僧帽弁閉鎖不全症、、患者さんの想い出1

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僧帽弁閉鎖不全症が重症になれば現代の世の中では病院へ来て診察を受け、診断がつけば心臓手術になるのがふつうです。

今なお複雑な弁形成はダメといって僧帽弁置換術を中心に行う病院は多数ありますが、先進的病院では複雑な形成でもしっかりやるところも散見されます。

そうし A307_111た中で、ある30代の男性が来院されました。心臓は心移植の患者さんに準じるほど大きく弱くなっており、僧帽弁閉鎖不全症は高度でした。聞けば、長年にわたり手術が怖いため病院を避けていたとのことで、弁の逆流をずっと放置したらこうなる!と言えるような、心不全教科書のような状態でした。左室の駆出率は20%台と健康なひとの3分の1近くまで低下していました。仕事にも支障がでてひきこもり状態でした。

要するにもう手遅れ状態の僧帽弁閉鎖不全症だったわけです。よくぞここまで我慢したねというわけです。しかしすんだことを論じてもだめで、やはり前向きの議論をして、この患者さんが元気さを取り返せるようにしようと思いました。

単に弁形成してもなかなか治りにくく、かといって弁置換では予後が心配なので、私たちが開発した乳頭筋最適化手術(PHO手術)を行いました。これによって弁だけでなく左室もあるていどは改善するのです。

結果は上々で、患者さんの回復は意外なほど良く、心臓はすでにかなり小さくなり、そのパワーはまだまだですが、回復の兆しが見られます。

手術前はいわゆる「手遅れ」の僧帽弁閉鎖不全症でしたが、なんとか間に合わせた、これから新しい人生を頑張りましょうというところまで回復できました。

手術だけでなく、その後のお薬や運動治療を併用して、心臓がもとのパワーを取り返せるよう、患者さんともども頑張っています。お役に立てて本当にうれしいことでした。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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