大動脈弁輪拡大術(大動脈基部拡大術)とは

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■どんな時に必要?

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大動脈弁狭窄症などの病気で大動脈弁置換術(略称AVR)を行うときに弁の付け根部分である弁輪が小さくて人工弁が入らないことがあります。

いわゆる狭小弁輪と言われる状態です。

十分なサイズの人工弁が入らないと、大動脈弁狭窄症がしっかりと治らないことになり、心不全が残ることもありますし、

まして最小サイズの弁が入らないとそのままでは患者さんは死んでしまいます。

そこでこの狭い弁輪を拡張し、十分なサイズの人工弁を入れる技術が大動脈弁輪拡張術またはルート拡張術なのです。

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■一番簡単でよく使われるのがニック法(Nick法)です

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図 ニックス法

原法では左冠尖―無冠尖交連部に近いところを切り込み弁輪を拡張します

いくつかの変法がありますが、

私たちはDavid先生の方法で交連部そのものを切開拡張します

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この方法では左房の天井部分は開けずにすむため比較的簡単な操作で手術が完了します。

切り込んだ部分を心膜などのパッチで補てんするだけです。

ただしこのパッチ縫合部から少しでも出血すると、あとで止血がやややりづらいため、完璧な縫合が必須です。

入る人工弁は1サイズ大きなものが入るため、弁輪を少し拡大するだけで十分な場合はこのニック法が選択肢となります

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■次に使われるのはマノージャン法(Manougian法)です

. 図 マノージャン法

これは上記と同様の部位をさらに僧帽弁前尖まで切り込むもので、必然的に左房の天井も開くことになります。

そのため、パッチも複数必要となり、僧帽弁前尖から大動脈基部さらに上行大動脈までを1枚のパッチで、左房天井を別のパッチで再検することになります

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あとで止血はかなり難しいため絶対に出血しない縫合を行う必要があります

人工弁は2サイズ大きなものが入り、かなり効果的です

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■極端な狭小弁輪の場合は今野法(Konno法)をもちいます

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これは心室中隔と右室自由壁までの筋肉部分を切開して複数パッチで再建します。

やや侵襲が大きいため、そして通常は上記のニックかマノージャン法で十分なため、使う頻度は高くありませんが、いざというときの有力な方法です

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■ これらの方法が1クラス上の余裕を

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Tissue valve近年の人工弁生体弁、機械弁とも高性能になり、つまり同じ外径での内径が大きく、かなり小さい弁でも良い機能をもつようになりました。

そこで昔ほど大動脈弁輪拡大術は使わなくなりましたが、それでもときにこうしたテクニックが必要なことがあります。

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そのときになってあわてずに済むように、たとえ大動脈弁置換術という、心臓外科の中では一番簡単な手術のひとつという状況でも、ときに高度な技術が必要なことがあることを考え、心臓手術は実績ある強力チームに任せるのが安全です。

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先日も70代後半の女性で大動脈基部が狭い方が、他の病院で機械弁しかダメと言われて来院されました。

いざとなれば弁輪拡大すれば良いという準備と余裕のもと、無事に生体弁が入りました。

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60歳以上の患者さんで弁輪狭小がある場合は、弁輪拡大の技術があれば生体弁が使えることが多いため、(つまり弁輪拡大できないチームでは機械弁になることがあります)、弁輪拡大は患者さんへのベスト治療のために必須のバックアップ法なのです。

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外科のひとつの安全策として、予定している手術の少なくとも「もう一段上」のオペが確実にできるちからが勧められます。

それならいざというときにも落ち着いて対処できるわけです。

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