最終更新日 2020年3月10日
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◾️PCI(ステント)後の患者さんたちへ
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医誠会病院や仁泉会病院の外来に狭心症にたいするカテーテル治療(略称PCI)あるいはステント治療(右図のようなかたちで治療します)のあと何年も経った患者さんたちが来られます。
お元気にしておられる場合は何よりなのですが、お話をじっくり聴きますとある状況で胸が不快になるとか痛くなる、あるいは坂道などで息切れがひどくなったなどの訴えを聞きます。
PCIから年月が経ち、もうこれで治ったと思っておられる方も少なからずありました。もちろんそういうこともありますが、冠動脈の狭窄は動脈硬化のひとつであり、動脈硬化はかなりの工夫を凝らさないと進行性なのです。
そういうことでかつてカテーテル治療・ステントを受けられた患者さんにおかれましては何か症状の変化があればいつでもご連絡ください。
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◾️ステント・PCIと冠動脈バイパス手術との違いは
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冠動脈バイパス術後の患者さんの場合はPCI・ステントよりは安定度が良いので安心度は高いです(左図)。
冠動脈バイパス手術は「血管を治す」のに比べてPCI・ステントは「狭窄部を治す」だけだからです。
この差は糖尿病とくにインシュリン使用の場合(IDDM)や慢性腎不全・血液透析の患者さんの場合に顕著です。
しかしそのバイパス手術後といえども新たな病変がおこることは時にあります。PCIの後よりは安定度が良いのですが、やはり油断は禁物なのです。
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◾️そこで
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医誠会病院と仁泉会病院の私の外来では、こうした患者さんの長期フォローもしています。もっとも大切なことは新たな冠動脈狭窄をつくらないこと(二次予防といいます)、そのためにリスクファクターを丁寧に抑え込むことです。
たとえば血圧、中性脂肪、悪玉コレステロール、善玉コレステロール、血糖値(A1cヘモグロビン)、尿酸、喫煙さらに体重その他をきちんと健康モードにします。
必要があれば糖質制限食などもうまく活用し、薬だらけになることなく、かつなるべく快適に健康を守るようにしています。
右図は動脈硬化の発生をイメージしたものです。
しかしそれでも冠動脈の硬化が悪化するときには、症状の変化などを鋭敏にキャッチし、CTなどでタイムリーに検査し、必要であればその治療へ向かいます。必要に応じて薬、PCI、バイパス手術、心臓リハビリその他を選んでもちいます。
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◾️まとめ
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このように冠動脈狭窄症は進行性つまり完治はしない、しかし油断なく予防や二次予防につとめればかなり治せる病気とも言えましょう。いつも申し上げることながら、「治せる病気で死んではなりません」をお忘れにならぬようお願いいたします。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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