大川も同様の発言をしている。

「結果はよくて当たり前ですが、本当に満足のいく、完璧な手術ができたと思えるのは年にいくつあるかという感じですね」

どんなに経験を重ねても、またどんな立場になろうとも、一つ一つの手術から新たな学びを得て、さらに自分自身を成長させていく。この姿勢こそ、一流オペレーターに欠くべからざる資質なのではないだろうか。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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