中国での心臓外科国際シンポジウムに行って参りました

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 8月のお盆休みにたまたまご招待を頂いたため、第一回国際心臓胸部外科シンポジウムのため中国の保定市(Baoding市)へ行って参りました。尖閣諸島問題で騒々しい中をまあ何とかなるだろうと参加しました。

 
保定市と言っても日本ではあまりなじ 2012-08-17 17.51.22みがないと思います。
北京から南西方向にクルマで2時間半のところにある町ですが、なんと人口は1000万人を超える大都会です。中国は何につけてもスケールが大きいと思いました。

これまで何度か心臓手術をするために訪問した天津は北京から南東にクルマで2時間あまりのところにあるため、この3つの大都市が正三角形をなしているという位置関係です。

保定市はかつては河北省の省都だったそうですが、現在は省都を天津に譲っているそうです。
ともあれ保定市でもこれから医療を国際化、先進化して村おこしの一助にしようということでこの第一回国際心臓胸部外科シンポジウムが企画されたようです。

 

日本からは私・米田正始と東京大学教授の許俊鋭先生が招待を受けて参加しました。
許先生とは長年のおつきあいというよりお世話になって来ましたので、久しぶりに楽しいひと時になりました。

北京空港で数十名の参加者が集合し、コオディネーターの丁さんのお世話でバスで保定市まで移動しました。参加者はヨーロッパ、アジア、アフリカなど多彩で、心臓胸部外科関係はもちろん、それに関連した循環器内科、移植、腎移植、内科、脳外科、基礎医学など多彩でした。

中国といえば、英語が通じるというのがこれまでの私の印象でしたが、たった2時間地方へ移動するとあまり通じない別世界であることを知りました。この国は巨大で、医療でも何でも国の隅々まで行き届かせるのは大変だろうとすぐ理解できました。

ホテルはまずまず近代的なものでしたが、周囲の街並みは現代と過去が混在したような、あるいは豊かさと貧困さが入り混じった形で、急速に発展する中国の地方都市の姿を象徴しているようでした。地方都市といっても人口1000万人以上の、東京なみの大都市ですからこの国のポテンシャルはすごいとも思いました。

2012-08-16 19.19.22中国の良き慣例で、到着当夜の歓迎パーティは豪華かつ楽しい中華料理で、大型テーブルが電動式に動いているのが面白く、20名以上が食卓をともにすると、デーブルを動かしておかねばなかなか食べ物が回ってこないためでしょうか。

同様の部屋がいくつもあって、20名単位で親交を深めるということのようでした。

内容は数えきれないほどの中華料理のバリエーションと、マオタイやワインその他の飲み物でしたが、美味なマオタイに比べて中国のワインはまだ発展途上という印象でした。タバコとライターが時々回ってくるのと、食事中でもタバコを吸うひとがいるあたりアジアのおっさん時代の名残を感じました。
中国式に何度も乾杯しながら楽しいひとときでした。

翌日から病院(保定市第二病院)の大講堂でシンポジウムは始まりました。

二日間の予定で、心臓外科、呼吸器外科、移植とそれらに関連した領域のトピックスが論じられました。

図1

驚いたのは発表も討論もすべて中国語で行われ、許先生や私の発表はもちろん英語でなされたのですが、中国語の通訳がついてのものでした。

英語に堪能な中国人の本国で、それも人口1000万の大都市でもここは僻地じゃというのはこの国を統治することの大変さをうかがわせるものでした。

許先生と、こんな巨大な国をたかだか100万か200万の軍隊で支配しようとした旧日本軍はこの国を知らなさすぎたですねと、あらためて日本の世界知らずを実感した次第です。

さらに面白かったのは、香港の先生が中国語で発表されても、それが大半の聴衆に理解されず、やむなく英語発表に切り替えられ、それを台湾の先生がボランティアで通訳されたことでした。

この国は巨大だと再度痛感しました。ちなみに許先生や私の発表を通訳して下さったのも台湾の先生でした。

許先生はライフワークでもある補助循環・人工心臓・心移植を中心としたお話しで、この領域の目覚ましい進歩を改めて実感させてくれるものでした。

補助循環はこの数年間、日本発の小型デバイスを含めた、より優しい小さいデバイスの進歩で治療成績が格段に改善していることを確認できました。

もはや心移植の成績にさえ比肩できるレベルに来ているというのは、心不全患者を預かるものとして感謝に絶えないことでした。

私はより多くの患者さんに役立つミックス手術というテーマでお話ししました。

ミックス手術とは小切開低侵襲手術(Minimally Invasive Cardiac Surger, MICS)の略称ですが、まだ簡単な手術にしか使われていない、それもエキスパートがいる病院に限定されているという問題があります。

エキスパートややるべき手術というのは今後もそうあるべきと思うのですが、簡単な手術にしか使えないというのは世の中への貢献という意味では劣ると考え、それへの対策をお話ししました。

 

つまり、その患者さんの病気や重症度に応じて、さまざまな段階のMICSを使い分け駆使することでより多くの患者さんにお役に立とうというわけです。

ミックスが行われるのは通常、心房中隔欠損症ASDや僧帽弁形成術の簡単なタイプなどが主ですが、私たちの工夫によって、複雑弁形成でも、大動脈弁形成でも、2弁でも3弁でも、比較的高齢者でもミックス手術ができることをお示ししました。

2012-08-17 19.47.261日目のシンポジウムが終わったあと、ディナーパーティが開かれました。中国のもてなしの素晴らしさを見る思いのパーティで、力の入った出し物のあと、何度も乾杯しながら見事なご馳走を山ほど頂きました。

山ほどというのは文字通りの表現で、テーブルに乗り切らないほどの料理が出てきて、それらを互い違いに上へ上へと積んで行くのです。

 

なるほど、こうすれば普通の数倍の料理が並び、かつそのどれも選べることができます。

中国式の実用主義の一端を見せて頂いた思いです。

しかしお皿の下側はきれいなんでしょうねと確認したく思ったひともあったようで2012-08-17 20.33.05す。

冒頭にお書きしました尖閣諸島の問題は、シンポジウム中にはまったくその空気もありませんでしたが、ホテルでテレビを見ますとその報道をしていました。

 

中国政府やメディアによれば、尖閣諸島は5世紀の昔から中国人がよく訪れ魚を取ったりなじみのある島で、位置からいっても当然中国領でしょという報道でした。

英語放送で見ましたので比較的正確に聞き取れたと思います。

これは国民感情に訴えやすい論法ですが、国際法上は誤りです。

それを知っているはずの政府がこうした報道をするのは問題と思いました。

 

しかし同時に中国は今後絶対に仲良くすべき大切な国です。それは韓国を含めたすべてのアジア諸国も同じです。

どうすれば仲良くできるか、幅広く意見を集めて具体的かつ積極的に実行していくことが長期的には一番重要と思いました。

私はこれまで中国に何度も心臓手術や講演でお邪魔させていただいていますが、今回はちょっとユニークな、これまでにない経験をさせて頂いたように思います。

地方都市のためでしょうか。

上海、北京、大連などそれぞれ複数回お邪魔しても見られなかったものが見られて面白い経験となりました。

シンポジウムはもう一日あったのですが、許先生も私も、それぞれ日本で学会の公用があり、朝4時半にクルマで北京へ向かいました。

わずか3日間の旅でしたが、楽しく有意義なひとときでした。

お世話になったYao Lu先生や中国の先生方、秘書のRachelさんはじめ多数の皆様、そして許先生に感謝申し上げます。

平成24年8月18日 米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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