お便り111: 珍しい心臓腫瘍からMICSで完全復帰

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心臓腫瘍にもさまざまなタイプがあります。

いちばん多いのは粘液腫(ねんえきしゅ、英語でミキソーマ myxoma) 165395249で、その多くは心房中隔という左右心房の間仕切りの左側に発生するタイプです。

私のトロント大学での100例以上の検討(当時世界のベスト3の数と言われました)ではその他の部位にできる粘液腫は悪性の恐れがあり要注意という結果でした。


完全に切除することが大切なのですが、それが普通の方法では難しいこともあります。

場合によっては僧帽弁大動脈基部の一部まで切除して再建、もちろん患者さんご自身の弁を温存して、という弁膜症手術の中でも難易度の高い技術と経験を要するものもあります。

お便り43の患者さんもそのタイプでした。

 

下記の患者さんは心房中隔の表面ではなく中に腫瘍があるという珍しいタイプで、しかも大動脈基部に迫るという危険な形のものでした。

関東在住で現地の大学病院で診断を受けられました。そこの放射線科と内科の先生方も、このタイプは特殊で大動脈弁に腫瘍が及んでいる恐れがあり、心臓手術の際にはくれぐれもご注意をというありがたいコメントも頂いておりました。

その患者さんがかんさいハートセンターまでお越し下さいました。

精密検査ののち、確かに大動脈基部を含めた大きな手術になるかも知れないという見立てで、もともとはポートアクセスによるMICS手術(右胸を小さく切るだけです)を考えていましたが、もしもの場合を考え、正中からアプローチすることにしました。

ただしMICSご希望のため、小さい創で、40歳代の若いご年齢から夏服が楽しめるように配慮しつつ、安全重視の布陣で臨みました。

 

結果的には心房中隔の中でうずら卵状の腫瘍がコロッときれいにとれて、周囲への浸潤つまりしみこむような広がりもなく、良性腫瘍の形でしたので大動脈基部は触らずに完全切除できました。

術後経過も順調で、手術前に不整脈発作がよく出ていたのも次第に影をひそめ、お元気に退院されました。

 

手術のあとで顕微鏡検査の結果が送られてきました。神経鞘腫という世にも珍しい、おそらくこの部位では世界にこれまで1-2例報告あるかないかのタイプでした。

患者さんと娘さんたちの前向きの姿勢が良い結果をもたらしたと言えましょう。

これから元気な健康生活をお楽しみください。

 

ちょっと遠方ですが、お役に立つ外来を心がけていますので、また健診のため関西までお越しください。

 

******** 最初に頂いたお問い合わせメールです *******

初め PL111Aまして。

私の母は四年前に子宮けいがんで子宮全摘しています。

それで抗がん剤などの治療は受けていなくて再発もなく、

でも3ヶ月毎に受けてるCT検査で心臓に腫瘍がある事がわかりました。

再発ではなく原発みたいででも心臓腫瘍も珍しいが

もっと珍しいタイプみたいで粘液を疑っていたんですが

粘液なら左心房にちょこんと出来るみたいだけど、左右真ん中にあり

明後日カテーテル受けるですがリスク高いと言われていて…

カテーテル受けないと手術は出来ないのでしょうか?

よろしくお願いします

********* 術直後に頂いたメールです *********

こんにちは。**です。 PL111B

昨日は手術どうもありがとうございました…。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
米田先生に母をみてもらえて本当に本当に良かったです。米田先生に出会えて良かったです。

昨日のICUでの母との対面は、手術終わったんだなってゆう気持ちと当たり前だけど子宮癌手術よりも昨日受けた心臓の手術のほうが何倍も大変?
な手術で前の手術よりも沢山沢山器材がついていて怖くなってしまいましたが…

私も口唇口蓋裂とゆう病気で全身麻酔の手術沢山受けてるから術後の辛さもよくわかります…。
私の場合は病室戻る時には人工呼吸器も取れているから、実際呼吸器つけてる母をみて怖くて…でも無事に手術終わったって事で安心と恐怖?で涙出てきました…。

今日午前中、母に会ったら会話も出来たし、リハビリで座ってたし本当に良かったです。

米田先生…

母はずっと傷跡の事も気にしていて地元病院だったら沢山切っていたと思うのに
先生に執刀して頂いたお陰で傷跡も母は気にしないでいけると思います。

言葉では上手く言えないけど本当に本当にありがとうございます。

 

********* 退院のころ頂いたメールです *********

 こんにちは。**です。 PL111C

約1ヶ月間母の入院、手術、色々本当にどうもありがとうございました。

米田先生に執刀していただいて本当に嬉しく思います。

米田先生をはじめ、グループの先生、母と関わっていただいた全ての人に感謝します。
本当にありがとうございます。

退院の日、米田先生にお礼の言葉を直接言えなくて残念ですが、米田先生に出会えて本当に良かったです。

ありがとうございます。

外来の日、母と一緒に行きますのでまた先生に会えるのを楽しみにしています。

ありがとうございました。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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