9) 心筋梗塞のあと、左室破裂しても手術できるのでしょうか?―急げば可能

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◾️心筋梗塞後の左室破裂とは?

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心筋梗塞の後、まもない頃には左心室が破裂 (左室破裂) したり隣の右心室という部屋に破れたり (心室中隔穿孔VSP) することがあります。心筋梗塞のために左室の壁の一部が死んでもろくなるためです。多くの場合いきなり血圧が下がり、いわゆるショック状態になってしまいます。狭義の左室破裂には2つのタイプがあります。

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◾️ブローアウト型の左室破裂

私たちが開発した左室破裂用左室修復法です。ブローアウト型の厳しい破裂でも救命した経験があります.

このタイプの左室破裂は超重症で、血液が噴出し、心臓の周りにある袋(心膜)の中に血液が急に貯まり、心タンポナーデになり血圧が出なくなります。そのままでは患者さんはあっという間に亡くなってしまいます。

なにしろ一分間に1リッターなどという速度で出血することさえあり、人間の血液量が5リッターとするとこれはあっと言う間です。そのため急ぐのです。

私たちは新しい術式を工夫して、ブローアウト型で破裂した心臓を防護する手術を 5名の患者さんに行い、良い成績を上げています。

 

これにはタイミングも大切で、助かった患者さんたちはじわじわと破裂が進み、病院に到着してから本当に破裂したのかも知れません。

いずれにせよ疑わしいときは急いで相談していただくことが大切です。

おかしいとき、左室破裂が疑われるときには直ちにPCPSという足の付け根の血管をつかう体外循環でまずは命を支え、その間に胸を開けて治しに行きます。

この手術法は心臓の表面にある冠動脈をまたぐことでうまく回避できるため、しっかりとパッチを縫い付けることができるのです(上図)。

 

左室破裂は左室壁の心筋がジグザクに解離して起こるか、薄くなった場所と厚い場所の境目が裂けるために起こることが多いため、左室の外側から内側に向けて十分に深く糸をかけるようにしています。

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◾️ウージング型左室破裂

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もう少し穏やかな破裂(ウージング型 左室破裂)では、出血はじわじわと出るだけですので、手術用の糊(のり)で心臓の表面を安定化することで治せます。

この方法は東京女子医大の遠藤真弘教授(当時、現在は東京ハートセンター)が開発されたもので、患者さんの体力的負担がきわめて軽いという利点があり、私たちも積極的に活用しています。

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ただしこの方法は左室の弱い部分を残すことになるため、中には時間を経て再拡張をきたすこともあり、慎重なフォローが勧められます。じっさい、手術のあと時間が経って左室瘤になったとか、また破裂したなどの報告が見られます。やはりこうした病気は丁寧な長期間のチーム医療が大切ですね。

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やはり心筋梗塞後は全体像を見失わない慎重かつ的確なフォローや治療が大切と思います。

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