2010年8月10日 ハートの日

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ハートの日2010ポスター 今年も恒例のハートの日 in Nagoya、つまりハートの日の名古屋バージョンが名古屋国際会議場で8月10日(本日)開催されました。

雨の中を600名以上の方々がホールを埋めるほどご参加下さり、厚く御礼申し上げます。

ことしは昨年に引き続き、いくつかの講演と西川流NOSS踊りの実演と指導が行われ、大いに盛り上りました。

  まず愛知県内科医会会長の太田宏先生のご司会にて、名古屋ハートセンターの外山淳治院長の百寿者に学ぶ「健やかに老いるとは」という講演がありました。外山院長は知る人ぞ知る、スポーツマン・健康オタクで医学的観点から長寿の秘訣を解説されました。圧巻だったのは最後の部分、妻に先立たれた夫は早死にする、しかし夫に先立たれた妻は長生きする、というデータでした。男性のちっぽけさと言いますか女性の偉大さを思い知らされるショッキングな講演でした。同時に女性は長生きするが、認知症も多く、動かない状態の方が多いというのも、うーんと唸らせるお話でした。それほど女性の生命力は強いとも考えられ、これをさらに活発な生活へと結びつける工夫が大切とも感じました。

余談ながら外山先生はハートの日の直前に、石垣島へ行かれダイビングしてマンタの写真をを撮ったり、鳥海山に登ってあわやの悪天候の中を立派に帰還されたりと相変わらずの自然派の面目躍如たるところを講演の中でも一部披露されました。多数のご参加を戴きました

続いて中日病院の池田信男院長先生のご司会にて、西川流第三代家元の西川右近先生のNOSS踊りをめぐっての興味深いお話がありました。日本伝統舞踊が現代にも立派に通用するという以上に西洋医学を上回るような特長を持つことが判り、心臓や血管の治療にますます応用が効きそうだと確信しました。つま先が下がるドロップフットは近年、高齢者の転倒の原因になりやすく、私たちも指導に限界を感じることがあるのですが、NOSS踊りをしっかりやればかなり改善しやすい、と判りました。また体の平衡感覚などの養成にも役立つことがわかり伝統は伊達じゃないと感心しました。

DSC_0429 中京大学体育学部長の湯浅景元先生はそれらを科学的に解明するお話をされ、大変明快で判り易い内容でした。湯浅先生は日本の宝、フィギュアスケートの浅田真央選手や安藤美姫選手らを育て、またハンマー投げの室伏広治選手を指導されるなど、日本スポーツ界の発展に多大な貢献をして来られました。その湯浅先生がNOSS踊りを解析されたのは説得力のあることでした。さらに湯浅先生と西川先生の軽快なトークでは早いテンポで踊りの特長を引き出す面白い企画でした。西川先生があぐらの体位からすっと力を入れることなく立ちあがるお姿に、名古屋おどりの真髄の一部を見た思いがしました。

それからNOSS踊りの実演と講習が講演会場と練習フロアの両方で行われ、多数の方々が参加され関心の強さをうかがわせました。大変盛り上がり、うれしい限りでした。

DSC_0519 休憩をはさんで、名古屋第二赤十字病院の平山治雄先生のご司会で松原徹夫副院長の循環器内科のお話がありました。平山先生は最近の循環器科の傾向をお話されましたが、さすが、全身医療にふさわしい、患者さんの真の健康を目指したご姿勢にあらためて感嘆しました。
とくに何でもカテーテルという現代の風潮に警鐘を鳴らし、

1.カテーテル治療では患者さんの生存率を改善できないし、
2.生活の質も改善できない、さらに
3.運動能力さえも改善していない、

したがって症状があまりない患者さんへの予防的カテーテル治療はもはや反省期に入っている、というのはまさにEBM(証拠にもとづく医学)データにもとづいたお話でした。カテーテル命の先生方には手厳しい話でしたが、こうした慎重かつ良心的なお話を依頼すること自体がハートセンターや鈴木孝彦先生の懐の大きさと感心しました。

松原先生はカテーテル治療PCIのエキスパートですが、平山先生のお話を受けて冠動脈疾患の予防にまで言及され、幅広くかつ良心的な治療内容を披露されました。しかしCTO(慢性完全閉塞)を突破する技術はいつ見ても見事でした。

最後に服部病院特別院長・藤田大学名誉教授の丸田守人先生のご司会で私、米田正始副院長が心臓血管外科の現況をお話いたしました。丸田先生はアメリカ仕込みの本格派外科医で、私の患者さんのご家族で切除不可能と言われたがんを完全切除し、治して下さったこともある先生です。藤田大学を退官されてからもそのメスさばきは健在です。司会して戴き光栄でした。

私のお話はおよそ次のようでした。冠動脈バイパス手術はNOS手術とも言え、バイパスに使う内胸動脈グラフトはNOS一酸化窒素合成酵素を持ち自ら一酸化窒素を造れるため、動脈硬化になりにくく、若い血管であり、そのためにバイパス手術後は長年にわたって心臓は安定し、強いお薬も必要ないことをお話しました。

また高齢者弁膜症たとえば大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換術や、若年者の僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術の発展ぶりを見て戴きました。10年以上もつ大動脈弁形成術もご紹介しました。さらに心筋梗塞でだめになった左室を修復する左室形成術の実際のビデオを見て戴き、決して短絡的に諦めていけないことをご説明しました。

最後に急性大動脈解離心房細動でもそのほとんどが解決できることを示し、患者さんには早目のご相談をお願いしました。診察の結果、大きな病気はないということになってもそれは決して恥ではないことを強調しました。

DSC_0483 以前名古屋ハートセンターにて手術させて頂いた患者さんから花束を頂いたり、久しぶりの再会を喜んで頂いたり、個人的にもジーンとくることの多い楽しいハートの日になりました。

会が終わったあと、打ち上げの懇親会がありました。皆で賑やかに飲み食べし、労をねぎらいました。

来年はもっと大きな会場を確保し、今年のように満員御礼で多数の参加希望者をお断りすることのないように全力を上げる所存です。今回、参加できなかった皆さまには心からお詫びするとともに、来年それを挽回致しますので、今後も是非よろしくお願い申し上げます。

最後に、お盆休みの中を協力して下さった名古屋ハートセンターの医師、看護師さん、MEさん、放射線技師さん、栄養士さん、事務職の皆さまたちを始め、支援して下さったメーカーの皆さまに心から御礼申し上げます。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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