ハートチーム【2020年最新版】

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最終更新日 2020年3月6日

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◾️ハートチーム

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ハートチームという言葉が急速に市民権を得つつあります。

GuidelineCABGvsPCIなんとなく昔からあるような名前ですが、現在の意味のものは2010年のESC ヨーロッパ心臓学会/EACTS ヨーロッパ心臓胸部外科学会の狭心症治療ガイドラインのころからでしょうか。

右図はそのガイドラインのまとめを示します。緑色のところが強く推薦されている治療法です。

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◾️ハートチームの仕事は

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Ilm09_aj06015-s具体的には、冠動脈狭窄症(虚血性心疾患)の治療の際に、内科と外科が集まって、議論ののち、両者のなっとく行く方針を立てる、その集まりがハートチームです。

ハートチームのOKなしには、これまでのように誰かが独自の判断で自分の好きな治療ができない、という方向性でのチームです。

この考え方は大きなインパクトがありました。

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◾️ハートチーム、日本では

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何しろ日本では、これまで、内科のPCIつまりカテーテルによる冠動脈治療は内科の先生がやりたければ何でもやれるという傾向があったからです。

患者さんは狭心症などがあればまず内科の外来へ来られます。

つまりほぼすべての患者さんを内科の先生は「握って」おられるわけです。

外科の冠動脈バイパス手術も同様かといえば、外科は内科からの紹介のうえで手術しますから、構造的に独走はできないようになっていました。

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◾️ハートチームの背景は

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MACCE3yrsHighハートチームが提唱されるようになった背景にはあのシンタックストライアル(Syntax Trial)で外科の冠動脈バイパス手術が内科のPCIにくらべて、重症例で有意に優れた成績を出していることが明らかになったことが挙げられます。

右図はその結果の一部を示します。冠動脈バイパス手術後は死亡やトラブルが少ないことがわかります。

冠動脈バイパス手術は治療成績が良い、とくに患者さんが長生きできるのに、なぜあまり行われないのか、という議論の中で内科にも適切なチェック機構が必要という考えが出てきたわけです。

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◾️ハートチーム、新たな展開

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ハートチームの効用は、冠動脈狭窄症にとどまらず、他の心臓病たとえば弁膜症でも出てきています。

Tavrなかでも大動脈弁狭窄症などに対するTAVITAVR)という折りたたんだ生体弁をカテーテルで大動脈弁位にもちこんで、そこで拡張し取り付ける方法では、内科と外科の両方の意見が十分にとおるような仕組みを造る方向で検討がなされています。

これも心臓手術の大きな進歩になることでしょう。

 

また大動脈瘤に対するステントグラフト(略称 EVAR)でも内科と外科の両方の意見が入るような仕組みができています。

 

患者さんに良いものを、ベストのものを、というスタート点からハートチームは当然の帰結と思います。

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◾️私たちのハートチーム

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私がかつて勤務していた名古屋ハートセンターでも平成25年4月から構造改革が進ilm20_ae04023-sみ、毎朝内科外科の合同カンファランスでお互いの意思疎通や理解を深める工夫を行っています。毎朝笑顔であいさつし、重症患者さんの治療方針や一般的な課題や問題を自由にディスカッションしています。

ようやく理想の病院づくりが本格化したと感慨深いものがあります。

2016年から仕事を開始した医誠会病院でも同様のハートチームが機能開始し、楽しくかつ効率的にEBMが実践できています。

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◾️困難を克服するハートチーム

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循環器の領域では日本のあちこちで内科と外科が競合し反発する傾向が指摘されています。

これでは患者中心の医療は進歩しません。

わがままな医師を再教育し、治らなければ排除してでも良い医療のしくみを勇気をもって進める時代なのです。

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循環器内科と心臓血管外科は競合的(competitive)ではなく相補的(complimentary)であるというのは欧米の学会でも強調されていることで、当然のことと思います。

今後こうした真のチーム医療がますます進歩してくれることを期待しています。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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