ロボット心臓手術とは

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最近テレビなどでロボット(主にダビンチ)を用いた心臓手術が話題です。

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ロボットとは実際にどういうものでしょうか?

AI(人工知能)のようにロボットが自分で判断して難しい手術をこなすのでしょうか?

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答えはNOです。

ロボットはいわばマジックハンドで人間が操縦して胸の中で切ったり貼ったりするだけのものです。うんとわかりやすく言えば孫の手をデラックスにしたようなものと言われます。1990年代に開発され徐々に改良され現在に至るものです。

ただし、ロボットは関節が多く、胸の中の狭い空間でも比較的取り回しが良く、今後胸腔鏡よりも便利になる可能性があります。

その反面、ロボットは高価な消耗品が多く、保険適応になったとはいえ、現在も様々な形で患者さんの負担増になっているケースが後を絶ちません。

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2019年7月に東京で開催された日本低侵襲心臓手術学会総会でも胸腔鏡・内視鏡を多用するペリエ先生(フランス)とダビンチ・ロボットを多用するルルメ先生(アメリカ)の討論がありました。それぞれミックス(要するに傷跡が小さい手術です)として優れたものですが、どちらが良いとは言えない状況で、国や病院や個人によってケースバイケースというのが答えかと私は思いました。ダビンチについている3Dカメラは最新の3D内視鏡より性能が劣るという識者の意見は本当と思います。

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どちらも良いならお金がかからない胸腔鏡・内視鏡が有利という意見も聞かれました。

ロボットを使えば一歩先進的な手術と勘違いして患者さんが集まるという意見が陰で多数聞かれました。

実際、アメリカの学会での議論では、内視鏡やロボットも使ったが、結局直視下つまり自分の眼で見るミックスがベストという権威筋の先生もおられるのです。

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ちなみに傷跡の小ささではロボットは大きめの穴が沢山できるためあまり綺麗とは言えません。

そうしたサテライト穴はいつまでも残ります。よほど色白でケロイド体質でない方でなければ、決して一時的なものではないのです。ダビンチ・ロボット手術後の傷跡の実例はこちらをご覧ください

ロボットは安全上有利かと言えばそうとも限りません。アーム(腕)が心臓や血管に当たったとか、調整に時間がかかった(つまり患者さんには大きな負担になります)などの事例報告が少なからずあります。また現在でも冠動脈の吻合やそのレベルの細かい作業には不向きと報告されています。

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医誠会病院では10年以上も前にダビンチロボットを何と2台も装備し、先進的医療を推進した経緯があります。

しかしあまり患者さんの役に立たないという判断となり、ロボットを処分し、現在に至っています。

近い将来、ダビンチ・ロボットの特許権が切れて、国産の高性能かつ安価なロボットが出現すれば、また状況は変化するかもしれません。

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ともあれ、大切なことは、質の高い弁形成術を、綺麗で見えにくい傷跡で、そして患者さんの負担を極力減らす、そうした医療を推進していくことと思います。現時点ではロボット=素晴らしい先端医療というわけではないのです。

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執筆:米田 正始
医誠会病院スーパーバイザー 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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