いい心臓・いい人生 【第111号】 マルファン・ネットワーク・ジャパン

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いい心臓・いい人生 【第111号】 マルファン・ネットワーク・ジャパン
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発行:心臓外科手術情報WEB
http://www.shinzougekashujutsu.com
編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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うっとうしい梅雨の季節になりましたが、皆様お元気にしておられますか

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私は昨日、マルファン・ネットワーク・ジャパンの総会に参加して参りました。
この会はマルファン症候群の患者さんたちの交流と勉強の会で、情報を共有する
ことで病気の予防や早期治療、効果的治療を促進しようという前向きの会です。
私はこの会のアドバイザーを務めさせて頂いておりますが、忙しさにかまけて、
このところ参加できていませんでした。

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今回は名古屋市立大学病院心臓外科の須田先生のお世話で、同病院にて開催され
ました。
ほぼ10年ぶりに参加しましたが、皆さん活発で熱心なのは変わっておらず、
うれしく思いました。

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まずハートセンターでの後輩、加藤先生が弁形成のお話をされました。
それから質疑応答となり、患者さんたちの悩みが改めて浮き彫りになりました。
大動脈弁形成術などの高度な手術になると、それができない病院が多い。どう
すれば弁形成してくれる病院を見つけられるのでしょうか、、、切実な問題
です。医療はまだまだ不均一なのです。議論の中で私は、迷えばセカンド
オピニオンを他病院でもらうことをお勧めしました。

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例えば私の恩師デービッド先生が開発したデービッド手術をできる病院はある
程度限られます。まして弁尖が変化したようなケースへのデービッド手術が
できる病院はさらに限定されます。デービッド手術ができないと言われてから
私の病院へ来られて無事手術できたというケースが後を絶ちません。
ということでセカンドオピニオンの活用ですね。

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それとデービッド手術や弁形成が生体弁と比べてどのくらい長持ちするか、
というご質問があり、大変重要な質問でした。
10代ー30代の若い患者さんでは大きな差があり生体弁が不利、40-50代でも
無視できない差があります。60代を超えると生体弁も長持ちするため耐久性の
差は縮まりますが、無理なくデービッド手術や弁形成ができる場合、感染その他
の少なさからやはり生体弁よりも有利です。

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分科会では数名前後のグループに分かれて、トピックスごとに相談を受けました。
術後の暮らし方では、まだまだ世間一般の外来での指導が不足しているのを
痛感しました。中でも機械弁ベントール手術後のワーファリンへの検査が3ヶ月
に1回というケースを知り、驚きました。

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術前の暮らし方でも同様で、そもそも手術をできるだけ回避できるよう、たとえ
手術が必要でもなるべくその時期を後ろに伸ばせるよう、できる工夫があるの
です。血圧一つを取っても、もっと積極的にコントロールすることで大動脈の
拡張スピードを抑えることが可能なのです。しかしそうした指導をあまり受けて
おられないようで、こうした集まりの意義には大きなものがあると、改めて
思いました。

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会では東京大学の森崎隆幸先生の遺伝子相談なども行われ好評でした。
夕方の懇親会でも楽しい話や前向きの話で盛り上がり、時間の経つのを忘れる
ほどでした。

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時間の都合がつけば来年もまた参加したく思いました。
マルファン・ネットワーク・ジャパンの関係の皆様、お疲れ様でした。

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平成30年6月17日
医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
心臓血管外科専門医・指導医
米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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