医療は患者さんが元気に幸せになるためにあるものです。
そのため有名な先生だから遠慮するとか、教授だから謝礼が必要などは筋違いです。また病院や医師を「選ぶ」権利が患者さんにはあるのです。
心臓病の患者さんにおかれましては、もし心臓手術が必要かも知れないと言われたら、前向きに情報を集め、また遠慮なくご質問されるのが良いと思います。
このHPでもできるだけお力になれるよう努力しています。心臓血管外科専門医・医学博士の米田正始の責任執筆でお届けします。
※お問い合わせのときにはメルアドを正確にお願いします。
1. 当サイトは
心臓血管外科について、患者さんや一般開業医の先生に心臓手術などの情報を提供することを目的としています。もちろん心臓血管外科専門医の責任執筆で、ハートチーム・循環器内科医などの協力を得て心臓病や血管病の解説もできるだけつけてあります。
記載はなるべく平易にしていますが、国内外の新しい知見や実際の心臓手術写真をはじめ内容的には循環器内科専門医の先生方にも参考になるように心掛けています。
医学は日進月歩ですので、熟練した専門医による新しく質の良い情報によって、患者さんが救われることがこの領域でもよくあります。
たとえば、下記項目などを防げれば素晴らしいことと思います。
- ・けっこう危険な状態なのに痛みが軽いため自分はまだ大丈夫と油断して心臓手術のタイミングを逸する
- ・まだ頑張れる状態なのにもう外科手術はダメとあきらめて治るチャンスを失う
- ・まだ大丈夫なのか危険なのかわからず心配で悶々とした毎日を過ごす
2. 予備知識につきまして
当サイトでは豊富な内容を目指していますが、一般読者の方々には心臓外科の予備知識や用語の解説などが不足しているかと思います。
しかし病名とその病気の説明を聴かれたあとである程度の予備知識をもって検索される状況を考え、あまり冗長にならないようにも務めました。
この領域でもいわゆる心臓手術ランキング本や名医・スーパードクター紹介(メディア報道の項を参照)などはしばしば有用な内容となり得ますが、心臓外科の医療内容や具体的なことまでは伝え切れない懸念もありそうした本を読まれるときにも役立つかも知れません。
これらの心臓外科と心臓手術の基本知識につきましては、「All About」(オールアバウト、知識の百科事典のようなサイトです)にまとめを載せてありますので、こちらからご覧下さい。
最近話題になっている「突然死」、その原因や対策もまとめてあります。
平素の注意やちょっとした練習がいざというとき、ご自身や肉親・友人を助けます。ぜひ上記をご一読ください。
なおフォトギャラリーは休憩用で筆者の趣味でもあります。論文リストは主に医師・医学研究者の方々向けでより正確で詳細な知識内容が得られることを目的としています。
3. EBMのすばらしさと弱点
しかし同時に、EBMはその限界も近年認識されるようになりました。
そもそもここで最も有用とされる、RCT前向き無作為割り付け比較試験(つまり新しい治療法を以前の治療法とくじ引き等で振り分けて結果を比べる)は緊急や重症の心臓外科患者さんでは倫理上からも時間の制約からも難しいです。
つまりEBMは軽症や余裕のある方々でのデータになりがちという弱点をもっています。
こうしたことは心臓手術数が多い海外の病院で臨床研究をした人にはおなじみのことですが、日本では手術例数が少ないため本格的臨床研究そのものが遅れて来た歴史からまだ十分理解されているとは言えないようです。
4. 心臓血管外科とEBM
たとえば全身の動脈硬化が高度なケースでオフポンプバイパス手術(図)は以前なら助けられなかった方々を多数救っていると思います。しかしそのような方々を無作為割り付けすることに困難があります。なのでオフポンプバイパス手術とオンポンプバイパス手術の成績差がなかなか明らかにならなかったという歴史がありEBMの限界が窺われます。
しかしこれまでオフポンプバイパスによってかつては救えなかった心臓病の方々がごく普通に救えるようになったという印象が強いため、オフポンプバイパスが有用と信じられるときには信念をもってこの手術を行っているのが経験豊かな心臓外科医の姿と思います。
5. データベースが医療を正しく評価してくれる
近年、日本全国のデータベース(略称NSD、JACVSD)が充実し、予測死亡率との対比(O/E比(オーイーひ)と呼びます)において自分達の心臓外科手術の成績を考えることができるようになりました。
また参考にヨーロッパやアメリカの心臓外科データベースも使えます。
こうした内容も今後さらに重要性と有用性を増すものと思います。
例えば上記のO/E比が1の心臓外科医はおよそ標準的な成績を出していると言えましょう。
しかしO/E比が2の心臓外科医は普通の2倍の死者を出していることになり、再検討・再教育が必要かも知れません。重症度はかなり勘案されているため、「自分の患者は緊急や重症だから死亡率が高い」などというごまかしが効かないのです。ランキング本のような手術数よりも重要な指標です。
逆にO/E比が0.5の心臓外科医は普通の半分の死亡率ですから、良い外科医である可能性が高いということになります。
こうした世界の常識がまだ日本では十分には浸透していないことも念頭においてものを考えています。元教授レベルの方々でもご存じないことが多々あります。ちなみに私たちは一貫してO/E比0.5を維持して来ました。今後さらに改善すべく努力しています。
同じ行動でもリスク状況によって結果は変わります。患者さんを助けるためにはこのリスクをよく考える必要があります
6. ネットができる貢献は
いろいろとあり得るとは思います。私が考えるのは、医師から少々歩み寄っても患者さんが医師にものを聞きづらいということが起こり得ます。そこで、第三者的情報としてのネット内容が役立つのです。
心臓外科の患者さんの立場や心境は微妙に揺れることが多いです。ある方が医師にも、看護師にも言えないことがお掃除のおばさんになら言えると言われたとき、これではいけないと痛感しました。
もちろんネット情報だけでは一方通行になったり、その内容が不足したり誤解を招いたりということもあり得ます。
皆さんにはこれらをもとにして、他も検討したり、できるだけ質問するなどして納得が行く方針を得られることをお勧めします。
<写真は米田の患者さんの会(於、京都)での一コマ。大いに語りましょう>
医学医療を論じるときに一般的な教科書的知識はもちろん重要です。
しかし実際の外科手術経験の中で培われた内容や、その検討結果、またその一次情報としての検討データや症例報告・画像なども重要かと思います。
その意味で本サイトでは心臓外科手術の確立した知識とともにポリシーや信念に近いところもある程度記載しています。
適宜医学書などを参照して頂ければ幸甚です。
なお心臓外科や手術のお問い合わせはこちらまでどうぞ。
7. 最後にお願い
良いサイトは両方向のコミュニケーションによって完成度を高めていくと思います。
このサイトをご覧の皆様にはぜひご意見やご質問をお願いしたく存じます。
時間の許す限りお答えいたします。
なお心臓病を専門とされない開業医の先生方や一般内科・外科等の先生方におかれましては、確定診断に至る前の「疑い」段階でも何か御心配があればご相談下さい。
結果的に心臓手術不要の軽症のケースではより早く安心が確保できますし、意外に重症でもう少しで危なかった、助かったというケースもあります。
適宜ハートチーム、循環器内科、コメディカルのご意見も戴くようにしています。
このように非専門医のご支援は専門医の責務と心得ております。何でも無礼講でおたずね下さい。
なおご紹介には逆紹介を原則としています。
米田正始 (こめだ まさし)
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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INDEX
■ 第9回アジア弁膜症シンポジウム(Muluシンポジウム 2018年11月7-10日 京都)のお知らせとご報告はこちら
■ 異動のお知らせです。
■ テレビ放映3回分がUpされました。メディアのページを。リンクもご参照ください
■ 通算アクセス数が300万を超えました(TypePad社データ)。感謝とともに今後の充実をお約束いたします(2014.11.19)
■ 名称が心臓血管外科情報WEBから心臓外科手術情報WEBに変わりました(2013.2.2)
■ かつて京都大学病院で米田正始の心臓血管手術を受けられた患者さんたちへご挨拶
■ 「All About」の拙筆「心臓・血管・血液の病気」シリーズもご参照下さい
■ メールマガジン(右段)および心臓外科医の日記ブログ(左段)もご覧ください
■ 論文リスト ~英語~ ~日本語~ (ご参考になれば幸いです)
ハイライト
■ 心臓外科手術体験記 お便り1
うれしいニュースを戴きました。がんばって下さってありがとう
■ 心臓外科手術体験記 お便り14
冠動脈バイパス手術と僧帽弁形成術から何年も経ち、なお絆が健在であることをうれしく思います
■ 心臓外科手術体験記 お便り118
東日本大震災と心臓手術を乗り越えられた患者さんからです。MICSの僧帽弁形成術はここでも活躍できたようです
■ 心臓外科手術体験記 お便り117
心尖部型肥大性心筋症への難手術を乗り切って見事に元気さを勝ち取られました
■ 心臓外科手術体験記 お便り116
複雑な三尖弁形成術それもMICSで長年の心臓病を克服されました。遠方からご苦労様でした。
■ 心臓外科手術体験記 お便り113
5回目の心臓手術と2つの内臓不全という大ハンデにもかかわらず、元気な生活を取り戻されました
■ 心臓外科手術体験記 お便り111
世にも珍しい心臓腫瘍でしたがMICSで目立たない傷跡で内外ともきれいに治りました
■ 心臓外科手術体験記 お便り110
心房中隔欠損症などがMICSできれいに治り、またお元気に社会復帰されました。この方のブログもご覧ください
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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