お便り101: 信念で難手術を受け乗り切った僧帽弁形成術の患者さん

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患者さんは30代前半の女性です。心内膜床欠損症のため小さいころに心臓手術を受けておられます。

今回は僧帽弁閉鎖不全症が悪化したため来院されました。

Ilm17_da05005-sいちど名古屋ハートセンター(*註)の他の先生の外来を間違って受診され、手術は難しいと言われて帰宅されました。

しかしこの僧帽弁を治すんだという信念で一度断られた病院に、しかし今度こそ私の外来を指名して来院されました。(*註:当時。現在、米田は「医誠会病院、仁泉会病院」で勤務しています)

診察の結果、私はこの弁は僧帽弁形成術で治せると判断し、手術することになりました。

この若さで人工弁になりますと機械弁では妊娠出産が不可能となり、生体弁では何度も再手術が必要となりいずれもお気の毒な姿となります。やはり弁形成が必須です。

手術では僧帽弁の前尖が2つに割れる、クレフトと呼ばれる状態で、まずこれを閉鎖して一枚の前尖を再建しました。しかし弁がすでに硬く変化しており、隙間が空いて、逆流が残ります。

そこで心膜パッチで前尖を拡大し、やわらかい部分でかみ合うように工夫し、あとはリングで適正サイズとして逆流は完全に消えました。

手術前に僧帽弁狭窄症も少しありましたが、それもほぼ無視できる程度に改善しました。

この方の手術では先天性僧帽弁閉鎖不全症への弁形成術と、リウマチ性僧帽弁膜症への弁形成術の両方のノウハウが活きました。これらを両方こなしている施設は数少なく、来院して戴いて、お役に立てて良かったと思います。

術後経過は順調でまもなくお元気に退院されました。

外来でお元気な顔を拝見するたびに、よく信念をもち、こうした病気を知らない医師の雑音に惑わされず、敢然と再来院し相談して下さったこと、感嘆せずにはおれません。

以下はこの患者さんからのお便りです。


******* 患者さんからのお便り *******

 

米田先生、深谷先生、北村先生、ご無沙汰しております。
入院、手術の折は、本当にありがとうございました。お礼のお手紙が遅くなり申し訳ございませんでした。

黒石教子さんお手紙三歳の時に心内膜床欠損症の手術をし、その後何事もなく生活をしていましたが、今回、子供を出産する間近に、子供の切迫早産等で病院に入院中に、なんとなく心臓のことが気になり大学病院に入院していたので、ついでにと思い診察してもらった際に「僧帽弁閉鎖不全症」という病気が発覚しました。

大学病院の先生に言われたのは、「先天性の病気は、診れる科はなく、仕方なく心臓外科で診る。もし、出産時に心不全等を起こせば子供はあきらめてもらう。もう二人目は産めない。弁を置き換える手術を5~10年以内にしたほうがよい。」という絶望的なことばかりでした。

その時、この先生、病院に自分の命を預けて大丈夫かなぁと思いました。
そんな思いを抱えながらも子供を安産で産みました。息子が成長していくうちに、ちゃんと治して息子の成長を見届けていきたいと強く思うようになりました。

そして、名古屋ハートセンターのHPを見て、受診しました。
その時は一度断られて、大学病院で診てもらおうとも思ったのですが、主人が「米田先生に診てもらおう!」と言い、もう一度ダメもとで名古屋ハートセンターを受診したところ、米田先生が弁形成で手術したら大丈夫。子供も産めるようになるよ!手術はいつがいいかな?と言われたときには、本当にびっくりしました。

そして、その日のうちに必要な検査をして手術の日が決まり、手術前の説明もすごく時間をかけてして頂きました。

特に不安等を感じることなく手術を受けました。手術後は、本当に経過は順調で子供と毎日走り回っています。

あの時、あのまま大学病院で診察してもらわずに勇気をふりしぼりハートセンターに行って良かったなぁと思っています。

それも親切に説明してくれる米田先生、いつも丁寧に診察してくれる深谷先生、入院中フレンドリーに話してくれた北村先生のおかげです。

また、この先も診察等でお世話になりますが、よろしくお願い致します。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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