TAVRに関する治療ガイドラインや位置づけ・方向性

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TAVRでもちいる弁のひとつです本格的なTAVR(別名TAVI)のガイドラインはまだこれからですが、それに準ずるものとして、ヨーロッパのデータ(2008年)からつぎの状態の患者さんにはTAVRはやってはいけないと考えられる項目があります。

1.    大動脈弁輪径が18mm未満か25mmを超えるとき。バルン(風船)で押し広げるタイプのTAVRの場合です。

2.    大動脈弁に非対称性に高度の石灰化があり、TAVRによって冠動脈を圧迫する恐れがあるとき

 
3.    大動脈基部のSTJ径が45mmを超えるとき(自動展開式デバイスの場合)
 

4.    左室内血栓があるとき

5.    二尖弁(大丈夫とするデータもあります)

6.    経大腿動脈アプローチの場合: 腸骨動脈に高度石灰化があったり、曲がりくねるとき、直径が6-9mmより小さいとき、あるいは大動脈―大腿動脈バイパスの既往があるとき

7.    経心尖部アプローチの場合: パッチをもちいた左室形成術の既往があるとき、心膜の石灰化、高度の呼吸不全、左室心尖部にアクセスできないとき

このようにTAVRは将来性はあるものの、まだまだ多くの合併症、危険性、課題があり、自由に使って良いというものではありません。

それを踏まえて、日本でも施設基準が現在検討されており、正しい適応と正しい方法で、それも熟練したチームでこのTAVRが患者さんの役に立つ治療となるよう、努力が続けられています。

バルン(風船)で狭い弁を広げる治療法は一時的な改善が図れます
ここまでのEBMデータから、大動脈弁狭窄症 ASの治療全体を通じての現在の考え方はつぎのとおりです

現時点での治療の選択肢としては

①適度の運動や塩分制限その他の食事療法、生活指導

②お薬

③バルン(風船)カテーテルにより大動脈弁を広げる治療

④カテーテルによる大動脈弁植え込みTAVR

⑤外科手術によるAVR

現在まで、外科手術のときにもちいる代表的な生体弁です。長期のデータが確立しているのも利点ですなどがあります。これらを整理すると現時点ではつぎのようになります。

なお将来は⑥外科手術時におこなうTAVR(いわゆるSutureless valve、縫わない弁) が加わりさらに成績が上がるでしょう。

さらにTAVRも従来の大腿動脈経由や心尖部経由以外に、上行大動脈経由やその他の動脈経由などの方法が開発され、選択肢が広がりつつあります。

 

1.    外科手術による大動脈弁置換術AVRが症状のあるASの患者さんには中心的治療法です。これによって症状は改善し、長生きしやすくなります

2.    経皮的バルン大動脈弁形成術は治療時に10-20%の危険性があり、かつ血行動態や臨床的な改善も一時的ですし、長期の成績も薬による治療と大差ありません。

3.    そのため経皮的バルン大動脈弁形成術はAVRの代わりにはならず、おもに弁の石灰化がない若い患者などに使えます

4.    TAVRは症状の強いASで外科的AVRが危険すぎる患者さんに対して使えます

5.    強い症状があり、外科的AVRができないようなASの患者さんの中にはTAVRで従来治療(つまりお薬やバルンなどによる治療)より優れた成績が期待できます

6.    強い症状があるASの患者さんではTAVRと外科的AVRは同じ1年生存率が得られますが、TAVRのほうが大きな合併症が多く、外科的AVRでは出血や心房細動が多いという弱点があります

7.    そこでこうした患者さんの治療では内科外科などをあわせた心臓チームでの治療が勧められるわけです

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米田正始   医誠会病院スーパーバイザー 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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