Keio Mini Mitralに参加して

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この4月27日に慶応大学にて行われましたKeio Mini-Mitral(慶応ミニマイトラル)という研究会に参加しました。

この会は2年前に第一回研究会が行われ、今回は2回目になります。

ポートアクセス法で僧帽弁形成術をおこなう施設は今なお少ないですが、これを日本では一番最初に導入し、今日まで発展させてこられた四津教授と慶応大学チームならではの企画で2年前にも参加いたしましたが、今回はライブ手術の司会という大役を仰せつかっての参加でした。

ポートアクセス法はスタンフォード大学で開発されました。私自身もスタンフォード大学に留学中の1993年ー1996年にこのポートアクセス法による心臓手術を学びましたが、その後、オフポンプ冠動脈バイパス手術や再生医療はじめ、さまざまなプロジェクトに忙殺されてポートアクセス法は封印状態でした。4年ほど前から名古屋ハートセンターにて本格的に開始し、内外の先生方のご支援をいただき、ポートアクセス手術を含めた100数十例のミックス手術を事故なく実施し、これまで手術が危険と言われたタイプのものまで安全手術ができるようになったというおまけまでついたという状況でした。

そこで日本のポートアクセス手術の安全で堅実な発展を願うという四津先生のお考えに全面的に賛同して、この会をもりあげるべく参加いたしました。

会は前回と同様、ポートアクセス法で僧帽弁形成術を慶応病院にて行われたものを、会場で皆さんと共に拝見しながら徹底したディスカッションを加え、さらに重要ポイントをミニレクチャーしていただき、それについてもディスカッションして、皆の経験や情報を共有するという形で進められました。

朝8時に集合して夕方6時の懇親会までの間の大半を、榊原記念病院の高梨秀一郎先生と私、米田正始で司会させて頂きながら、じつにいろいろな勉強や情報交換ができ、充実このうえない一日でした。会場は満席、隣の予備室も満席状態でこの領域への関心の高さをうかがわせるものでした。

ライブ手術では慶応大学の岡本先生や工藤先生が確たるルーチンにのっとって、開胸し準備を進められ、僧帽弁が見えるあたりから四津先生が登板されました。

僧帽弁は後尖のP2と呼ばれる真ん中部分の腱索という糸のような組織が切れ、そのため弁の逆流が起こり、時間とともにそのP2が伸びて大きくなりさらに逸脱し逆流を増やすという状態になっていました。

近年の僧帽弁形成術の進歩により、こうした病変の弁形成には何通りかの方法があり、適材適所で活用すればそのいずれでも良い結果を出せるのですが、この患者さんにとって何がベストかという観点から熱いディスカッションができました。東京医大の杭の瀬先生、新東京病院の山口先生、榊原記念病院の田端先生、榊原病院の坂口先生、大阪大学西先生はじめポートアクセス僧帽弁形成術に熱心な先生方はじめ循環器内科や麻酔科を含めた多くの先生方が内容の濃い討論をして下さいました。

手術は上記P2を三角切除し、あとの微調整をゴアテックス人工腱索で行い、きれいに決まりました。

このライブは同じ時期に開催された日本心エコー図学会の会場にも中継され、より開かれた情報公開や教育の場として多くの先生方やコメディカルの皆さんのお役に立てたようです。

私自身、ライブ手術はこれまで10回ほど経験があり、ライブの司会も同じぐらいの経験をもっておりますが、安全性を維持しつつ内容充実で楽しく盛り上がり、、という目標はなかなか難しく、あとでいろいろ反省しています。とにかく手術成功で盛会に無事完了し、四津先生はじめ関係の皆様にお役に立てたようですのでほっとしています。何か昔の結婚式で、仲人として長時間壇上にずっと座り続けていたのを想い出しました。

現代はチーム医療の時代です。これは医師同士、あるいは医師とコメディカル、さらに事務職員はじめ一般職の方々とのチームワークを示すことが多いのですが、病院や大学を超えたチーム同士の協力もまた含まれるものと思っています。今回のライブ研究会は一つの大きな目標を実現するために皆で協力する楽しみを与えてくれた会でもあったと思います。

四津先生、慶応大学の皆様、ご参加の皆様、ありがとうございました。

 

2013年4月29日

 

米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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