いい心臓・いい人生 【第126号】 新しい左室形成術がメジャージャーナルの表紙を飾りました

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いい心臓・いい人生 【第126号】 新しい左室形成術がメジャージャーナルの
表紙を飾りました
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発行:心臓外科手術情報WEB
http://www.shinzougekashujutsu.com
編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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朝夕凍りつくような日々が続きますが、皆様風邪などひいておられませんか。
私は相変わらず走り回る生活です。

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さて以前から力を入れて来た左室形成術、つまり拡張型心筋症や心筋梗塞、虚血性
心筋症で壊れた心臓を治す手術ですが、年々改良が進んで治療成績も上がり、
アメリカ胸部外科学会や日本の主要学会などでも発表して参りました。この新しい
左室形成術は Frozen Apex つまり心尖部凍結型の左室形成術と仮称して、極めて
短時間でできて侵襲(体への負担が少ない)が小さいため、世界中でお役に立てる
ようアメリカのメジャージャーナルに投稿していましたが、受け容れられ、出版
されました。それも表紙を飾るという名誉ある形で、これまで多くの仲間たちの
支えのおかげで進んで来た仕事だけに嬉しさもひとしおです。

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このHPの米田正始の論文のページをご覧ください。
https://www.shinzougekashujutsu.com/web/2007/10/post_10c7.html
この一番末尾のところです。

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医学や医療が進歩した今でも拡張型心筋症や虚血性心筋症で命を落とす方は大変
多いです。心移植できれば元気になるのですが、そのチャンスは多いとは言えず、
たとえ移植してもらえても、5年10年と経つうちに拒絶反応や感染、冠動脈の
悪化、あるいは悪性リンパ腫などの広義のがんに悩まされるケースがあとを絶ち
ません。

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まず患者さんご自身の心臓を、安全確実に修復する、この努力を私は20年以上
に渡って続けて参りました。京大病院で左室形成術を開始した頃は、奇跡の生還
もあれば努力の甲斐なく亡くなられた方もありました。元気になられても、そこ
までの間、幾多の困難に打ち勝ち、耐えて健康をものにした、そういう印象が強く
ありました。その間のチームの皆さんの苦労は大変でした。何よりも患者さん
たちのご苦労とご努力は大きなものでした。

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左室形成術やその後の治療に改良を加え続け、最近は手術の翌日に呼吸のくだが
抜けて、食事も開始できる、IABP(心臓を補助する風船)などの補助循環が
要らないというケースがほとんどになりました。手術前から危険な不整脈が出て
いた方でも、術後は減ることはよくありますが、増えることはまずありません。
私は手術の当日や心配な時は何日か病院のICU(集中治療室)の近くで寝泊まり
していますが、手術後の患者さんの状態が良く、安定しているおかげで結構休め
ます。新しい左室形成術の良さを実感するひとときです。

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しかし患者さんの前向きのご協力あっての治療であることに変わりはありません。
さらに改良を続けねばならないのです。

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こうしたこともジャーナルでは評価されたようです。これからこの左室形成術を
さらに磨いて、世界に普及できれば、という方向性を理解いただけたようです。
多数の心不全患者さんを救うための新しい治療を日本から発信するという大仕事
をこれからも続けて行きたく思います。皆さんのご協力とご支援に感謝しつつ。

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平成30年12月22日

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医誠会病院心臓血管外科スーパーバイザー
心臓血管外科専門医・指導医
米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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