【第八号】寒い日はご用心

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【第八号】
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発行:心臓血管外科情報WEB
http://www.masashikomeda.com
編集・執筆:米田正始
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寒い日が続きます。この寒い季節にはハートセンターのような心臓専門病院は忙しく

なります。つまり寒くなると心臓の調子が悪くなるのです。

たとえば狭心症の患者さんでは寒くなるとそれまで安定していた症状が急に悪化し、

運が悪いと心筋梗塞を起こして緊急入院・緊急治療になることもあります。それは

寒くなることで全身の動脈が縮こまって血圧が急に上がり心臓への負担が急に増え

るからです。また寒さのために心臓に血液を送る冠動脈そのものが縮こまり血液が

流れにくくなることもあります。急な寒さは心臓の大敵なのです。

 

同様に、心不全をお持ちの患者さんでも、寒くなると心臓への負担が急に増え、それ

まで何とか安定していた心不全が一気に悪くなることがあります。弁膜症や心筋症

その他の病気でも同じことが起こりやすいため注意が必要です。

 

昔の人は偉かったと思うことがよくあります。まだ医学も医療も未熟であった時代でも、

心臓の悪い患者さんをみて、この冬を無事に乗り切ってくれれば良いが、などと普段

以上の注意をしたものです。実経験の中には科学が息づいているという一例ですね。

 

また寒くなると肺や気管支などの空気の通り道が寒さのために傷み、肺炎や気管支

炎のもとになります。現代のエアコン社会では暖房のために湿度が下がり、肺や気管

支の表面もカサカサとなって抵抗力は落ちてしまいます。そこへばい菌やウィルスが

つけこむと肺炎や気管支炎になりやすくなります。まして心臓がもともと悪い方の場合

は二重に肺もやられやすくなります。

 

そのため冬にはいつも以上の、ちょっとした気遣いが心臓や肺や体を守ります。たと

えば急に寒いところに行かないように、寒いときはポータブルトイレを寝室に置くとか、

やむなく外へ出るときは軽くウォームアップしてから出るとか、マスクをかけて冷たい

空気をいきなり吸わないとか、エアコンをつけるときは加湿器も使うなどですね。それ

らのケアに加えて、必要なときにはお薬を出してもらえば、効き目も上がるというもの

です。

 

そして心配なときは気軽に相談できるようなかかりつけの先生をもっておくというのも

有効です。私は自分が手術させて戴いた患者さんに、何か起こればいつでも病院

まで連絡して下さいとお伝えしています。そのおかげで寒い季節でも安全に回復され

たことは何度もあります。近くの患者さんでしたら直接病院へ来ていただき、関西、

首都圏や九州その他遠方の方はその地域の先生にこちらからもお願いして早期発見

・早期治療できるようにしています。

寒い季節を楽しく安全安心で過ごしましょう!

(註:この記事は私のホームページにある心臓外科医の日記ブログから一部抜粋、転載い
たしました。日記ブログの方もご覧下さい)

2010年1月6日

名古屋ハートセンター心臓血管外科
米田正始 拝

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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