◾️自己血とは?
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手術の前に、患者さんご自身の血液を採らせていただくことを自己血貯血と呼びます。その血液を厳重に保管し、手術の後などに輸血代わりに使うのが自己血輸血です。
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◾️自己血の利点は?
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血液検査の進歩で現代の輸血で肝炎をもらうことは、大変稀になりました。しかし肝炎の確率がゼロではないこと、そして輸血によってアレルギーやアナフィラキシー(アレルギーの重いタイプ)などの困った副作用が出ることは時々経験します。アレルギーの中には命に関わるほどの重症なものもあり、今なお油断できません。
この点、自己血輸血では輸血のような肝炎もアレルギーもアナフィラキシーも起こらず安全安心が得られます。
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◾️どんな心臓手術の患者さんに自己血が使えるの?
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話が心臓手術を受けられる、心臓病を持った患者さんですので、自己血を採らせて頂くことが安全である方に限ります。
例えば症状が落ち着いている僧帽弁閉鎖不全症や大動脈弁閉鎖不全症、あるいは弓部大動脈瘤や安定している狭心症の患者さんなどに、私たちは積極的に自己血輸血を行なっています。
逆に、拡張型心筋症で心臓に余裕がない時や、大動脈弁狭窄症やHOCM(肥大型閉塞性心筋症)で突然死の恐れがあるような場合や、不安定狭心症などの患者さんには自己血輸血を避けるようにしています。
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◾️自己血の貯血と輸血はどのようにして行
うの?
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自己血輸血のための貯血は通常手術前に3−4回、1ヶ月ほどかけて400mlずつ行わせて頂いています。血液が速やかに回復するように鉄剤やエリスロポエチン(誰の体の中にもある自然の造血ホルモンです)を補い、症状などをチェックし、安全確認しつつ行うためこれまで自己血貯血で事故が起こったことは医誠会病院では一度もありません。ただ患者さんたちには、手術前に3−4回病院へ通って頂く必要があり、ご足労をおかけするのが自己血の弱点です。
とくに遠方の患者さんには、3−4回も往復するのは酷なため、手術前の検査入院を組んで、その時に2回自己血貯血を行い、患者さんが遠方を往復する回数を減らすように工夫し、好評です。
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自己血の輸血は手術中や術後、必要な時にいつでもできます。肝炎やアレルギーの心配がないため、大変安心で便利です。
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◾️自己血の将来性
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自己血輸血は患者さん目線の医療の一例として位置付けることができる良い医療です。血液をより大切にし、社会全体の医療費を多少でも減らすという利点もあります。今後もこうした医療を続けていく所存です。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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