6) ③人工弁の感染性心内膜炎(PVE)―やばいです。しっかり治さねば

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大動脈基部膿瘍は感染性心内膜炎の中でも重症に入ります。徹底した除菌と確実な再建が必要だからです感染性心内膜炎 IEの中でも最も予後が悪いと言われる人工弁感染性心内膜炎(PVEと略称します)についても積極 的に治療を行っています。

 

これは抵抗力のない人工弁の感染では抗生物質では救命しきれないため、外科治療が必要なケースがほとんどだからです。

 

pve
人工弁感染性心内膜炎のときの心臓内部です。Vegetationsは疣贅(ゆうぜい)でばい菌の塊り、Emboliは塞栓(そくせん)でばい菌の塊りが体の他の場所に詰まること、Abscessは膿瘍(のうよう)で膿が心臓に貯まることです。Regurgitaionは人工弁の逆流です。

人工弁感染性心内膜炎(PVE)には大きく2つのタイプがあります。手術直後に発生するタイプと、手術後2か月以上も経ってから起こるタイプです。

 

直後発生タイプでは、黄色ブドウ球菌やコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が多く、グラム陰性桿菌やカビが続きます。

 

術後時間が経ってから起こるタイプでは、連鎖球菌とブドウ球菌が多く、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌や腸球菌が続きます。抗菌剤を使っていると細菌の同定が難しいことがよくあります。くすりを使っていないケースでは培養で菌が90%の確率で同定できます。

右図にこの人工弁感染性心内膜炎PVEの姿を示します。

 

診断について、症状は大切です。

代表的な症状は:

 

A306_0051.感染の症状として悪寒・発熱や全身倦怠など

2.塞栓の症状として脳、肺、腎臓、四肢などの動脈が詰まるときの症状

3.心臓の症状として心不全や不整脈など

4.免疫複合体の症状として粘膜や結膜の点状出血、爪床出血斑、オスラー結節など

が挙げられます。

 

検査では血液培養つまりばい菌を生やしてどのタイプの菌かを見つけることと、

A309_078b他の弁膜症とおなじく、心エコーがきわめて役に立ちます。心エコーのなかでも通常の経胸壁エコー(TTE)と経食エコー(TEE)は補い合う関係でいずれも大切です。

 

ただしこと人工弁感染性心内膜炎PVEについては、経食エコーが82-96%も検出できるのに、経胸壁エコーでは17-36%しかできません。さらに経食エコーはPVEにともなう膿瘍やろうこう(穴ができること)、あるいは人工弁周囲逆流を見つけるのに優れています。

 


これらのデータをもとにして、Duke診断基準(デューク診断基準)を参照して診断を固めます。

A309_093人工弁感染性心内膜炎PVEは内科治療で治すことは一段と難しく、手術自体もその術者とチームの経験量・力量が問われる難手術がしばしばあります。

通常の弁膜症手術のテクニックでは対処できないことがあります。

 

なので担当医にどれぐらい心臓再手術の執刀経験があるか聞くのが良いでしょう。またこうした弁膜症再手術の経験豊富な心臓外科医を探すのは有利です。

 

そもそも人工弁感染性心内膜炎PVEは心臓と周囲組織の癒着が強い「再手術」でもありますし、手術の多くは全身状態が悪い緊急または準緊急手術ですので、何重にも不利な状態からの出発となります。

 

感染した人工弁と感染組織をすべて取り外した上に、心臓や弁やその土台を再建する必要 があり、手術のあとも出血や感染や多臓器の保護が必要となるからです。

上図は大動脈基部人工弁感染・膿瘍に 対して弁輪から再建したものです。

 

こうした状況ではホモグラフトが有効ではないかという考えのもとに使われることがありますが、日本ではその供給は限定されており、たとえ入手できても緊急手術に間にあう保証はなく、必ずしもあてにできない弱さがあります。

 

そこで自己心膜やウマ心膜などをもちいて土台を再建し、その上に人工弁を植え込むようにしています。

これにより人工弁が直接感染組織に接触するのは避けられますし、自己心膜はホモグラフトをある意味上回る、生きたつまり多少でも抵抗力がある組織ですので理にかなっていると思います。

 

今後さらなる検討が求められ期待されます。

 

人工弁感染性心内膜炎PVEと言われてお困りの方はご連絡ください。

なお患者さんやご家族の方には、PVEと言われれば大きな合併症(菌体の塞栓による脳梗塞や動脈瘤など)が起こるまでに早目にご相談ください。重い病気ではありますが、がんばれば治せる病気とも言えますから。

 

参考: 治療ガイドラインはこちら

 

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