奈良市エリアにおける心臓手術について

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註:平成27年6月をもって米田正始は高の原中央病院を退職いたしました。開設時からいた心臓外科スタッフもすでに全員異動いたしました。

奈良の地にどんな心臓病にでも対処できる、ちからのあるハートセンターを立ち上げ、他で断られた患者さんを救命するなど一定の実績を上げることはできましたが、病院の事情によりあまり大きな手術やリスクの高い重症の治療ができなくなったためです。

現在は大阪府内の二つの病院(医誠会病院(外来・手術)、仁泉会病院(外来)で本来の断らない心臓外科医療ができるようになりました。

心臓病で何かお困りの際にはご相談ください。お役に立てれば幸いです。

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平成25年10月に高の原中央病院かんさいハートセンター心臓血管外科を開設させて戴き2か月あまりが経ちました。

お陰さまで毎日張り切って楽しい汗を流すことができています。チームも日々進歩の跡がみられ、立派に育ちつつあります 奈良県と奈良市。関係の皆様に厚く御礼申し上げます。

奈良市(右図の赤いエリア)の北端にある高の原中央病院の中にハートセンターを立ち上げることを考え始めたのは約1年あまり前のことでした。

私自身、郷里の奈良県で心臓外科医としてのライフワークを完成するとともに、お世話になった地元の方々に何か恩返しをしたいという気持ちが以前から強くありました。さらに両親がそろそろ歳とって多少でも親孝行の真似事でもしたいという事情もありました。

奈良市は1300年前にこの国の首都があった地ですが、近年は大阪や京都に近く、大都市近郊のベッドタウンとして大きく発展し、全国でもトップクラスの人口急増地帯としても知られています。いわば古くて新しい街です。

 

医療面ではどうでしょうか。数年前奈良盆地南部で産科患者さんの不幸なたらいまわし事件があり、奈良県の医療体制のあり方が問われ改善努力がされていますが、心臓血管外科でも課題はあると言われます。

心臓手術ができる本格施設は奈良市には存在しないのです。京都府南部に若干の施設がありますが、大きな実績や成果を上げている施設と言えば心もとないとよく言われます。

 

心臓血管外科の領域では奈良市はエアポケットのような場所というわけです。

病院あるいは内科としては積極的に急患を受け容れて救命活動でめざましい躍進を遂げておられる市立奈良病院や、救命救急センターをもって北和を守るという位置づけにある県立奈良病院(現、奈良県総合医療センター)をはじめとして、岡谷病院、西ノ京病院、西奈良中央病院などの病院群、そして開業医の先生方など、地域医療に邁進して来られた病院・医院が多数あり、エリアとしてのポテンシャルは高いと個人的に思っています。

それ Ilm22_ba01056-sらの病院で心臓手術が必要な患者さんをいつでも、重症でも、しっかりと受け容れる施設が待たれていたのです。

このことは事前に調査をしたときに多数の方々からご教示頂きました。

 

そこで私たちは高の原の地にかんさいハートセンターを立ち上げました。

これは理事長の斉藤守重先生と昔から交流があったことや、副理事長の斉藤正幸先生が高校の後輩であったことなども幸いしました。

 

京大病院や周辺の救急病院、そして豊橋ハートセンター名古屋ハートセンターなどの民間専門病院の良さを併せ活かせるべく、それらでのかつての仲間が集まり、かつ貴重な経験やノウハウを結集しました。

私にとってはさすがに郷里で、地元の友人や先輩後輩の皆さんからさまざまなご要望を戴き、うれしく思っています。

 

これから断らない医療、患者目線の医療で奈良市やその周辺部の皆様のお役に立てればこれほどうれしいことがありません。


ただ患者さんを受け容れるだけで Ilm03_ba08001-sなく、これまで奈良県ではできなかった患者さん本位の手術たとえばエキスパートチームにしかできない複雑な弁形成術や、それを少ない苦痛と早い社会復帰で支援するポートアクセス手術などのMICS手術に代表される先端的治療でもお役に立てればと念じています。


実際、かんさいハートセンター心臓血管外科がスタートしてまだ2か月あまりの短期間に、すでに緊急手術や大学や有名センターで断られた患者さん、あるいは内科の先生にギブアップされていた重症の方々が順次生還され元気に社会復帰しておられます。

中には山を越えて大阪、京都、熊野、尾鷲や和歌山、津市や桑名などからお越し下さった方々や、東京、新潟、名古屋、九州、四国、沖縄などから来て下さったかたもあり、光栄なことと感謝しています。

 

逆に、重症例や稀な疾患で培った経験を地域医療のなかで活かしていければとも思います。

地域医療での心臓手術と言えば、通常は冠動脈バイパス手術弁置換術大動脈手術どまりですが、それでは地域の多様なニーズにはこたえきれないからです。

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地域の医療機関の先生方におかれましては、心臓手術が必要かも知れない、あるいは診断もまだ確定していない段階でもご相談頂けましたら内科と外科の複眼の視点でベスト治療を組み立てられると存じます。

結果的に心臓病以外のものであったという場合でも患者さんが安心してその病気の治療に専念できる基盤を造れるという意義があります。

 

地域の市民、患者さんたちにおかれましては何か心配な、あるいは納得できないものがあればセカンドオピニオンあるいは外来相談の形で私たちにお気持ちをぶつけて頂ければ幸いです。

やはりじっくり本音で相談し、データやガイドラインなどをもとにして、科学的客観的に考えることが患者さんを救います。不要な手術を避けることもできます。

さらにご紹介いただいた患者さんを手術や治療後に逆紹介させていただくのは当然ですが、これまでかかりつけ医をお持ちでない患者さんが多いため、本紹介させて頂くことが多々ございます。「かかりつけ医をお願いいたします」というお手紙をお送りしましたら、よろしくご検討をお願い申し上げます。

奈良市や周辺エリアの心臓外科医医療でお役にたてるよう全力あげて頑張ります。よろしくお願い申し上げます。

 

平成25年12月22日

 

高の原中央病院かんさいハートセンター

心臓血管外科

米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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