いい心臓・いい人生 【第136号】 第72回日本胸部外科学会にて

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いい心臓・いい人生 【第136号】 第72回日本胸部外科学会にて
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発行:心臓外科手術情報WEB
http://www.shinzougekashujutsu.com
編集・執筆:心臓血管外科専門医・指導医 医学博士 米田正始
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この10月30日から11月2日まで、第72回日本胸部外科学会へ行って参りました。
日本の心臓血管外科関連の学会では最高峰に位置する学会で、充実したプログラム編成
でした。今回は京都大学呼吸器外科の伊達洋至先生が会長で、京都にて開催されました。

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胸部外科の伝統とイノベーションというテーマでした。

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1日目

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心筋梗塞合併症に対する手術術式というシンポジウムでは私がトロント大学から
発信したInfarct exclusion心筋梗塞除外術、David-Komeda法と呼んで頂いている手術
からの展開について、さまざまな改良や新たな方法が論じられました。いずれもメリット
を持つ良い方法と思いましたが、元々の状態が悪い患者さんでは限界があり、この意味で
現在アメリカで試みられている補助循環で状態改善を図ってからInfarct Exclusionを
行うのが最も確実で安全ではないかと感じました。

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ついで機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する治療選択:形成、置換、マイトラクリップ?と
いうフォーカストセッションではアルバートアインシュタイン大学のミックラー教授が
基調講演をされました。私たちが開発した乳頭筋最適化手術PHOも大きく取り上げていた
だき、光栄でした。人工弁を主体にした松居先生や、弁尖拡大で弁形成にこだわる山口
先生、そしてMクリップの大野先生など、いずれも使える方法の振り返りとして参考に
なったと思います。

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私と神谷先生とで、Michler先生と昼食とりながらDual Repair等のディスカッションを
する機会が得られました。様々なご意見をいただき、今後のプロジェクトに弾みがつく、
貴重なひとときでした。

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午後には京都大学・山中伸弥先生の特別講演があり、ノーベル賞に輝いたiPS細胞発見の
偉大さもさることながら、研究者としていかにその成果を世の中に還元し、役立てるか
に大変な努力をしておられることをあらためて知り、本物の研究者魂に触れたように
思います。お見事と感動しました。

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僧帽弁後尖形成術の長期成績のシンポジウムではいくつかの方法での長期成績の報告が
あり、良いセッションでしたが、すでに解決済みの問題をあまり突っ込んでもどうかな
という気も致しました。

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2日目

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慢性心房細動に起因する機能性房室弁逆流の外科治療ワークでは、この新しい病気の
概念と内科外科治療について論じられました。岡山榊原病院の畏友・吉田清先生、すば
らしいご講演ありがとうございました。心房細動や心房拡張から発生する病態のため、
僧帽弁以上に三尖弁が壊れやすいと感じており、その意味で房室弁逆流という名称は的
を得ていると思いました。またそう感じさせる一例をご紹介しました。16年前に
メジャージャーナルから発表した心房縮小メイズ手術を使って下さる病院が増え始め、
うれしいことでした。

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ランチオンではスタンフォード大学時代の畏友Marc MoonとNYのGallowayがMVPの話をし、
せっかくの機会を盛り上げようと、いくつか質問させていただきました。Marcはprofessor
Komedaと自分はスタンフォードで一緒に研究した仲間で、とわざわざ紹介などしてくれて
気恥ずかしく思いました。セッションのあとで彼らと高梨先生らとで記念写真を撮りまし
た。

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昼休みにスロベニアの畏友Borut Gersakとゆっくり歓談する機会がありました。医誠会
病院の来し方行く末なども相談でき、有意義なひとときでした。

胸部外科と専門医制度の現状と今後について、ミスター専門医の愛称をもつ種本先生らの
お話があり、今後の流れがおよそわかりました。

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3日目

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シンポジウム・メイズ手術の長期成績。まずワシントン大学の畏友Marc Moon先生の基調
講演がありました。最近気になっているMICSでの左心耳クリップについて質問したところ、
transverse sinus越しに外側からクリップするとのことで自信をつけました。ついで日本
医大石井先生の見事なレビューがありました。

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クリニカルビデオセッションでは私たちのオリジナルであるDual Repairのビデオを発表
しました。これまで弁形成できなかった重症機能性僧帽弁閉鎖不全症や拡張型心筋症DCM
にも十分効果があり、その実際を見ていただきました。Marc Moonも大変関心を持ってく
れ、会場からも質問を多数いただきました。これから内外に広げることができればと思い
ました。

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Postgrad advanced courseでいくつかの有益な講演がありました。京大湊谷先生のデービ
ッド手術の講演はすぐ役立つ、実質的なものでした。東北大学斎木先生の感染性胸部・
胸腹部瘤のお話も得難い貴重なものでした。

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その他にも多くの旧友や仲間と有益な時間を過ごすことができました。留守を守って
くださった医誠会病院の皆さんに感謝申し上げます。

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米田正始 拝

2019年11月16日

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執筆:米田 正始
医誠会病院スーパーバイザー 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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