心臓手術!? 【2021年最新版】

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最終更新日 2021年10月18日

ある日突然、病院で「心臓手術が必要です」と言われたら、あなたはどう感じられるでしょうか。

人間誰でも体にメスを入れられるのは嫌なものです。だからさまざまな理由をつけてそれを逃れようとするのはある意味、当然のことです。
しかしその心臓手術が患者さんにとって益する、つまりオペするほうがしないより安全上有利となればどうでしょうか。しかしその情報が信頼に足りるものであることが必要ですね。

このコーナーでは患者さんが心臓手術をと言われてお困りのとき、頭が真っ白になってどうしたら良いかわからないときに、静かに客観的に情勢を見極めるのに役立つ情報を集めました。

ようするにその手術があなたの得になるなら受ける、損になるなら受けない、その判断材料を提供します。

1. まずその心臓手術の必要性について

1. ホントに必要なの?

心臓手術することで寿命が延びるなら必要と言えましょう。逆にプロが見たら不要だったということもあります。できるだけ科学的に、客観的に、つまり正しくすることが大切で…

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2. こんなに元気なのに!

そのとおり、症状のない方に手術するのはかなり限定した状況のときです。つまりこれから悪くなるのが確実な時などですね。その一方、危険が迫る病気では、オペを乗り切るだけの体力があるうちが有利です

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3. どこも痛くないよ!

痛くない心臓病もあります。強い痛みが出るタイプの心臓血管病は患者さんも実感があり判断が遅れることが少ないのですが、痛みがないタイプでは逆に手遅れにならないよう、注意が必要なのです

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4. じっとしてたら苦しくないよ!

それは4度の心不全ではなさそうですね。しかしじっとしていて苦しいようでは手遅れのこともあります

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5. 心臓手術しなくっても生きて行けるんじゃない?

今の状態がいつまで続くのかを知ることが大切です。そしてオペしないときに、患者さんがどのように死んで行かれるかを知ってください

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6. 心臓なんて切ったら生きていけないんじゃない?

それは昔の常識でしたが今は違います。
この臓器は血液ポンプであり「こころ」は宿っていませんし

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7. もう手遅れなんじゃない?

手遅れかどうかまず調べることが大切です。ご自分で早合点して助かるチャンスを逃した方もこれまでありました。
また病院によってその手遅れ判断は大きく違います。
つまり病院によっては手遅れでないということがあるのです

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2. そしてその病院に対して

1. この病院で心臓手術受けて大丈夫?

術者や病院の実績を調べることが大事です。こと執刀数については、日本の心臓血管外科専門医は心臓と血管合せて50例で合格します。心臓だけなら20例そこそこでも専門医になれるわけで、欧米の専門医のように信頼の証にはなりません。また数だけでなく質も大切です。簡単な手術をたくさんやっているだけの病院もあるのです。

2. ほかにもっと良い病院や先生がいるんじゃない?

そうかも知れません。まず調べることが大切です。心臓手術は一生に一度あるかないかのおおごとです。納得できる病院と先生のもとで受けましょう。

3. この病院、大病院だけどあまり心臓手術やってないよ

建物だけは立派だけど中身は平凡という病院は意外に多いです。建物より内容、実績が大切ですよ。

4. アルバイトの先生はいても常勤の先生が少ないし

アルバイトや非常勤の内容によってはチームとして不完全なこともあります。

5. セカンドオピニオンをほかでもらえない?

それは患者さんの権利です。いつでももらえるはずです。迷うときにはもらうことをお勧めします。前もってネットで情報を得ておくことも役立ちます。

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6. でもそんなことしたら、この病院の先生に嫌われる?

セカンドオピニオンを渋ったり、ひどいときには断る先生が今なおおられると聞いています。それ自体、医師として欠陥ものです。というのは自分がやっている医療を他人に見られたくない、自信がないからです。

3. さらにその心臓手術の詳細について、

1. (弁膜症手術の場合)弁形成ができるんじゃない?

弁置換はたくさんやっていても弁形成ができない病院はかなりあります

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2. 長持ちする弁形成の実績はあるんだろうか

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3. 僧帽弁の後尖だけなら治せるなんて言ってるけど

それは前尖は治せない、つまり人工腱索の長さを自信をもって決められないということです。弁形成のレベルが低いという証拠になり、後尖の形成さえあやしいと言えましょう。

4. 創 (きず)が小さいミックス手術ポートアクセス法)はできないの?

ミックス手術ができない病院はたくさんあります。ごく簡単なミックスを少数行って、いつもやっているように語るところもあります。複雑弁形成もミックスでやっているかを聞くのも良いでしょう。

写真は私たちのミックス弁膜症手術のあとです

詳細はこちら

5. ホントにお目当ての先生に執刀してもらえるの?

希望をはっきりと言いましょう

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6. すぐ仕事復帰できるんだろうか?

オペから平均1か月程度ですが、仕事内容によってはもっと早くなります。またミックスのあとは早めに復帰できます。

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7. 孫の結婚式までに退院できるの?

およその計算は前もってできます

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8. 脳梗塞にはならずにすむんだろうか?

心臓手術の熟練チームなら脳梗塞はめったに起こらなくなりましたが、動脈硬化が強い方などでは注意が必要です

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9. オペのあと、創が痛いんだろう?

ある程度の痛みはつきものですが、私たちの経験ではミックス手術とくにポートアクセス法のあとは痛みは軽いです

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10. お金がかかるんじゃない?

幸い日本では保険制度のおかげで心臓手術の患者さんの自己負担はわずかです。ただし一部の十分保険適応ではない方法では追加出費が必要なことも

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11. 家族に迷惑かけたくないし

通常の保険診療での心臓手術でしたらご家族の負担も軽いです

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12. 自分の年齢と体力でほんとに大丈夫?

近年は80代の患者さんの心臓手術は当然のようになりました。若い方よりは注意が必要ですが、昔の70代ぐらいの印象ですね

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13. 糖尿病あるし…

糖尿病の方こそオペの恩恵をもっとも受けるという心臓病もあります。たとえば狭心症・心筋梗塞などですね

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14. 腎臓も悪いし…

心臓病が悪いままだと腎臓が徐々に弱っていくことがあります。腎不全でも心臓手術はできるのです。一方、腎臓を守るためにも心臓手術するというケースもあります。

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15. 肝臓がダメと言われてるから…

肝臓も同様です。ただあまり肝臓がやられ過ぎると、オペはできなくなります。そうなるまでに受けるのを勧めます

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16. 輸血になったらどうしよう!

輸血は極力避けるよう全力を尽くします。しかし生きて頂くためにどうしても必要ということもあります。しかし輸血で肝炎をもらう確率はいまやほとんどゼロです

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こうしたさまざまな不安や心配がつのるかも知れません。

その病院の主治医とじっくり相談することがまず大切です。

しかし納得できない、あるいは判断しづらいときには、広く情報を集めるべきです。

他病院でセカンドオピニオンをもらうのも大変有益です。

セカンドオピニオンは患者さんの権利です。それを渋る医師は良くない医師と言っても過言ではありません。ご自分のやっている医療に自信がない証拠だからです。
また心臓内科だけでなく心臓外科の意見をもらうことも重要です

冠動脈の病気なら冠動脈の専門家に、弁膜症なら弁の専門家の、大動脈疾患なら大動脈の専門家の意見を聴くのが良いでしょう
餅は餅屋ですから

心臓手術は一生に一度あるか どうかの大きな出来事です。
他の手術と比べて、多少ともリスクは高いこともあります。
そこでへんな遠慮は要りません。

医師や病院との信頼関係はきわめて重要ですが、同時に自分のいのちや健康は自分で守るという気持ちも大切です
いのちあってのものだねですから

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経済的、社会的なこと

医学的なこと (個々の病気に関することは解説の各ページをご覧下さい)

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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