お便り113: 5回目の心臓手術と2つのハンディを乗り越えて

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弁膜症を長年お持ちの患者さんの場合、何十年という間には何度も心臓手術が必要になることがあります。

とくに感染性心内膜炎や組織が弱くて切れる場合などに、見られます。

私の病院へは3度目、4度目、5度目などの再手術を求めて患者さんがよく来られます。

地元の病院で危険、ダメと断られてこられるのです。

沖縄、九州や北海道、東京などからも来 184741739られます。できるだけご期待に沿えるよう、頑張っています。

つぎの患者さんは三重県から来られました。

それまで4回手術をうけて取り付けた人工弁がまた外れて逆流しているというのです。5回目の手術が必要となり、心臓のちからも肺のちからも正常の半分にまで低下し、極めて危険な状態でした。大学病院でもこれは無理と匙を投げられた状態でした。

高の原中央病院かんさいハートセンターの私の外来へ来られ、確かに危険性が高く、また薬などで当面は持ちそうなため経過を見ていました。

その間、心不全が次第に進み、苦しくなって、患者さんは何度もお手紙を下さいました。

もとの大学病院の先生方とも協力し、苦しさの原因が心臓にあるのか、肺にあるのかを含めて何度も検討し、やはり弁を治すしか生きる道はない、という結論になりました。

入念に準備を進め、MICSの方法を駆使して小さい切開でほとんど剥離が要らない形で弁の裂けたところをピンポイントで直しました。

患者さんは順調に回復され、元気に退院して行かれました。

是非とも生きたい、そのために何としても病気を克服する、5回目の手術でも頑張る、自分と自分の主治医を信じて頑張る、そうした覚悟と決意の賜物だったと思います。

まさに命を預けて戴いた、心臓外科医としてこれほど光栄なことはありません。そしてご期待に応えることができ、これほどうれしいことはありません。

また外来でお元気なお姿を拝見させてください!

以下はその患者さんが他の患者さんたちのお役に立てるようにと書いて下さったお便りです。

 

****** 患者さんからのお便り ******

米田先生へ IMG_0806b

病との戦い

私は69歳の男性です。

私の今までの病歴を紹介しますと、

子供の時、リュウマチ熱から心内膜炎を併発して、

31歳の時、1回目の僧帽弁開腹術を受け、その時血栓肝炎(ノンA・ノンB型)になり、(この時はまだC型ウイルスが見つかっていなかった)

その後、慢性化して40歳になった頃、ウイルスが活動し出して、大動脈閉鎖不全症とあわせてものすごいしんどい日が続きました。

当時は、C型肝炎は不治の病と言われていたので、大動脈閉鎖不全をとりあえず良くなりたい気持ちから2回目の心臓手術を受けました。

少し楽になったが、C型肝炎がますます悪くなり、仕事に耐え切れず44歳に大型スーパーを退職しました。

45歳の時、インターフェロンが保険適用になり、治療して快復しました。

それから10年間コンビニを経営して、その後56歳から子供の時からの夢であったラーメン店を経営しました。ラーメン店が軌道に乗りだした59歳の時に31歳の手術をした僧帽弁がまた狭くなり、人工弁を移植しました。(3回目の心臓手術)

ところが、術後10カ月頃、人工僧帽弁に黄色ブドウ球菌がついて6か月入院して治しました。しかし、かなり息苦しくなったが我慢してラーメン店を続けました。また、同時期、ワーファリンの飲む量を調整するために減らしていた時、脳梗塞になり救急車で病院に運ばれました。気付くのが早かったため少し障害は残りましたがまた仕事を続けました。

63歳頃から顔色が土色になり、浮腫みがひどくなり、64歳にギブアップして仕事を辞め、治療に専念しましたが、徐々に悪くなり、不整脈の治療のためペースメーカーを入れてもらったりしたが、59歳の時の人工弁の縫目からの逆流(人工弁感○○症の影響)がひどくなって、67歳の時4回目の手術を受けましたが、私はどうも体質がくっつきにくいためか、だんだん心不全が進行して色々病院にあたり、断られました。

そんな時、3年前にテレビで放映されていた心臓手術の様子を思い出し、名古屋のハートセンターの米田先生を尋ねましたが、1年前にかんさいハートセンターを高の原中央病院内に設置されたとのことで、半年位通院して5回目の手術を23日前に受けました。

おかげで、縫目の逆流を治すことができました。心臓の機能がしっかりして、腎機能も利尿剤を飲まなくても済むようになりました。

術前は心臓が普通の人の50%、肺の機能も50%でしたが、心臓機能はもっと良くなると思っています。肺の機能も時間はかかると思いますが、それにつれて良くなるよう呼吸を訓練したり、リハビリを積極的に行っています。

人生は一度限りです。良くなりたいという強い気持ちが大切です。

それには、なんとか良くしてやろうと事前検査の徹底、丁寧で心臓手術の豊富な医師を探して手助けをしてもらい、良くならないと損だという強い意志が必要です。

なんとかなりますので、最後まで頑張りましょう。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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