僧帽弁形成術の再手術、患者さんの想い出

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僧帽弁形成術の再手術でも心に残る患者さんは何人もおられます。 P1120236b

ある立派な大学病院で弁形成を受けられ、逆流が残り、どうしたものかと私までご相談にこられた女性がおられました。

弁をエコーで拝見すると、修復したはずの部位が逸脱しています。人工腱索を立てたとのことだったのですが、その腱索が長すぎたようです。

し かし患者さんにそのようなことはお話しづらい、どうしようかと迷いました。再手術はそう簡単なものではないからです。私たちはたくさんの再手術をお引き受 けして、初回オペと変わらない成績は出していますが、上記のように弁の破壊変形が強いこともあり、いろいろと頑張らねばならないことが多いのです。

何か月か、外来で定期健診していましたが、心不全が強くなり、このままでは危険と判断するようになりました。患者さんも症状の進み具合からこのままではダメと理解して下さり、僧帽弁形成術の再手術をすることになりました。

手術では前回の人工腱索を取り外し、新たに適正な長さと形の人工腱索を付けました。しかし逆流試験をやってみるとそれでも不十分で、その周辺部2か所をさらに手直しし、ようやくきれいに仕上がりました。

かつてはこうした再手術はいちどリングを外して行ったものですが、この頃から、かつてのリングをそのままに、悪いところだけを修復する技を見出し、これで手術時間がさらに短くなりました。

それやこれやの工夫によって、患者さんはすぐにお元気になられ、今度は逆流のない優れた弁で元気な楽しい生活を送って頂けるようになりました。笑顔の患者さんとお会いするたびに、初めてお話ししたころはつらかったねえ、と今は昔話になります。幸いなことです。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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