虚血性僧帽弁閉鎖不全症、、患者さんの想い出

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Aさんは60代男性で、かつて大きな心筋梗塞を患われ、心不全になって紹介来院されました。

虚血性心筋症とそのための虚血性僧帽弁閉鎖不全症で苦しく、仕事もできず入院を繰り返す状態になっておられました。

左室は壊れ、駆出率は20%を切っていました。健康な左心室の駆出率は60%台ですので、その3分の1もない状態でした。

しかしまだ心筋が頑張っている部分があること、虚血性僧帽弁閉鎖不全症もけっこう強いため僧帽弁形成術後の改善も大きい、冠動脈バイパスをつける血管がある、ことなどから心臓手術をお引き受けしました。

手術では私たちが開発した心臓手術を2つ併用し、バイパス手術も加えてベストを尽くしました。

まず左室には一方向性ドール手術という左室形成術をもちいて、形を整えながらベストの大きさに仕上げました。

虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対しては乳頭筋最適化手術(略称PHO)で、僧帽弁が自然に動けるように工夫しました。

冠動脈バイパスをつけられる血管が2本あったため、これにバイパスを付けました。

大きな手術でしたがこれらを比較的短時間でまとめ上げることができ、患者さんの負担は少なくなったものと思います。術後経過は順調で、Aさんはまもなく元気に退院して行かれました。

術後の左室機能は徐々に回復し、30%を超えるようになりました。3種類のお薬つまりβブロッカー、ACE阻害剤またはARB、抗アルダクトンA薬をうまく併用し、さらに心機能の回復をはかりたく思います。

外来でお元気に仕事復帰を果たされたAさんのお顔をみるたびに感慨深いものがあります。これからも元気で楽しくやりましょう。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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