冠動脈バイパス手術とくにオフポンプバイパス手術は狭心症・心筋梗塞の治療のなかで大切な位置をしめています。
もちろん中心は予防つまり食生活や運動、ストレス軽減、リスクファクターの軽減などが本質的ですが、忙しい現代人にはなかなか予防しきれないという現実があります。
そこでお薬による治療、それでだめならカテーテルによるPCI治療が威力を発揮します。いわゆるステントという金属製の筒のようなものを冠動脈の中に植え込んで冠動脈を広げるわけですね。
しかしそのステントも、いれるべき冠動脈がひどく壊れて血管の本来のちから、たとえば油分をみずからきれいに掃除して血管が詰まらなくなるなどの作用はありません。なので血管が悪い重症患者さんではステントの効果は長持ちせず、患者さんも長生きできなくなります。
ここで長持ちする治療法としての冠動脈バイパス手術が見直されることになるのです。
その象徴的な出来事が天皇陛下の冠動脈バイパス手術でした。
そして多くの実際のデータをもとにして、ガイドラインが改訂され、EBM(証拠にもとづく医学医療)重症の冠動脈病変のほとんどは冠動脈バイパス手術が第一選択となりました。
かつてのように、カテーテルPCIできる場合は何でもPCIやれば良いという考えはこうして時代遅れとなって行きました。とくに若い先生方の間に、EBMを順守しようという考えが広がり、ガイドラインを無視するのを男の心意気のように感じていた古い世代とのギャップがはっきりして来ました。
このお手紙(絵葉書)の患者さんもこうしたEBMの時代に、冠動脈バイパス手術をハートセンターで受けられた患者さんです。
もともと大学病院に通院しておられ、右冠動脈100%閉塞、回旋枝付け根に90%、左前下降枝近位部にも90%の狭窄がありました。
私たちのところでの手術を希望され、来院されました。
冠動脈バイパス手術後の経過は良好で、まもなく退院されました。
あれから1年半が経ち、以前から行きたいとおっしゃっていた北欧の旅行が実現しました。
美しいお葉書をいただき、うれしく思います。
元気で長持ち長生き、これが冠動脈バイパス手術の良さです。今後も楽しく元気にお暮しください。
*********患者さんからの絵葉書********
スウェーデン、ノルウェー、デンマークをまわります。
爽やかな空気のもと、素晴らしい歴史の重さに感じ入っております。
体調も万全です。
有難く幸せをかみしめております。
ストックホルムより 感謝を込めて ****
PS. 米田先生、文芸春秋5月号の記事拝読させて戴きました
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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