睡眠時無呼吸症候群 (SAS)とは

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◾️睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

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眠っている間に呼吸が止まる病気です。

呼吸が止まるといってもそのまま死んでしまうわけではありません。

しかし体は酸欠になるためさまざまな弊害が起こります。

呼吸が A304_026止まっている間の酸欠と、呼吸が再開したときの酸素飽和度の急速な増加のために動脈硬化を引き起こし、さらには心筋梗塞や脳血管障害へとつながります。

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交感神経を高ぶらせてしまうため高血圧や糖尿病をおこしたり悪化の原因になります。つまり単なる無呼吸にとどまらない、大きな病気の原因になってしまうので恐ろしいわけです。

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◾️睡眠時無呼吸症候群SAS、二次災害も恐ろしい

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起こるのは病気だけではありません。事故の原因にもなるのです。

夜眠っているときにこの睡眠時無呼吸症候群SASが起こると、夜中に何度も無理やり起こされるような形となり、睡眠が細切れになり、睡眠不足となります。

そのため昼Ilm18_ad03023-s間も眠くなり交通事故や職場での事故につながるのです。

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2003年2月に山陽 新幹線の運転手が居眠りをしてあわや大惨事になるまえに自動列車制御装置ATCが作動して無事だったという事例がありました。

このときの運転手さんが睡眠時無呼吸症候群だったことが判明し、危険な病気ということで話題になりました。

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◾️睡眠時無呼吸症候群の特徴は次のとおりです

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1.睡眠中に10秒以上の無呼吸が5回以上繰り返す

2.いびきを伴う肥満者に多く、高血圧の合併が多い

3.症状としていびきや昼間のひどい眠気や疲労感。朝起きたとき熟睡感がなく、頭痛などすることも。

4.米国睡眠学会AASMの定義は:昼間の過度の眠気もしくは閉塞性無呼吸に起因する症状のいくつかを伴い、かつ無呼吸低呼吸指数(AHI、1時間あたりの無呼吸低呼吸の回数です)が5回以上ある

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日本人では欧米に比べて肥満が軽いわりにはこの病気が多いことが知られており、何らかの治療が必要な方は全国に200万人はいると推定されています。治療を受けているのはごく一握りだけで、他の人たちは危険にさらされていると言えましょう。

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◾️睡眠時無呼吸症候群SASには大きく2タイプあります。

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1.上気道(のどの奥)が閉塞する閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS): こちらが大多数です。

2.のどに問題なく呼吸がとまる中枢性睡眠時無呼吸(CSA): 少数です。脳のCO2(二酸化炭素)センサーが弱るために起こります

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◾️重症度は大きく次の5段階にわかれます、、、、

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         AHI   眠気

1.健康者  5未満  なし

2.軽症    5-15  あまり集中していないときに思わず眠気や気づかず眠ってしまう。テレビや読書中などに。

3.中等症   15-30 多少集中が必要なときに上記が起こる。コンサートや会議中などに。

4.重症    30以上 かなり集中が必要なときに上記が起こる。食事中や歩行中運転中などに。

5.超重症   60以上

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◾️睡眠時無呼吸症候群SA A306_085Sのための合併症は、、、、

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健康者とくらべて高血圧は2倍に、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)は3倍に、脳血管疾患は4倍に、糖尿病は1.5倍に増えます。

まさに死の病になっていく病気なのです。

診断は問診とSpO2、脈拍などでメドが立ち、簡易PSG(ポリソムノグラフイー)という検査でおよそわかります。正確にはPSGで脳波、SpO2、脈拍、呼吸状態、心電図等をしらべて確定します。

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◾️閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療は、、、

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1.生活習慣とくに肥満を是正: ダイエット、運動、アルコールやタバコの禁止

2.睡眠習慣の改善: 睡眠薬を減らし、横向きに眠るなど

3.CPAP(マスクをもちいた呼吸器)での在宅治療

  空気を送り陽圧になるため、狭くなっていた気道が広がり呼吸がしやすくなります。AHI20以上が適応です

4.耳鼻科治療 上気道を広げます

5.歯科治療 受け口になるようにマウスピースを造ります

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◾️まとめ

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このA301_075ように睡眠時無呼吸症候群は恐ろしい病気です。上記の症状に心当たりがあれば、内科でその診断を受けて治療を早く開始しましょう。

SASイコール心臓病ではありませんが、その恐れがあるときには心臓の定期検診も一度は受けておかれると良いでしょう。

その所見に応じてその後の検診の計画が立ちます。

 

治せる病気で死なないように!

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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