お便り17 エホバの証人の患者さん

Pocket

その方の宗教や哲学、人生観は大切に尊重されるべきと思いますエホバの証人という宗教を信仰する方々は宗教上の理由から輸血を拒まれます。

信仰はその人にとってはいのちと同じほど大切です。

私たちは信仰の自由を尊重するため、エホバの証人の信者さんの無輸血についても極力尊重・協力しています。

確かに大きな心臓手術あるいは出血しやすい状態とくに再手術(二度目の手術)のときはかなりの工夫が必要で、簡単ではありません。

患者さんやご家族と十分に話あい、納得できる方針でベストを尽くすようにしています。

 

ある60代のエホバの証人の患者さんが、昔、他の病院で冠動脈バイパス手術を受けられました。

年月が経って病気が進行し、狭心症が取れず、命の危険が迫る状態で、もとの病院での手術を断られ、ハートセンターへ来られました。

バイパス手術が唯一の救命手段でしたが、2度目の手術は出血がやや多くなり、輸血ができないときには危険性が高くなります。

そこはこれまで多数のエホバの証人の患者さんをお助けして来た経験を活かして工夫し、無事手術成功しお元気に退院されました。

 

以下はその患者さんからの感謝のお手紙です。なお個人情報は伏せさせて頂きました。

 

********************************

米田正始 先生

拝啓 朝晩は涼しくなって虫の音も澄みわたるこのごろですが、米田先生にはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。

今年の3月*日に、ハートセンターにて冠動脈バイパス手術をしていただきました**です。早いもので手術後もう半年が経過しました。手術後の経過は非常に順調で充実した毎日を元気に過ごしています。これも米田先生をはじめハートセンターの高度な医療技術と、わたくしたち患者に対するやさしい心のこもった医療のおかげです。

今こうして再び健康で楽しい生活を享受できますことはひとえに米田先生やスタッフの皆様のご尽力の賜物と心から感謝を申し上げます。

わたくしは若いころから心臓が悪く30才の時に1度目の冠動脈バイパス手術を受けています。そして今回が2度目の手術でした。このこと自体が大きなリスクとなっていましたが、その上にわたくしは信仰上の身上により輸血をすることができません。このような2つのリスクを抱えておりましたので、わたくしの手術を執刀してくださる先生には非常に大きな負担をおかけしたことと思います。

果たしてわたくしのようなハイリスクを抱えている患者を受け入れて下さる病院が日本のどこにあるのだろうと不安におののきながら妻とともにハートセンターを初めて受診したのは今年の2月のことでした。

ところが、わたくしと妻の不安はいっぺんにどこかへ吹き飛んでしまいました。

それは、診察してくださった米田先生の「たしかに難しい手術で、大きなリスクは伴いますが、万全の体制のもとで手術を行いましょう」と言ってくださったその言葉に安堵感と病気に立ち向かう勇気とを得ることができたからです。初診のその日に必要な検査も行ってくださり、心が軽やかになって家路につきました。

帰りの車の中では妻と「すばらしい先生に出会えて本当に良かったね」と語り合いながら帰ったことを昨日のことのように思い出します。

そして、手術に際しましては万全の体制をしいてくださり、いよいよ3月*日の手術日をむかえました。すばらしい先生方と医療スタッフのチームワークの努力のおかげをもちまして、わたくしのハイリスクな手術は成功しました。

今は、長年にわたる胸痛の苦しさから解放されて喜びに満ちた生活を送ることができています。

まるで二度目の新しい人生をいただいたような健やかな毎日を楽しんでおりますことをお伝えしますとともに、わたくしの心からの感謝を申し上げます。これからも米田先生や名古屋ハートセンターのご発展をお祈りするとともに、わたくしのような非常に難しいリスクを抱えている患者のために益々ご尽力していただきますようお願い申し上げます。本当にありがとうございました。

敬具

2009.9.18. *****

 

患者さんからのお便り・メールへもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。