最終更新日 2020年2月13日
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⬛️ 脳梗塞を何とかしたい
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心房細動の患者さんで一番心配なことは脳梗塞(のうこうそく)です。
昔の総理大臣・小渕さんや野球の長島さんなど、多数の方々がこの心房細動による脳梗塞のため仕事ができなくなったりいのちを落としたりしています。
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なにしろ心房細動そのものが国民病といっていいほどよくある病気なのです。
心房細動の中でも、ときどき心房細動になる発作性心房細動は軽症で怖くないと思われがちです。
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ところが!
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軽症のはずの発作性心房細動は、実は脳梗塞を起こしやすいのです。
というのは心房細動の際に左心房の中に血栓ができ、正常リズムに戻ったときに、左心房の動きが再開して、貯まっていた血栓が外れて脳や全身に流れていくからです。
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⬛️ではどうすれば脳梗塞のような悲劇を予防できるの?
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1。まず血液をサラサラにするお薬を飲みます。これでかなり脳梗塞は防げますが、血小板を抑える薬、いわゆる抗血小板剤(バイアスピリンなど)は動脈などの速い血流の中の血栓予防には効くのですが、左房内の遅い血流の中の血栓予防にはあまり効かないのです。そこで抗凝固療法と言われるワーファリンやDOAC(ドアックと呼びます。イグザレルトとかエリキュース、プラザキサ、リクシアナなどがあります)が使われるのです。
また可能ならお薬で心房細動を治したり、脈拍が速くなりすぎないようにします。
ただしお薬では予防できない脳梗塞があるのです。そこで以下の方法を考えることがあります。
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2。カテーテルで左心房の悪いところを電気で焼く、カテーテルアブレーションを施行します。それで治らない場合、外科手術(メイズ手術)を考慮する場合があります。
カテーテルアブレーションは胸の皮膚を切る必要がなく、侵襲つまり体への負担が少ないのが長所です。いっぽう、メイズ手術は効果が高く、同時に僧帽弁膜症などがある場合にそれも併せて治せるという利点があります。左心耳を閉じることもできます。しかし外科手術は胸を大きく切ったり、小さく切る場合でも人工心肺を使うため侵襲が大きくなります。
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3。これらで治らないとき、とくに脳梗塞をすでに発生したり、TIA(ティーアイーエー)と呼ばれる脳梗塞のまえぶれ症状が続くなどの場合には左心耳閉鎖が効くのです。
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⬛️ 左心耳閉鎖、どのようにする?
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左心耳閉鎖はウォッチマンというカテーテル装置で内側から閉じることが試みられていますが、不完全で再開通することが近年報告されています。
そこでミックスつまり小さい傷跡で左心耳を閉鎖する方法が注目を集めています。内視鏡を使うとより小さい傷跡になります。
この方法は米国のR. ウォルフ先生が始められ、それを東京の大塚先生が内視鏡でやるように改良しW-O手術と呼んでいます。W-O手術はメイズ手術も併せ行うため、左右の胸にそれぞれ数個の傷跡ができるという弱点があります。
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⬛️ 私たちの工夫
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そこで私たちは
(2) 左心耳閉鎖とカテーテルアブレーション、
(3) 左心耳閉鎖単独
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という選択肢をもって臨機応変に治療しています。
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左心耳閉鎖には「AtriClip」という装置を使用し、確実で安心です。西日本初と言われました。写真左はAtriClip、写真右はこれをもちいて左心耳を閉鎖したところです.
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手術のあと数日で退院できます。
心房細動がらみの脳梗塞やTIA前触れ症状でお困りの方は、大事に至るまでにご相談ください。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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