お便り55: 冠動静脈ろうのエホバの証人の患者さん

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冠動静脈ろうはときに見られる冠動脈の異常です。

冠動脈から冠静脈を経由して右房や肺動脈その他の比較的圧Ilm09_ad07002-sが低いところへ血液が漏れるため、大切な心筋へは十分に血液が届かず、狭心症が発生します。

胸が痛くなったり、からだを動かすと息切れがするなどですね。

この冠動静脈ろうへ冠動脈の狭窄(狭くなること)が合併すれば、その部位によっては血液の漏れがさらに増えて危険なこともあります。

またそうした「漏れる」状態が続くと、そこでの血流量が増えすぎて冠動脈がこぶのように膨らみ(冠動脈瘤と呼びます)それが破裂すれば即死するなどの問題も起こります。

次のお手紙は、このかん動静脈ろうの手術を受けられた患者さんからのものです。

エホバの証人という宗教の信者さんでしたので、輸血はできないため、さまざまな工夫をこらして手術・治療を行い、うまく行きました。

 

冠動静脈をまず高速エコーとドップラーで正確に同定し、これを入口、出口を含む数か所で閉鎖しました。

どこにも異常血流が残っていないことを確認しました。

止血を徹底的に行ったのはいうまでもありません。

 

輸血を拒否する患者さんを治療しない病院が多いなかで、信仰の自由を守りつつ、医療安全とくに心臓手術の安全を確保する努力を私たちは続けています。

皆様のご意見やご指導を頂けましたら幸いです。

 

***********患者さんからのお手紙*******

 

Ilm10_de02014-s米田 正始先生へ

この度は、先生の技術を活かして父の手術を行って下さったことに心より御礼申し上げます。

とりわけ私達エホバの証人の信条に多大なる理解を示し手術をして下さったことに深く感謝しております。

私どもの信条ゆえに多くのお願いを致しましたが、先生が寛大に、辛抱強く聞き入れて下さり、大変嬉しく又心強く思いました。

先生のご理解と素晴らしい技術がなければ元気に回復した父の姿はなかったと思います。

これからもご多忙な毎日を送られると思いますが、お身体には十分お気をつけ下さい。
 

先生の益々のご活躍を心より願っております。

引き続きお世話になりますが、何とぞよろしくお願いいたします。

心からの感謝とともに  *****(実娘)

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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