複雑な三尖弁形成術も

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三尖弁形成術はふつうは弁の付け根にリングを取り付ける、三尖弁輪(弁輪)形成術で事足ります。これは心臓外科手術の中でも比較的簡単な手術に入ります。

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しかし三尖弁閉鎖不全症の中にはリングだけでは治せない、重症例が少なからずあります。

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その時に三尖弁置換術つまり人工弁を入れてFotosearch_CCP01048しまうと後が結構大変です。三尖弁への機械弁は僧帽弁のそれより血栓ができやすく、かといって生体弁は長持ちしない傾向が報告されています。

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やはり三尖弁形成術が良いのです。このことは特に、将来が長い若い患者さんに当てはまります。中でも若い女性患者さんにはより重要です。というのは妊娠出産を安全に行うために弁形成は絶対有利だからです。若い男性患者さんの場合もスポーツや仕事に打ち込む時に弁形成は随分有利です。

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三尖弁は右図のように弁尖つまりひらひらと開閉する部分だけでなく腱索つまり弁尖を支える部分と乳頭筋つまり腱索と心室を繋ぐ心筋そして弁輪さらに右室壁までが構成要素で、これらのうちどれが壊れても逆流が起こりやすくなります。逆にこれらのどれも治せることが複雑三尖弁形成術では必要なのです。

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私たちは一般的なリングを付ける手術以外に、以下のテクニックを駆使して弁形成を完遂するように努力しています。

1。ゴアテックス糸(体に馴染みます)を用いた人工腱索 弁尖の逸脱はほとんど直せるだけの威力があります。このノウハウを蓄積している施設は希です

2。弁尖のパッチ拡大 弁尖が不足する時に役立ちます。自己心膜やゴアテックスシートなどを用います。

3。クレフトの修復 これは弁尖の隙間が異常に大きい時などに役立ちます。2。などと併用することもあります

4。乳頭筋の形成 位置を変えたり長さを変えたりして、乳頭筋が良く作動できるようにします。

5。その他 エプシュタイン病に対するコーン手術やペースメーカー三尖弁閉鎖不全症などの場合にはそれらにぴったりした方法を用います

これらを使い分けたり併用したりして、ベストの結果を目指すわけです。

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三尖弁閉鎖不全症は中等度なら手術なしで経過を見られることもありますが、本物の重症になると、心不全や肝不全、腎不全などが起こり命に関わることさえあります。あるいは運動ですぐ息切れがし、疲れやすく、下肢もむくみやすく、生活の質が低下したり仕事や学業に支障を来たすことがあります。

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弁形成が必要、でもできないから弁置換つまり人工弁と言われた方は広く調べ、相談質問し、弁形成の可能性を探ることをお勧めします。参考:お便り130 大学病院でも三尖弁形成術は無理と言われ、弁置換術しかないと言われた15歳少年からのお便り

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さらにこうした三尖弁形成術の経験の蓄積から、私たちはほとんどの場合、これを傷跡の見えにくい、骨も切らないMICSで行なっています。若い患者さんたちには体の傷だけでなく心の傷まで軽くなると喜ばれています。

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