お便り89: 先天性僧帽弁閉鎖不全症と心房中隔欠損症のエホバ信者さん

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僧帽弁閉鎖不全症なかでも先天性僧帽弁閉鎖不全症にはさまざまなタイプがあります。

他の心疾患を合併したり、病気ではなくても構造が通常とはちがうこともあります。

患者さんは40代女性で心房中隔欠損症(ASD)と先天性僧帽弁閉鎖不全症のため来院されました。


こどもの時から内蔵逆位つまりお腹の内A335_001蔵が左右反対に位置していると言われていました。

半年前から息切れや疲れなど心不全症状が強くなり、近くの総合病院では修正大血管転位症とまで言われて不安になり、米田正始の外来へ来られました。

幸いその病気はありませんでしたが、下大静脈(IVC)が欠損しており、手術にも工夫が必要な状態でした。

しかもエホバの証人の敬虔な信者さんで、絶対無輸血をご希望のため、血液を一滴も無駄にできない条件下での心臓手術でした。

いつものように先天性心疾患の専門家も含めたハートチームで検討し手術に臨みました。

手術は安全とお若い患者さんであることも考慮し、MICS法(ミックス)で小さい創で行いました。

いつもと違うばしょに脱血管を入れて人工心肺を回し、安全確保ののち心臓を止めて、中にはいりました。

心房中隔欠損症を一時的に広げて、そこから僧帽弁形成術を行いました。

心房中隔欠損症はSinus Venosusタイプというやや複雑なタイプでこれをパッチで修復しました。Sinus Venosusタイプでは上大静脈(SVC)のルート確保も大事ですが、これも問題なくクリアーしました。

手術は無輸血でゆうゆうと完了しました。

術後経過良好で、小さい不整脈はあったものの落ち着いたため術後8日目に元気に退院されました。

以下はその患者さんのご家族からの礼状です。

 

*********患者さんからのお便り**********

 

米田正始先生

拝啓


木村由紀さまメール新緑の鮮やかな緑が目に眩しく感じられる季節になっておりますが、米田先生のますますの御活躍を心よりお喜び申し上げます。

先月4月8日に米田先生に妻の手術していただきました、****と申します。
先月末に退院致しましたが、米田先生に直接感謝やお礼の言葉をお伝えできずにおりましたので、失礼ながらまずはメールをと思いお送りしております。

昨年末に妻の心臓の疾患が見つかりましたが、私たち夫婦にとってはまさに「寝耳に水」の状態で、一時は目の前が真っ暗になったことを思い出します。
 

妻が幼少期に検査を受けていたことは知っておりましたが、その後検診でひっかかったことや活動の制限なども無かったため、すっかり安心しておりました。
 

昨年の夏ごろから体調が悪くなっておりましたが、まさか心臓だとは思わず、しかも手術が必要なほどだとは夢にも考えませんでした。


ちょうどその時期、私たちはエホバの証人の聖書教育活動を増し加えるために、生活拠点などを変える予定で動き出しておりました。

 

ですので、今からという時に病気が見つかり、目標を見失ったようで、特に妻の落胆ぶりは本当に大変なものでした。

しかも無輸血での手術が必要になりますので、どんな病院で治療を受けることができるのか、という不安も同時に押し寄せておりました。

しかし米田先生のホームページを拝見し、メールをさし上げたところ、すぐに返信を頂いて診察の予定を整えていただきました。

そして診察で先生のお話をお聞きした時点で、すでに治ったかのような安心感を抱くことができました。

私たちの宗教信条をご理解していただき、「神様が応援してくださるように頑張ります」とおっしゃって頂いた時には、先生にお願いして本当に良かったと心から感じました。
そして手術も無事に成功に導いていただきました。

術後の先生からのご説明では、妻の心臓の血管の状態が非常にまれな配置になっていたようで、様々なご苦労をお掛けした中で素晴らしい手術を施していただいたことに重ねて感謝致します。

術後、一時期体調が安定せず、様々な面で皆様にご苦労を致しました。
北村先生、深谷先生、木村先生の治療や、看護師の方々の献身的で温かく優しい看護にも心より感謝しております。

なんとなくバタバタした状態での退院になってしまいましたので、きちんとお礼ができず本当に申し訳ございません。

妻は体調の回復に合わせて、改めて皆様への感謝をお伝えしたいと申しておりますので、甚だ失礼ではございますが今しばらくお待ちいただければ幸いでございます。

ただ今回不正脈が取れないまま退院になってしまいましたので、どのくらい動いていいものかまだ不安も残っております。
入院中は心電図で先生方や看護師の皆様に見守って頂いていたので安心だったのですが、今は目安になるものがありませんので、何となく不安感が取れずにおります。
また術後血圧が急激に下がったりして調子を崩した時期がありましたので、そのトラウマのようなものが少し残り、「またあんな風になったら」、という怖れも残っております。

不整脈に関しては、以前の米田先生の診察の際に、「時間があったらメイズ手術もできるかもしれない」とお聞きしておりました。
インフォームド・コンセントは、米田先生が緊急手術のため木村先生に行なっていただきましたが、その際にお聞きしたところ、「この程度の不正脈ならメイズ手術は必要ないと思います。」とおっしゃっていただきました。
退院前には木村先生からは、もし収まらない場合は「カテーテルアブレーション」という治療が今後必要になるかもしれないともお聞きしました。

入院中電気ショックも2度も行なって頂きましたが不整脈が収まりませんでしたので、今後自然と不整脈が収まる可能性はあるものなのでしょうか?
もしかしますと、今後メイズ手術を受ける必要はありますでしょうか?
また現時点で、どの程度動いてもいいのでしょうか?

妻も入院中は先生たちがいらっしゃるので何も聞かなくてもお任せしておけば大丈夫とばかり安心しきっていておりましたが、いざ退院してみますともっと先生方に教えていただく必要があったと反省しております。

1ヶ月後の検診が予定されておりますが、その時までよくわからずにいて、運動過多あるいは運動不足になってはいけないとも感じております。
このようなメールでご相談して本当に申し訳ありませんが、もし宜しければ教えていただければ本当に嬉しく思います。

せっかく米田先生の素晴らしい手術で健康な心臓にしていただきましたので、当初考えていた計画をまた再開できれば、とも願っております。

そのような目標を再び頭に思い浮かべることができるようにしてくださった米田先生に本当に感謝しております。

今後の米田先生の引き続きのご活躍を心よりお祈りしております。

敬具

平成25年5月5日

 

******************************

 

そう心配するような状態ではなかったのですが、患者さんがかなり神経質になっておられるようなので早速お返事をお書きしました。

すでにかなり落ち着いており、まもなく薬も切って行けるでしょうとお伝えしました。

それから次のお返事を頂きました。やはりコミュニケーションは大切ですね。

 

**********患者さんからのお便り続編***********

 

米田正始先生

早過ぎるご返信に驚くと共に、本当に恐縮しております。
先生のお言葉を頂いて、不安が全く無くなりました。

妻も心配が一気に吹き飛び、今朝から意欲的に動き始めております。

深夜3時ごろにご返信を頂いているようですが、先生を寝不足にさせてしまったのではないでしょうか。

入院中にしっかりお聞きしなかったこちらの不手際で、米田先生にお手数をおかけして本当に申し訳ございません。

これほどまでに患者を気遣ってくださる先生のような方に巡り合うことができて、私たち夫婦は本当に幸せ者です。

妻からの感謝は、また改めてお伝えさせていただきます。

本当にありがとうございました。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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事例:二尖弁大動脈弁狭窄症のエホバの証人患者さん

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二尖弁大動脈弁は年齢とともに壊れやすく、弁尖(弁のひらひらと開閉する部分)が硬く狭くなって大動脈弁狭窄症になったり、弁尖が落ち込んで逆流が発生し大動脈弁閉鎖不全症になることが少なくありません。

さらに逆流をそのままにしておくと次第に心臓の筋肉が変性し、拡張型心筋症になりかねません。

 

00058727_20091119_CR_1_1_1二尖弁の場合は上行大動脈や大動脈基部が構造的に弱く、拡張して瘤になることがあります。

これらを考えて短期的かつ長期的な計画のもとで、手術や治療を組み立てる必要があります。


患者さんは39歳男性、二尖弁による大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症(ASR)そして上行大動脈瘤のため米田正始の外来へ遠方から来られました。

00058727_20091119_US_1_12_12b長い間のASR(左図、弁が硬く分厚くなりあまり開きません)のためか、左室の直径(LVDd)73mmと高度に拡張し、駆出率も30%と低下していました。

心不全のため僧帽弁閉鎖不全症も中等度まで合併していました(下右図)。

つまり二次的 00058727_20091119_US_1_25_25bに拡張型心筋症にまで悪化していたわけです。

患者さんのお母様がエホバの証人の信者さんで、母親の気持ちに沿いたいという希望を出されましたので、極力無輸血という方向で手術と治療を進めました。

胸骨正中切開・心膜切開でアプローチしました。(術中写真工事中)

体外循環・大動脈遮断下に上行大動脈を横切開しました。

大動脈弁は左冠尖LCCと右冠尖RCCが一体化した二尖弁でした。肥厚硬化が顕著で、石灰化も中等度みられました。

現在でしたら自己心膜による大動脈弁再建を行うところですが、当時はまだ検討中であったため、この患者さんには人工弁を入れることにしました。

弁および石灰をすべて切除しました。

ここで機械弁(On-X弁)縫着しました。この弁は機械弁ですが、背丈を高くすることで血流速を上げ、血栓ができにくい構造になっており、将来ワーファリンが不要または減量できる可能性があります。

上行大動脈を2層に閉鎖し、大動脈遮断を解除しました。

体外循環からの離脱はカテコラミン(強心剤)なしで容易でした。

上行大動脈は50mmに達するほど拡張し、事実上の動脈瘤でした。

通常は上行大動脈置換術を行うのですが、上記のように患者さんのたっての希望で無輸血を確実に達成するためにラッピングを行うことにしました。ラッピングでしたら針穴出血もありませんし、ポンプ時間を短縮することで出血傾向も軽くなります。

上行大動脈を周囲組織から剥離し、ヘマシールド人工血管でラッピングし、軽く締め付ける形で径を35mm程度まで小さくし、人工血管を固定しました。上行大動脈のほぼ全域を覆うことができました。

経食エコーに良好な大動脈弁機能と心機能を確認しました。

入念な止血ののち、余裕をもって無輸血で心臓手術を完了しました。

術後経過は順調で、血行動態安定し出血も少なく、術当夜、抜管し、術翌朝一般病棟へ戻られました。

術後10日目に元気に退院されました。

すでに心臓は格段に小さくきれいな姿になっています。(下右図)

00058727_20100706_CR_1_1_1手術前は心機能の低下が著明でしたが、

術後1年で左室の直径(LVDd)49.5mm、駆出率42%まで回復しておられます。

僧帽弁閉鎖不全症もほぼ消えるほとに改善していました。

ラッピングした上行大動脈も直径45mmで安定しています。

これからお元気に親孝行に励んで頂ければと思います。

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お便り77 大動脈弁狭窄症のエホバ証人の患者さん

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エホバの証人の患者さんは信仰上の理由から輸血ができません。

一般の方々には不思議なことのように感じられるかも知れませんが、信者さんにとってはいのちがけの、大切なことです。

Ilm10_df01001-s私たちは信仰の自由を尊重し、輸血なしでも患者さんをお助けできるよう、全力をあげています。

以下の患者さんはこのエホバの証人の信者さんで、大動脈弁狭窄症という、手術なしでは突然死することさえある心臓病のため私の外来へ来られました。

精密検査の結果、心臓だけでなく、肺もかなり悪いことが判りました。

その原因のひとつが肥満やメタボであることもわかりました。

心臓プラス肺プラス「メタボ」プラス絶対無輸血というのはかなり厳しい条件です。

しかし患者さんが生きるためには何とか手術を乗り切って頂く必要があります。

そのためさまざまな努力や工夫をしました。

まず科学的ダイエットであるローカーボダイエットで積極的に脂肪を減らし、横隔膜が動きやすいようにし、あわせて呼吸運動を毎日励行いただき、メタボと肺の改善に努めました。

1か月以上の時間をかけて十分に態勢をととのえ、肺機能も改善したところで手術に臨みました。

肺に負担をかけぬよう生体弁で短時間に大動脈弁置換術を行いました。

徹底止血して輸血なしでも大丈夫な状態を維持したことはいうまでもありません。

患者さんもしっかり頑張って下さり、手術のあとはとくに問題なく順調に回復され、術後10日で元気に退院されました。

以下のお便りはそのエホバの証人の患者さんからのものです。

患者さんといっしょに苦労して得た大きな成果はまた格別なものがあると思いました。

 

*******患者さんからのお便り**********

米田正始 先生へ

 平成24年8月31日に大動脈弁狭窄症の手術をしていただきました****です。

昨日術後1ヶ月の検診を北村先生にしていただきました。

順調に回復していて改めて米田先生、北村先生、深谷先生、木村先生、看護士の皆さん、ハートセンターのスタッフの皆さんに感謝しています。

米田先生に昨日はお会いできないと思っていましたが、お会いする事もできうれしかったのですが、ゆっくりお礼が言えずに帰宅してしまいました。

もっと早く米田先生にメールを送りたかったのですが遅くなってしまって申し訳なく思っています。

 7月2日に他の病院で弁膜症だと診断された時、実母を同じ弁膜症により術後1ヶ月で人工呼吸も一度も外れず66歳で亡くしておりましたので、弁膜症に知識と経験のある先生の診察を受けなくてはと思いました。

また私の信仰上の理由で無輸血で手術してくださる先生を探さなければなりませんでした。

家族がネットで米田先生のことを知り、また無輸血で私たちの仲間を手術していただいている事もわかり米田先生にお願いするしかないという思いで、7月23日に先生の診断を受けました。

7月2日に他の病院で弁膜症と診断されたときから比べると、一段と急激に調子が悪くなり歩くのもやっとという感じになっていて、先生に診ていただくのが数日遅かったら、命を落としていたのではないかと思うほどでした。

先生に始めに診ていただいた日に無輸血で手術していただきたいとお願いすればよかったのですが、その日は米田先生のお話を伺っているだけで精一杯で話しをできずにきてしまったので、先生たちをびっくりさせてしまい、申し訳なかったと思っています。

私の実母も弁膜症で手術した際に、大量に輸血をしていましたので、無輸血で手術する事がどれだけ先生方の手を煩わせ、大変かと言うことも母を見ておりましたので、よくわかっているつもりです。その上私は肺が悪いということもわかり、貧血もあり、体重も落とさなければいけないこともありと、二重三重に、お手間を取らせてしまいました。

そのような中で手術していただき、止血に十分時間をさいていただき、手術を成功させていただいたこと、生涯忘れません。

 FFPに関しても米田先生が私の信仰の自由を最後まで守ってくださり先生の懐の深さにただただ感謝しております。

 入院中はローカーボ食にしていただき体重を約10キロ落とす事もできました。

家ではなかなか痩せることもできませんでしたが、体重を落とすこともでき、今後元気でいるためにも頑張って体重管理をしていこうと思っています。

 米田先生と一緒に頑張ってくださった北村先生、深谷先生、木村先生にも改めて御礼申し上げます。

北村先生には、忙しく大変な中でも笑顔で励ましていただきました。私のつまらない質問にも応答していただき、色々な不安を取り除いていただきありがたかったです。

米田先生の良き理解者でまじめな深谷先生。始めは先生の事が怖かったけど、今は先生の回診が懐かしいぐらいです。深谷先生に一言もお礼を言えず退院してしまったので、今度お会いしてお礼を言わせてくださいね。

とても細やかで洞察力のある木村先生。CCUでは家族に丁寧に状況を説明くださり感謝しています。患者は先生に癒されていると思います。もちろん私もその一人です。

 看護士さん達にも大変お世話になりました。

特に手術室の下島看護士さんには、私の話しを忙しい中よく聞いてくださり理解を示してくださり大変助かりました。

病棟の大橋看護士さん、私の事情に本当によくご配慮くださって助けていただきました。ありがとうございます。

草野看護士さんは病室に入っていらっしゃるだけでを和ませていただき支えていただきました。ステキな笑顔に救われました。

大谷看護士さんは本当にお若いのに高いプロ意識をもってお仕事されていて、感動しました。

CCUを出た時から数日間男性の看護士さん(お名前を忘れてしまいごめんなさい)にも大変お世話になりました。お仕事大変な中でもとても爽やかでやさしい看護士さんでした。ありがとうございました。

他にも、検査してくださった先生方、栄養士さん、清掃や食事の際にお世話になったスタッフの皆さん、多くの皆さんにお世話になり、心よりお礼申し上げます。

 最後になりましたが、毎日お忙しい日々をお過ごしの米田先生。どうぞお体を大切にしていただいていつまでもお元気でいてください。先生に助けていただきたい患者さんはまだまだたくさんいるのですから。

 これからもどうぞよろしくお願い致します。

 平成24年10月3日

***********

 

あれから2年が経ちました。

私も名古屋での5年間の生活に別れを告げ、郷里にかんさいハートセンターを立ち上げました。

(註:現在は大阪市の医誠会病院と大東市の仁泉会病院にて勤務しております)

全国から多数の患者さんが心臓手術をもとめてお越し下さり、にぎやかにやらせて頂いております。

上記の患者さんからまたお便りを頂きました。

また外来でお元気なお顔を拝見したく存じます。

********患者さんからのお便り******

米田先生へ


2012年8月に手術していただいた愛知県の○○です。

おかげさまで元気に過ごさせていただいております。

先生に普通以上のご迷惑をかけ、たいへんお世話になり心臓を治していただけた今、米田先生に手術してもらえて “本当によかった”と改めて感じる今日このごろです。

奈良に1年に1度は米田先生の心臓チェックを受けに行きたいと思っていますのに、なかなか実行出来ないことを残念に思っています。

でも、健康第一でお元気でいて下さい。

先生を必要としている人間はますます多くなっています。

その人たちも助けてあげてほしいです。

この健康に日々感謝しています。

ありがとうございます。


2014.8.29

 

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お便り55: 冠動静脈ろうのエホバの証人の患者さん

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冠動静脈ろうはときに見られる冠動脈の異常です。

冠動脈から冠静脈を経由して右房や肺動脈その他の比較的圧Ilm09_ad07002-sが低いところへ血液が漏れるため、大切な心筋へは十分に血液が届かず、狭心症が発生します。

胸が痛くなったり、からだを動かすと息切れがするなどですね。

この冠動静脈ろうへ冠動脈の狭窄(狭くなること)が合併すれば、その部位によっては血液の漏れがさらに増えて危険なこともあります。

またそうした「漏れる」状態が続くと、そこでの血流量が増えすぎて冠動脈がこぶのように膨らみ(冠動脈瘤と呼びます)それが破裂すれば即死するなどの問題も起こります。

次のお手紙は、このかん動静脈ろうの手術を受けられた患者さんからのものです。

エホバの証人という宗教の信者さんでしたので、輸血はできないため、さまざまな工夫をこらして手術・治療を行い、うまく行きました。

 

冠動静脈をまず高速エコーとドップラーで正確に同定し、これを入口、出口を含む数か所で閉鎖しました。

どこにも異常血流が残っていないことを確認しました。

止血を徹底的に行ったのはいうまでもありません。

 

輸血を拒否する患者さんを治療しない病院が多いなかで、信仰の自由を守りつつ、医療安全とくに心臓手術の安全を確保する努力を私たちは続けています。

皆様のご意見やご指導を頂けましたら幸いです。

 

***********患者さんからのお手紙*******

 

Ilm10_de02014-s米田 正始先生へ

この度は、先生の技術を活かして父の手術を行って下さったことに心より御礼申し上げます。

とりわけ私達エホバの証人の信条に多大なる理解を示し手術をして下さったことに深く感謝しております。

私どもの信条ゆえに多くのお願いを致しましたが、先生が寛大に、辛抱強く聞き入れて下さり、大変嬉しく又心強く思いました。

先生のご理解と素晴らしい技術がなければ元気に回復した父の姿はなかったと思います。

これからもご多忙な毎日を送られると思いますが、お身体には十分お気をつけ下さい。
 

先生の益々のご活躍を心より願っております。

引き続きお世話になりますが、何とぞよろしくお願いいたします。

心からの感謝とともに  *****(実娘)

 

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お便り44: 大動脈二尖弁と上行大動脈の手術を受けた患者さん

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先天性心疾患は生まれた時からの心臓病です。

そのため身体の負担はもとより、

こころの負担が患者さんご本人だけでなくご両親たちにも重くかかってしまいます。

 

Hana_16 ご本人にとっては、ある日心臓が悪いと言われたとき、

なぜ何も悪いことをしていないぼくがこんな目に合わなければならないの?と思うでしょうし、

ご両親にとっては、私たちはこんな病気を創ってしまった、こどもに申し訳ない、どうしよう、

という苦悩に襲われるのです。

 

私たちができること、それは

できるだけ安全性を高めて

できるだけ良い手術をして心臓病を治すこと、

そしてなるべく心の負担を軽くするお手伝いをすることです。

以下のお手紙は大動脈二尖弁による大動脈弁狭窄閉鎖不全症のため

遠方から名古屋ハートセンターまで来て心臓手術を受け、

元気になって下さった患者さんとそのお母様からのお便りです。

ドットハート001154m初対面の時から、

正直に何でも打ち明けて下さった患者さんの男らしい姿勢に私は勇気づけられ、

力が入ったのを覚えています。

こころが通じていると実感したわけです。

またそれまでの苦しい経過の中で

命をかけてでも無輸血で治療を受けてお母さんを喜ばせてあげようという気持ちを戴き、

絶対無輸血という決意で手術をさせて頂きました。

大動脈二尖弁の患者さんは上行大動脈が弱く、

この患者さんの場合もすでに瘤になり始めていたため

併せて治すことができました。

彼にとってできるだけのことをしたく思ったのです。

以下はその患者さんとお母様からのお便りです。

**********患者さんからのお便り***********

私は、生後すぐに心臓病らしいと告知されたそうです。

お便り44実物 両親は私の成長するにしたがい、心臓病で有名な病院へ、つれて行き診察してもらいました。

ところが、現在とは違い当時、病名も判らず両親は、とても心配したそうです

その後、「大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症」と診断され医師から「35歳くらいで、階段の昇り降りも負担になる。人工弁を入れる手術が必要。」と聞かされましたが、ちょうどその頃、私は中学生で「そのうち心臓は止まり死ぬ。」と考え、つよくない体を、飲酒、喫煙や人に言えないような事を行ない、非行を繰り返す毎日でした。

そして、自業自得とはいえ、この時期から動悸、息切れ不整脈の症状が頻繁に、あらわれ、とうとう2009年5月に、重度の心不全、呼吸不全で14日間、生死をさまよう事となったのです。

救命医療で担当して下さった医師の治療のおかげで、なんとか一命は救われましたが、人工弁を入れる手術をしたわけではなく、真剣に手術について考える必要に迫られるのです。

まず、かかりつけの医師に「あと3年くらいしか心臓がもたない事、はやく手術すれば心機能の回復も見込まれる。」と説諭されましたので、地域の大学病院へ行きました。

それから心臓血管外科の医師から、初めて具体的に手術について説明をうけたのですが、あらたに、「上行大動脈瘤」がある事も聞かされました。

問題はそれだけでは、ありません、この手術には、絶対に輸血が必要との事でした。

私は、まだちがうのですが、母親はエホバの証人です。これまで私は社会や両親、とりわけ医療関係者、また神様にたいしても、ふざけた態度ですべてにそむいて来たので、ひとつだけでも、従いたいので輸血はしないと決めていたからです。

なんとか無輸血で、手術が出来ないものかと、困り果てたころに、WEBサイトを介し米田正始医師に、たどり着いたのです。

こんな私を米田先生は、なんの偏見も無く「手術は無輸血でします。これを機会に生まれ変わればいい。」と、やさしくおっしゃってくれましたので、私は安心し、すべてを頼る事にしたのです。

そのような訳で7日間の準備入院、そして8日目、手術が無事終わり数時間後には、歩くことも出来ました。そして10日後に退院して現在は、走る事も出来るのです。

最近、友人に手術痕を見せた時に「本当に心臓の手術したのか?」と言われ、みても分からないほど、手術あとも、とってもきれいです。

これまでは「ガタガタ」うるさく、気だるく、おもかった心臓が、術後は、心臓そのもの、存在すら感じられない不思議な、感覚、すごくかるい感じを私は、うまく文字や言葉では表現できません。

米田先生、治療していただいた事、本当にありがとうございました。

2011/1/17

**********お母さんからのお便り**********

お便り44実物2 2009年12月に、39才になったばかりの長男は、手術室に入っていました。

時間が止まってしまった様な長く感じられる日でした。

米田先生から手術がうまくいったと告げられた私は、まだ目ざめていない子に顔を見た時、安堵感と、よろこびで胸がいっぱいになり、「よかったね。手術はうまくいったのよ。もう大丈夫だからね。」と声をかけていました。

私が、どれほど、うれしくて、心から先生が他とチームワークをくんで、一丸となって長男のために全力をあげて、手術にとりくんでくださった若い先生方と、スタッフの方に、心を込めてありがとうございましたと伝えたくて。この胸中をわかっていただけるでしょうか。

本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

1970年12月に生まれた長男は、生後一か月検診で、医師から信じられない言葉を聞かされました。

今でも、昨日のように思い出します。「赤ちゃんは、心臓の雑音がひどいので検査をするように。」

私の耳に入ったこの言葉は、ショックで、どうしていいのかわからなくなってしまいました。私も、若いママになれたよろこびで、足取りも軽く病院へ行ったのに、帰り道は、とても不安な思いを抱く悲しい気持ちで帰宅し、誰にも言えずに、一人ぼっちで育児に専念することになりました。

初孫を、とてもよろこんでいた四人の若い祖父母には、心配をかけたくないので、言えなかったのです。

外見からは、チアノーゼもなく、よく食べ、よく眠ってくれて、泣いてぐずることもほとんどなく、楽に育てられたのですが、悲しい思いをしたのは、予防接種の度に、心雑音と告げるだけで、すぐにパスされて、冷たくされた思いでした。私の不安は、この先どうなるのか、つのるばかりでした。

心臓病に詳しいと聞くと、どこへでも行って診てもらいましたが、東京の**大学の先生には、「赤ちゃんの時は、わかりにくいのですよ。」と言われるばかりでした。

でも本人は、親の心配も知らずに、丸々と太って、病院にかかることもなく、風邪などの熱には要注意と言われていたのに、四十度近い熱でも、とても元気で、すぐに治るし、心臓が悪いなんて信じられないくらいだったのです。

小学校に入学する前に、6才になったら、入院して、カテーテル検査をするようにと予約をして、受けましたが、その時は、心室や心房の壁に穴もなくて、原因はわからなかったのです。

そして、中学生になった時、学校側の要望により、***病院で受診しました。当時は、日本一と知られた病院でした。そこで、やっと病名がわかりました。大動脈の弁が狭いそうでした。

でも本人は至って、普通の子と変わらず、元気そうでしたが、病名を告げる事によって、学校側は責任上の理由で、ドクターストップがかかりました。

大好きなスポーツも制限されてしまって、自分の思うようにならなくなったので、ずい分、ヤケになりました。

それまで、明るくて活発な性格だったのに、心がすさんでゆき、悪い傾向のまま走り出してゆくようになり、悪い仲間と連れ立つようになり、愛情を示そうと努力する家族に背を向けてしまって、私の手から離れようとばかりして、心痛の元となりました。今でもあの頃を思い出すと、目に涙があふれてきます。

不安と悲しみ、親であるがゆえの惨めさ、恥辱の伴う苦しい時期だったのです

成長に伴い、身体が大きくなると、心臓も負担がかかってくるようになり、悪い生活習慣のため、発作も度々で救急のお世話にもなるようになり、もう年令は、38才になっていました。

病院へ行くと医師からは、早く手術をした方が良いと何度も告げられましたが、私自身が様々な思いがあって、決心がつかないのでしたが、ある時かかりつけの先生から「お母さん、そろそろ手術を考える時ですよ、このままでは死んでしまいますよ。」と告げられて、病院を探すことになりました。

大学病院では無輸血の手術は無理ですと断られて、困っていたところに、米田先生との出会いがあったのです。

先生は、とても優しく、ひろい心で、相談にのってくださり、先生の最高レベルの医術を駆使して、さまざまな工夫をこらし、出血も最小限にと全力を尽くして取りくんでくださったおかげで、もう限界だった心臓を治してくださった事、もう一度生きてゆく機会を与えられたので、大変な思いをして、これまで生きてくることができたのだからこれからは、もっと、もっと、自分の体を大切にして、命を尊重して生きて欲しいと心から願っています。

米田先生、先生の優しさと、勇気と、すばらしい医術に感謝を込めて、ペンを止めます。

本当にありがとうございました。

***の母**より。

 

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お便り35 エホバ証人の大動脈弁狭窄症の患者さん

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Ilm10_de02005-s 大動脈弁狭窄症(弁が狭くなり心臓に無理がかかります)は重症になれば突然死の恐れがでる病気ですが、

いったん手術つまり大動脈弁置換術を乗り切れば予後の良い病気でもあります。

近年は心臓外科の技術進歩やノウハウの蓄積で経験豊かなチームなら手術死亡率は1%前後まで下がって来ています。

 

しかしエホバの証人の患者さんの場合は輸血を拒否されますので、手術死亡率が跳ね上がります。

だからと言って輸血拒否は宗教上の信念にもとづくものであるため、可能な限り尊重すべきものと私たちは考えています。

 

以下は最近大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁置換術を受けられたエホバの患者さんからのお便りです。

 

当科へ初めて来られたときはかなりの貧血があり、このままでは無輸血手術できない可能性があるため、しばし時間をかけてさまざまな対策を立てて貧血を治しました。

その上で大動脈弁狭窄症への手術を行い、ゆうゆうと乗り切って元気に退院されました。

以下はその患者さんからのお便りです。

 

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米田正始先生
お元気でいらっしゃいますか? お便り35実物

きっと精力的に、かつ暖かくスケジュールをこなしていらっしゃる事とおもいます。

 
お便りするのが遅くなり本当に申し訳ありません。
受診、入院、手術と9月6日から始まって11月5日まで名古屋ハートセンターでは本当にお世話になりました。

米田先生はまさかと思ってお送りした私のメールにも、すぐにお返事を下さり大きな手術にも心を整えてくださいました。

 

今までの自分の介護経験のなかで患者側は「病気と闘うという事は医療スタッフとの闘いでもある」という実感を私は少なからず持っていましたが、 

米田先生にお会いして、その重苦しさは一変し自分自身とても暖かなものを感じ安堵感を覚えました。

しっかりしたご説明、先生の自信、熱意にふれ本当に救われた思いでした。

 

貧血症でありながら無輸血でお願いしたいという私の希望も最大限尊重して下さり本当に嬉しかったです。

入院中は傷の痛みを除けば本当に楽しかったです。

北村先生、深谷先生、小山先生もとても細やかに気を使って下さって明るい気持ちにさせて下さいました。 

体の患部だけでなく人として接して下さってる様子に多くの方が元気を頂いてるようでした。

 

看護師の方達や他のスタッフの方々も良い病院にしようという気持ちが伝わってきました。
本当に有難うございました。
退院してからは2日程不整脈が出ましたが、近くの医院で薬を貰い今はすっかり落ち着いています。

先生がこの点でも患者が困らないように配慮してくださっていた事、本当に有難うございました。
新しくなった心臓を本当に大切に扱って(?)良い人生をこれから歩んで生きたいなと思っております。

先生のwebヘ゜ーシ゛勝手に私の応援歌のように思いいつも楽しみにしています。

米田先生、どうかいつまでもお元気でいてくださいね。次は12月3日が受診日です。
心からの感謝を込めて。

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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お便り28 (エホバの証人の患者さん)冠動脈バイパス手術でマラソン復帰へ

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Sexmc009-s 信仰はそのひとにとっては命です。

これは私が天理よろづ相談所病院のレジデント(研修医)のころ、

当時院長だった柏原貞夫先生から教わった言葉です。

さらに当時の指導者であった今中孝信先生らから

病気を本当に治すためにはその病気や臓器だけでなく

その患者さんの全体、ひととなり、

さらにそのご家族や社会まで考えることを教えられ、

できるところから実践して来ました。

 

この考えは国内だけでなくその後海外での心臓外科臨床修練の際にも多くの患者さんのお役に立ちました。

 

 

お便り17

にもありますように、エホバの証人の信者さんは、宗教上の理由から輸血を受けられません。

治療するものとしてはこれは大変つらい、困ったこともあります。

輸血さえできればこの患者さんはすぐ元気になれるのに!という状況にはしばしば遭遇します。

しかし技術やくふうでできるだけ患者さんの夢を叶えることができるようにと念じて日々努力して来ました。

 

 

Wor1009-s 下記はお仕事のためシンガポール在住のエホバの証人の患者さんからのお便りです。

シンガポールには畏友CN Lee先生やHS Saw先生はじめ立派な心臓外科医がおられるのですが、

十分な下調べや勉強ののち日本のハートセンターに私を信じて来院して下さったことを光栄に思います。

 

手術は両側内胸動脈と1本の静脈グラフトを用いた4本バイパスで順調に完了しました。

冠動脈バイパス手術のあとはカテーテルによるステントと比べて強い薬も不要で、

スポーツなどにも向いており(お便り22 をご参照ください)、

患者さんの長生きと生活の質の向上の両方に貢献します。

 

重症の狭心症、冠動脈狭窄でしたが、

オフポンプ冠動脈バイパス術にて安全に、かつ問題なく元気に回復され、

シンガポールに戻られました。その患者さんからのお手紙です。

なおその1年半後、天皇陛下もオフポンプ冠動脈バイパス手術を受けられました。それへの感想を2つ目のメールとして戴きました。

それも記載させていただきます。

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米田正始様、スタッフの皆様、

 

この度は、米田先生を始め、深谷先生、北村先生、小山先生また担当看護師の皆様、本当にありがとうございました。

 

私は、8月3日、妻と共に無事シンガポールに戻ることができました。

冠動脈バイパス術という簡単ではない手術を、私の信仰上の理由から、無輸血という方法で実施していただくことを快く引き受け、無事成功させてくださったことに、言い尽くせない感謝の気持ちでいっぱいです。

思い返せば、マラソンを完走するため日々トレーニングに励み、健康だと思っていた体に、突然、心臓の血管が詰まっていると知らされたときは愕然としてしまいました。

その後、精密検査を受ける中で、バイパス手術が必要と知らされたときには、言いようもない不安に襲われたことを、今でも鮮明に思い出します。

 

私はエホバの証人で、聖書の教えによって体外からの血液を受け入れないことを信条としており、無輸血手術という条件の下で施術していただくことができる医療機関を探すことも挑戦となりました。

シンガポールの医療機関では、この条件に同意していただくことが難しい状況でしたので、知人の紹介なども受けつつ、インターネットで検索していたときに、偶然、米田先生のHPにたどり着き、私たちの信仰に対する先生のご理解に感銘を受け、早速、失礼ながらE-Mailでコンタクトさせていただきました。

さぞかし多忙を極めておられる先生だろうと思い、返事がすぐに返ってくることは期待せずメールを出したのですが、ものの1時間とかからずに返信メールが届き、私たちのような遠距離の患者に対する対応にも感激し、即座にこの先生にお願いしようと決意しました。

その後何度かのメールでのやり取りの後、実際に先生にお会いして、さらに信頼が深まり、安心してお願いすることができました。また、ご担当いただいた深谷先生、北村先生、小山先生からの回診時の励ましや、看護師さんたちの親身になったお世話により、”医は仁術”ということを実感しました。

現在、私は仕事に復帰し、徐々に運動量を増やしてマラソンに再挑戦する準備もしたいと思っております。

最後になりましたが、ハートセンターが私たちのような信条の患者にも開かれた医療機関として、今後もますます発展されますように祈念しております。

皆様への敬愛と感謝をこめて、

2010年8月8日


***********天皇陛下が冠動脈バイパス手術を受けられることになってメールを下さいました**********

 

米田正始様、

米田先生、いかがお過ごしでしょうか。
大変ご無沙汰いたしております。

先日、1月23日にシンガポールから一時帰国し、ハートセンターで、定期健診を受けました。治療していただいた冠動脈と心臓、血液については問題ないとの診断をいただき、安心しました。

先生にお会いするはずだったのですが、緊急手術のようだったので、お会いできずその点は残念でしたが、代わりに深谷先生とお会いすることができました。

先生に是非お見せしたかったものがあり、持参したのですが、深谷先生に見せました。フルマラソンを完走した証しのTシャツです。

ところで、今日ニュースを見ていますと、天皇陛下も冠動脈バイパス手術をされるとかで、判断の理由となったのは、ご公務を果たし、テニスなどの楽しみも続けられるように、今後の生活の質を維持するためとのことでした。

私も先生から生活の質(仕事や運動量)を維持するためにはバイパス手術が最善というご説明をいただき、フルマラソンを完走できるまでになったことを、本当に感謝しております。

これからもわたしたちのような疾患を抱えたものが一人でも多く助かり、普通の生活に復帰できるように、先生方の益々のご活躍を祈っております。

 

平成24年2月12日

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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お便り17 エホバの証人の患者さん

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その方の宗教や哲学、人生観は大切に尊重されるべきと思いますエホバの証人という宗教を信仰する方々は宗教上の理由から輸血を拒まれます。

信仰はその人にとってはいのちと同じほど大切です。

私たちは信仰の自由を尊重するため、エホバの証人の信者さんの無輸血についても極力尊重・協力しています。

確かに大きな心臓手術あるいは出血しやすい状態とくに再手術(二度目の手術)のときはかなりの工夫が必要で、簡単ではありません。

患者さんやご家族と十分に話あい、納得できる方針でベストを尽くすようにしています。

 

ある60代のエホバの証人の患者さんが、昔、他の病院で冠動脈バイパス手術を受けられました。

年月が経って病気が進行し、狭心症が取れず、命の危険が迫る状態で、もとの病院での手術を断られ、ハートセンターへ来られました。

バイパス手術が唯一の救命手段でしたが、2度目の手術は出血がやや多くなり、輸血ができないときには危険性が高くなります。

そこはこれまで多数のエホバの証人の患者さんをお助けして来た経験を活かして工夫し、無事手術成功しお元気に退院されました。

 

以下はその患者さんからの感謝のお手紙です。なお個人情報は伏せさせて頂きました。

 

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米田正始 先生

拝啓 朝晩は涼しくなって虫の音も澄みわたるこのごろですが、米田先生にはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。

今年の3月*日に、ハートセンターにて冠動脈バイパス手術をしていただきました**です。早いもので手術後もう半年が経過しました。手術後の経過は非常に順調で充実した毎日を元気に過ごしています。これも米田先生をはじめハートセンターの高度な医療技術と、わたくしたち患者に対するやさしい心のこもった医療のおかげです。

今こうして再び健康で楽しい生活を享受できますことはひとえに米田先生やスタッフの皆様のご尽力の賜物と心から感謝を申し上げます。

わたくしは若いころから心臓が悪く30才の時に1度目の冠動脈バイパス手術を受けています。そして今回が2度目の手術でした。このこと自体が大きなリスクとなっていましたが、その上にわたくしは信仰上の身上により輸血をすることができません。このような2つのリスクを抱えておりましたので、わたくしの手術を執刀してくださる先生には非常に大きな負担をおかけしたことと思います。

果たしてわたくしのようなハイリスクを抱えている患者を受け入れて下さる病院が日本のどこにあるのだろうと不安におののきながら妻とともにハートセンターを初めて受診したのは今年の2月のことでした。

ところが、わたくしと妻の不安はいっぺんにどこかへ吹き飛んでしまいました。

それは、診察してくださった米田先生の「たしかに難しい手術で、大きなリスクは伴いますが、万全の体制のもとで手術を行いましょう」と言ってくださったその言葉に安堵感と病気に立ち向かう勇気とを得ることができたからです。初診のその日に必要な検査も行ってくださり、心が軽やかになって家路につきました。

帰りの車の中では妻と「すばらしい先生に出会えて本当に良かったね」と語り合いながら帰ったことを昨日のことのように思い出します。

そして、手術に際しましては万全の体制をしいてくださり、いよいよ3月*日の手術日をむかえました。すばらしい先生方と医療スタッフのチームワークの努力のおかげをもちまして、わたくしのハイリスクな手術は成功しました。

今は、長年にわたる胸痛の苦しさから解放されて喜びに満ちた生活を送ることができています。

まるで二度目の新しい人生をいただいたような健やかな毎日を楽しんでおりますことをお伝えしますとともに、わたくしの心からの感謝を申し上げます。これからも米田先生や名古屋ハートセンターのご発展をお祈りするとともに、わたくしのような非常に難しいリスクを抱えている患者のために益々ご尽力していただきますようお願い申し上げます。本当にありがとうございました。

敬具

2009.9.18. *****

 

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心臓病患者さんで「エホバの証人」の方

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信仰はその人にとってはいのちです。

私は研修医時代にある宗教の関連の病院でそう教えその方の宗教は尊重されねばなりませんられました。

医学が病気のかなりの部分を治せても、患者さんの悩みのすべてまでは解決できない以上、信仰や宗教あるいは哲学などはひととしての患者さんを助けるために重要です。

 

エホバの証人と言われる宗教を信仰する方々は宗教上の理由から輸血を拒否されます。

SANYO DIGITAL CAMERA心臓血管外科では人工心肺(写真左)を用いることが多く、

血液が一時的に薄くなりまた固まりにくくなるため、輸血が必要な場合があります。

それは大きな手術になればなるほど必要になります。

 

エホバの証人の患者さんの場合、時には輸血さえできれば手術は成功、しかし輸血しなければ手術を乗り切れない、つまり次第に状態が悪化して死亡するということが起こり得ます。

こうしたケースでは患者さんを救命するために医療を行うものとして、大変つらいものがあります。

 

輸血は何百万人何千万人もの患者さんを助けて来ましたが、わけあってこれが許されない宗教もありますしかし私たちはエホバの証人の信者さんが自らの信仰と信念にもとづいて、輸血を拒否される場合、それを尊重するようにしています。

さまざまな工夫をこらして、出血を減らし、無輸血で乗り切れるように全力をあげています。

しかし大きな手術ではエホバの証人の患者さんの生命リスクは一般の輸血ができる心臓外科患者さんの数倍かそれ以上にもなることがあります。

大きな手術の場合は大変なリスクになることさえあります。

 

そこで上記の工夫や努力だけでなく、患者さんやご家族と十分相談し、納得できるラインを煮詰めてから手術を行うようにしています。

 

心臓手術事例:

冠動脈バイパス術を昔、他病院で受けられたエホバ証人の患者さん(60代男大きな手術を無輸血で行うためにさまざまな工夫を積み重ねます性)が、そのバイパスがまもなく全部閉塞し命の危険があると、再手術を希望してハートセンターへ来院されました。

昔のバイパスは1本だけ残っていて、それが閉塞しつつあるという所見で、確かに再手術によってのみ救命できる状態でした。

 

その病院にも立派な心臓外科があるのですが、手術は「不可能」ということで断られたそうです。

しかも以前の心筋梗塞のため心機能が落ちている。

再手術では出血がある程度は増えるのに、もともと貧血気味で、わずかな出血でも命取りの懸念がある。

しかし無輸血で、生きるチャンスを下さいと熱心に依頼され、手術をお引受けしました。

 

術後の冠動脈CT検査で2本の新バイパスがきれいに写っています こうした状況で、工夫して、前もって薬の使用も調整し、

前回の手術とアプローチを変え、出血を極力抑え、手術内容もコンパクトに抑えて、

再手術(オフポンプバイパス手術)は成功し(写真)、

胸痛はすっかり消え、運動もできるほどになられ、無輸血でお元気に退院されました。

退院の時には「第二の人生をありがとうございました」と言って下さいました。

 

お便り17をご参照ください。

患者さんとご家族の皆さんが、エホバの証人の信者さんの無輸血手術は高いリスクが伴うことを十分に理解し、協力して下さったおかげです。

こうしたぎりぎりの状況では密なコミュニケーションに支えられた、お互いの理解やチームワーク、協力体制が大切とあらためて実感しました。


◆患者さんの想い出: 絶体絶命の状態から心臓手術で元気になられたAさんのお話し

僧帽弁形成術のあとの傷跡が目立たないのが特長のポートアクセスMICSですが、エホバの信者さんの場合、絶対無輸血の心臓手術に貢献するのです。

というのは通常の胸骨正中切開(胸の真ん中を普通は25cmも切ります)では骨の切口からじわじわと出血しますが、MICSではそもそも骨を切らないためこうした出血の心配がないのです。

ということでエホバの信者さんにもこのMICSでの手術たとえば僧帽弁形成術はいっそうお役に立っています。

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