ポートアクセス法による大動脈弁形成術 【2022年最新版】

Pocket

最終更新日 2022年2月4日

.

◾️大動脈弁形成術のメリット

.

大動脈弁形成術は若い患者さんたちにとって大きなメリットがあります。

IMG_1808bというのは手術のあと、ワーファリンが不要ですし、生体弁よりも長持ちするからです。

.

生体弁は70代なら20年近く持ちますが、10代なら10年も持たず、弁形成術に大きな有利さがあります。自己心膜による弁再建も10年を超えるようなデータの蓄積がなく、現時点では主流にはなり得ない状態です。

.

◾️ミックス(ポートアクセス)での大動脈弁形成術

.

しかし若い患者さんたちは将来があるため、なるべく創が小さく、痛みが少なく、仕事復帰も早いポートアクセス手術を希望されるものです。そこで僧帽弁形成術に対してはポートアクセスのミックス(小切開低侵襲手術)を積極的に活用し実績を上げて来ました。

.

経験の蓄積により、大動脈弁形成術とポートアクセス法は必然的に合体することになり、この10年ほどは積極的に行うようになりました。患者さんの笑顔が二倍になると言ったらちょっと言い過ぎでしょうか。しかし大変喜んで戴いています。女性患者さんはもちろんのこと、男性患者さんの評判も上々です。

ちいさい傷跡のおかげで、心の傷跡も小さい、そう感じます。

.

写真右上はポートアクセス法での大動脈弁形成術 後の創です。もちろん骨はまったく切っていません。真夏の日焼けのあとがどこか楽しそうですね。

当初は30代までの若者を中心にこの方法を使って参りましたが、ノウハウの蓄積で現在は70代ぐらいまでの患者さんにも適宜活用しています。

ただし大動脈の硬化が強い方や、弁尖の破壊が進み弁形成が複雑な場合など安全に懸念がある場合はポートアクセスより一段通常切開に近い方法などを選ぶことがあります。やはり安全第一の原則は最重要ですから。

.

◾️大動脈弁形成術のやり方は同じです

.

ポートアクセス法で、、といっても大動脈弁形成術のやり方は同じです。

Effective Height2弁尖つまりひらひらと開閉する部分が垂れ下がっていればそれを正しい高さに調整し、

弁輪つまり弁の付け根の部分が拡張しておればこれを適正なサイズに直す、

もちろん弁尖に穴があくなどしておればそれは心膜パッチなどで修復する、

いずれもこれまでの大動脈弁形成術を踏まえた、正統派の方法です。

.

この道の権威、ドイツのシェーファーズ先生の方法を活用して右図のような計測を行い、できるだけかみ合わせが深く、安定度が良いように工夫します。

.

とくに右図でeH(effective height つまり有効弁尖高)と示す、いわば弁尖の高さをなるべく確保するようにしています。

.

さらに二尖弁などで時々見られる弁尖が巻き込んで変化している、いわゆるenrollと呼ばれる状況のときにも、これをもとに戻して弁尖の高さを稼ぐようにしています。

.

弁尖そのものの高さ・サイズ、右図でgH (geometric height つまり弁尖そのものの背丈)が不足気味なときには図のAVJやSTJを調整し、その他の方法も適宜駆使して弁尖がしっかりと閉じ、かつ楽に開く、そのように弁を造り上げます。

 

趣味的な職人芸のように聞こえるかも知れませんが、なにしろ若い患者さんの、永い人生を支える弁を造る、つまり患者さんの人生がかかっているわけですから、本気で修復するのが患者さんへの礼儀と心得ています。

.

◾️弁形成術が適応にならない場合は

.

その一方、大動脈弁形成術が適応とならないような、弁がひどく肥厚硬化し、あるいは短縮や石灰化やちぎれるなどの変化を来した患者さんに対しては

Ilm17_ca07020-s1.自己心膜をもちいた大動脈弁再建(いわゆる尾崎法)か

2.ポートアクセスで生体弁をもちいた大動脈弁置換術を行っています。

もちろん生体弁の場合は将来再手術の必要が生じたらTAVIつまりカテーテルで入れる折りたたみ生体弁で再手術を回避できるように工夫しています。

こうしてさまざまな患者さんの多様なニーズにお応えできるように徐々に進化をしているわけです。

.

弁膜症のトップページにもどる

Heart_dRR
お問い合わせはこちら

.

■読み物

日記:アジア心臓血管胸部外科学会にてーー雑感とともに

 .

 .

.

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

ポートアクセス法のMICSにかかる費用は?【2022年最新版】

Pocket

最終更新日 2022年2月4日

.

ズバリ!追加出費はありません。

.

◾️ポートアクセス法などのMICSはIMG_1901b

ポートアクセス法に代表されるミックス(MICS)は創が小さく目立たず、社会復帰・仕事復帰も早いため喜ばれています。

.

よく戴くご質問のなかに、ポートアクセス法(写真左は正面から見たものです、創はあまり見えません)やミックス手術では費用が余分にかかるのでは?というのがあります。

.

幸いなことにポートアクセス法MICSでの僧帽弁形成術大動脈弁形成術、あるいは僧帽弁置換術大動脈弁置換術はいずれも完全に保険適応で、通常の心臓手術とくらべて患者さんの負担が増えることは一切ありません。

IMG_1902b

.

都道府県によって多少の差はありますが、通常7万5千円+食費などの負担だけで、実質300-500万円の医療費のほとんどは保険から支払われます。今後も守るべき、世界に誇る日本の保険制度の良き一面です。

.

心房中隔欠損症左房粘液腫などの心臓手術も同様で、負担はまったく増えません。

.

◾️正中で切開するタイプのMICSでも?

ポートアクセス法MICSが適応にならない、つまり心臓の真ん中から左側などを治す手術では胸骨部分切開のミックス手術や皮膚を小さく切るミックス手術を行いますが、この場合も 患者さんの負担はまったく増えません。

.

たとえば2弁手術、3弁手術、デービッド手術、ベントール手術、さまざまな成人先天性心疾患の手術たとえば心室中隔欠損症、右室二腔症、バルサルバ洞破裂、動脈管開存症その他の手術でもミックス手術を行っていますが、通常の保険診療と負担は変わりません。

.

ミックス手術やポートアクセス法(右写真は斜め方向から見たものです)で創がきれいだからといって患者さんの負担が増えることはありません。

ロボットとLSH_3.

◾️ロボット手術との違いは

ロボット手術は200万円ー300万円の自己負担が必要でしたが、現在は保険適応となりました。しかしロボットの腕の部分などの高価な部品は定期交換が必要なのに保険は効かず、結局は部屋代その他の形で患者さんの負担になっていると言われています。

ミックスは仕上がりではどちらが上かわからないほどきれいです。ロボット手術では副次創と呼ばれる小さい穴がいくつもでき、創の面積では大きくなるからです。
私たちが行っているMICSはスピードが高いため安全性でもそん色ありません。

.

ということで、患者さんにおかれましてはお金の負担増の心配なく、安全にきれいに病気を治すことに専念して戴ければ幸いです。

.

Heart_dRR
お問い合わせはこちら

.

弁膜症のトップページにもどる

.

参考ページのIndex:

MICS(ミックス手術)とは

とくにポートアクセス手術とは
ハートポートとは
ポートアクセスの位置づけ
それが前向きに安全な場合
美しいLSH法とは
ミックスは危険なの
術後の痛み軽減について
社会復帰が早いわけは?
美容について
胸骨「下部」部分切開法とは
ビデオ ポートアクセス法による僧帽弁形成術
ビデオ 連合弁膜症のご高齢患者さんへのミックス法・3弁手術

僧帽弁

ミックスによる弁形成

  同、弁置換

ポートアクセスによる弁形成術

メイズ手術

大動脈弁

ミックスによる弁置換

ポートアクセス法による弁置換術

ミックスによる弁形成

ミックスでのデービッド手術

三尖弁

ミックス法による弁形成術
患者さんやご家族からのお便り

お便り43 がんの手術後に心臓腫瘍がみつかった患者さん

お便り46 遠方からご自分の信念で来院下さった患者さん

お便り48: ミックスですみやかに社会復帰された患者さん
お便り50: 大動脈二尖弁と上行大動脈瘤の患者さん

お便り54: ポートアクセス法で弁形成術を受けた若者患者さん

お便り59: 被災地支援へ!同法の弁形成術を受けられた患者さん

お便り61: ミックスのデービッド手術のため三重県からお越し下さった患者さん

お便り62: 同、弁形成術と冠動脈バイパス手術を受けた患者さん

お便り63: ポートアクセスの複雑弁形成術を受けられた患者さん

お便り65: 同法による弁形成術で元気になられた患者さん

お便り66: バルサルバ洞破裂と心室中隔欠損症などを克服した患者さん

お便り67: ミックスで右室二腔症の手術を受けられた患者さん

お便り68: ポートアクセス法の弁形成術を受けたバーロー症候群患者さん

お便り70: 自己心膜で大動脈弁形成術(再建術)をミックス法で受けた患者さん

お便り71: ミックス手術で大動脈二尖弁形成を受けた15歳の患者さん

お便り72: 二弁置換とメイズ手術をミックス法で受けた患者さん

お便り73: リウマチ性連合弁膜症と心房細動をミックス法手術で克服

お便り74: ポートアクセス法で僧帽弁形成術とメイズ手術を受けた患者さん

お便り78: ベントール手術をミックスで受けられた患者さん

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り94: ポートアクセス法で大動脈弁置換術を受けられた患者さん

Pocket

患者さんは東京在住の30代男性です。
A335_018


4年前に大動脈弁閉鎖不全症の診断を近くの病院で受け、毎年定期健診を受けて来られました。

仕事の都合で関西の大学やセンターにも通っておられましたが、症状が進み心臓のちからが落ちて来たため私の外来に来られました。

エコーで調べますと、高度の大動脈弁閉鎖不全症のため左室が直径64mmと拡張し、駆出率も51%と力が低下し始めていました。

労作時の息切れもあり、手術することになりました。

患者さんのご希望にて、ポートアクセス法にて小さい創で、機械弁による大動脈弁置換術を受けられました。

術後経過良好で、遠方からお越しのためゆっくりと体力調整していただき、術後12日目に軽快退院されました。


MicsAVRb来でお元気なお顔を拝見し、サイクリングや散歩を楽しんでいるとお聞きし、うれしく思っています。

創も一見どこにあるかわからないほどきれいに治り、いっそう喜んで頂けました。

以下はその患者さんからのお礼状です。満足していただき、本当にうれしいことです。

また外来でお元気なお顔を見せてください。

 

******** 患者さんからのお手紙 ******

米田正始先生

6月26日に、名古屋ハートセンターでポートアクセス法による大動脈弁置換の手術をしていただいた****です。

 
退院してから1ヶ月ほどたちました。もうすっかり元気になり、ウォーキングやサイクリングを気持ちよく行っております。

「もうすっかり元気になり」と書かせていただきましたが、実は術後すぐに結構元気でした。手術の次の日の朝9時半ころに、歩いてICUから個室に移動でき、その日に廊下も歩けました。前日に手術をしたところなのに、もう歩けている自分が信じられませんでした。術後、特に我慢できないような痛みはまったくありませんでした。

手術の次の日に心臓が軽くなったのを感じました。術前は、寝ているとき心臓の拍動がかなり大きく感じられ、身体が揺れるような感じだったのが取れました。

術前職場の近くの駅を三階まで上がると、心臓がかなり大きくドキドキしていたのが、今はそのようなことはありません。

また、体を正面から見ると傷はまったく見えません。ひっかき傷かなと思うくらい本当に小さな(きれいな)傷で驚いています。

名古屋ハートセンターで手術をしていただいて本当によかったです。

数年前、弁膜症の診断がされ、それが進行して若干の息切れも出てきて、自分でもどうしていいかわからなかったときに、色々調べて米田先生のHPにたどりつきました。

思い切ってメールでご質問等させていただいたところ、外国からお帰りになられてご多忙な中、すぐにお返事をいただき、すごく驚いたとともにとても嬉しく感激してしまいました。

その後、名古屋ハートセンターをはじめて受診させていただいたときに、お忙しいにも関らず米田先生はとても丁寧に説明してくださり、すごく大きな安心感をいただき、先生にぜひ治療をお願いしたい!と心から思いました。それまで相当悩んでいたので、暗闇に光が差したように思い、その時点で何の迷いもなくなりました。

私は大きな仕事に関わっていたので、できるだけ早く元気に職場復帰したいと考えていました。

先生の説明で検査の結果ポートアクセスによる手術も可能と考えるということをおっしゃっていただいたので、術後のQOLなどすべて踏まえよく考えた上で、ポートアクセス法でお願いいしました。QOLと病気の治癒という問題の総合的な解決は、技術的に見てもどこでもなしうる簡単なことではなく、本当に貴重であり、大変ありがたいことだと思います。

技術の高さは勿論のこと、丁寧に説明してくださったことや、先生の人を安心させる雰囲気などから、本当に手術前の不安は一切無く、リラックスして手術に望むことが出来ました。不安どころか、元気に色々できるようになることを考えると、術後が楽しみに思えるほどでした。精神的にも支えていただいたと思います。当日、手術室に入ったときも皆さんが色々話しかけてくださって、緊張もまったくしませんでした。

米田先生をはじめ、北村先生、深谷先生、木村先生、看護士の皆様、そのほか関わってくださったチームの皆様には本当に感謝をしております。すべてにおいて患者のことを考えてくださり、患者に優しい病院だと思いました。

大変お忙しいと思いますが、どうかご自愛くださいますようお願いします。

本当に、ありがとうございました。感謝しております。
長文失礼いたしました。

 

Heart_dRR

心臓手術のご相談はこちら

患者さんからのお便りはこちら

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り92: ポートアクセスで大動脈弁置換術を受けられた患者さん

Pocket

大動脈弁狭窄症は心臓の出口が狭くなるため、重症になれば突然出口がふさがった形となり心臓が止まることがある病気です。つまり突然死の恐れがあるのです。


A335_017しかし普段、休憩などしているときにはそう苦しいわけではありません。あまり無理をしなければ症状がないことが多いのです。だから患者さんは油断しがちで、突然何か驚くとかびっくりするとか、無理をすると心臓が止まるのです。

下記の患者さんはかなり進んだ大動脈弁狭窄症のためまえもってメールで相談され、まもなく私の外来へ来られました。

大事な発表会が終わってから手術を受けたいと言われましたが、発表会の緊張する場面や、その練習の段階で突然死などが起こる恐れがあったことと、すぐ手術すればゆうゆうと安全に発表会に臨めるタイミングでもあったため、手術をお勧めしました。

私たちがちからを入れているポートアクセス法という、ある種のMICS(ミックス)手術なら、一般の病院で行う心臓手術と違って、創も小さく見えにくく、かつ骨(胸骨)を全然切らずにすむため、回復が速く、発表会に間に合ううえに、安心して発表できるというおまけまでつくと判断したのです。

弁そのものは硬く変性していたため人工弁に代えるか、ご希望があれば自己心膜で弁を再建するかの選択枝がありましたが、患者さんのご希望にてポートアクセス法での人工弁(生体弁)手術つまり大動脈弁置換術に決定しました。

手術はスムースに進み、翌日から歩行や運動を開始され、まもなくお元気に退院されました。創は外からあまり見えず、まさか心臓手術を受けたとはだれも思えないほどでした。

以下はその患者さんからの感謝状です。

 

********** 患者さんからのお便り ********

 

米田正始先生

手術をしていただいてから一ヶ月がたちました。
お蔭様で、順調に回復し、7月21日のフラの発表会に向けて練習を始める事ができるようになりました。
初めて先生の外来でお会いして、発表会が終わってから手術をお願いしたいと申し上げた私に、先生は突然死の不安を抱えながらそれでいいの?早く手術をして、何の不安もなく、せいせいおどった方がいいでしょ、とおっしゃって、お忙しいスケジュールの中、5月13日の手術日を決めて下さいました。

私が大動脈弁狭窄症と診断されてから9年たちます。

六カ月ごとに市立病院で、心エコー、心電図、レントゲン、血液検査をしていただき、今年の2月の検診の時、そろそろ手術適応の範囲内に入ってきたので、4月にカテーテルをやる日を決めて、手術しましょうと言われました。

以前から、ネットで米田先生のウェブを見て、弁手術にはカテーテル検査は必要ないと書いてあったのが頭に残っていましたし、手術していただく時は、自分の身は自分で守りたいので、自分の納得する先生に手術をして頂きたいと思っていました。

思いきって、4月の検診日に主治医に名古屋ハートセンターの米田先生に紹介状を書いていただきたいとお願いしました。

紹介状をいただいたものの、スーパードクターにどのようにお伝えしたらいいのか?悩んだ末、思いきってメールをしました。たぶんお返事を頂けたにしても、何日もたってからだろうと思っていました。

その2~3時間後に、先生からメールをいただき、外来へいらっしゃいとの事。
あまりにも速く対応していただき、おどろきと嬉しさで涙があふれてきました。

4月17日、初めて病院へ行き、明るく、清潔で、病院とは思えない雰囲気で、先生、看護師さん、スタッフの皆さんが笑顔で優しく接して下さりほっとしました。

診察室に入り、米田先生にお会いして、丁寧な説明をしていただき、すべて、先生にお任せしようと決心しました。
それから手術日まで、不思議な位手術の不安はありませんでした。

無事に手術をしていただき、すばらしい先生、スタッフのみな様にお世話になって、普通なら一日も早く退院したいと思うでしょうが、そんな気持ちには全然なりませんでした。

そして、こんなに早くフラに復帰出来、家族の為に働けるのは、米田先生始め、すばらしいスタッフのみな様の愛ある医療のお陰と感謝しております。

先生、毎日御多忙だと存じますが、くれぐれもお身体ご自愛くださいませ。

****

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへもどる

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

新しいポートアクセス法・MICSによる大動脈弁置換術—さらに快適に、きれいに

Pocket

◾️ポートアクセス法のミックス

.

ミックス手術(MICS手術、低侵襲小切開手術)が心臓外科の領域でも注目を集めています。なかでもポートアクセス法による心臓手術は小さな創で骨も切らないため、苦痛が少なく、社会復帰も早く、患者さんに喜ばれています。

.

これまでポートアクセスMICSといえば僧帽弁形成術僧帽弁置換術三尖弁形成術心房中隔欠損症ASD、さらに左房粘液腫MICS3右房粘液腫などに用いて参りました。

.

図の左図の赤い点線が通常の胸骨正中切開での創で、右図の赤い点線がMICSでの創です。

患者さんにかなりやさしい手術になったことがお分かり頂けるかと思います。

.

◾️ポートアクセス法のミックス、大動脈弁置換術でも

.


一方、大動脈弁置換術については、これまでの右前胸を小さく切るタイプのポートアクセス法MICSが一部の施設で試みられているだけで、それほど普及していません。

.

右下図の真ん中の図でお示しします。

これまでの大動脈弁ミックスそれは視野が限られ、熟練した心臓外科医でないと手術が安全にこなせないからです。

.

個人的には右の前の創は比較的目立ち、それも乳腺より上のため僧帽弁形成術のときのポートアクセスMICSほどきれいな仕上がりとは思えないからです。

.

そこでこれまでは胸骨の下半分を切って行うミックス手術を大動脈弁手術には主に使ってきました。右上図の右端でお示しする方法です。胸骨下部部分切開(英語でLower Hemisternotomy)と呼ぶこの方法は「夏服が着れる」つまり夏服でも創が目立たないこと、そして通常の胸骨正中切開より痛みが軽く仕事復帰もやや早いため喜ばれて来ました。

しかしこの方法では胸骨を部分的とはいえ、切開しますので、やはりポートアクセス法MICSの良さには及びません。

.

◾️腋窩下部アプローチのミックス大動脈弁置換

.

新しいポートアクセス法そこで登場したのが右側の腋窩(えきか、つまりわきの下です)で小さく切開する新型ポートアクセスMICSです。

左図の赤い点線が創を示します。ちょうど筋肉(大胸筋)の後ろ側で、筋肉をうまく避ける形で、陰に隠れるような位置に創があります。右腕をまっすぐ下せば腕で隠れるほどの位置です。女性では乳腺を避けることができ、乳腺の下・外側になります。

.

これによって骨をまったく切らず、痛みも少なく、かつ仕事復帰も早い心臓手術が大動脈弁にもできるようになりました

小さい「窓」(ポート)越しに手術しますので、視野が限られます。そこでいっそう、熟練した心臓外科医が行うことが重要です。

.

右写真はこの新しいポートアクセス法 高橋徹さん2bMICS
で大動脈弁置換術を受けられた患者さんの創部を示します。術後1か月ですが、正面からはあまり創が見えませんし、痛みも少なく、心臓リハビリも進み合併症の予防にも役立っています。

.

現在のところ、安全優先のため、おもに時間的に余裕のある大動脈弁置換術をこの方法で行っています。

患者さんの体型や太り具合、大動脈弁の位置や方向によってはこの腋窩アプローチは不利なこともあり、その場合は上図真ん中の右前小開胸を行うこともあります。

.

◾️今後の展開

.

大動脈弁形成術や自己心膜による大動脈弁再建術(形成術)はかつては上記の夏服が着れるMICSで行ってきましたが、熟練度がさらに上がりこの4年ほどは時間的に余裕が見込める大動脈弁形成術をポートアクセスMICSとくに副次創が少ないLSH法にて行い、ルーチン手術になりつつあります。

日々進化する心臓手術の恩恵が、安全に、患者さんに届くよう、これからも努力を続けます。

.


患者さんの想い出はこちら:

 

.

Heart_dRR
お問い合わせはこちら

弁膜症のトップページにもどる

.

参考ページのIndex:

MICS(ミックス手術)とは 

  とくにポートアクセス手術とは
  
  ハートポートとは
  
  位置づけ
  
  前向きに安全な場合
  
  美しいLSH法とは
  
  かかる費用は?
  
  ミックスは危険なの
  
  術後の痛み軽減について
  
  社会復帰が早いわけは?
  
  美容について
  
  胸骨「下部」部分切開法とは
  
ビデオ ポートアクセス法による僧帽弁形成術
  
ビデオ 連合弁膜症のご高齢患者さんへのミックス法・3弁手術
  

大動脈弁

  ミックスによる弁置換

  ミックスによる弁形成

  ミックスでのデービッド手術

患者さんやご家族からのお便り

お便り43 がんの手術後に心臓腫瘍がみつかった患者さん

お便り46 遠方からご自分の信念で来院下さった患者さん

お便り48: ミックス手術ですみやかに社会復帰された患者さん

お便り50: 大動脈二尖弁と上行大動脈瘤の患者さん

お便り54: ポートアクセス法で弁形成術を受けた若者患者さん

お便り61: ミックスのデービッド手術のため三重県からお越し下さった患者さん

お便り66: バルサルバ洞破裂と心室中隔欠損症などを克服した患者さん

お便り70: 自己心膜で大動脈弁形成術(再建術)をミックス法で受けた患者さん

お便り71: 同法で大動脈二尖弁形成を受けた15歳の患者さん

お便り72: 二弁置換とメイズ手術を同法で受けた患者さん

お便り73: リウマチ性連合弁膜症と心房細動を同法で克服

お便り78: ベントール手術をミックスで受けられた患者さん

 

 

 

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

事例:肝硬変を合併する三尖弁閉鎖不全症にミックス法三尖弁形成術

Pocket

三尖弁閉鎖不全症(略称TR)は高度かつ長期間になると肝臓のうっ血から肝硬変を引き起こします。

こうなると心不全だけでなく肝不全となり命を落としてしまいます。

三尖弁閉鎖不全症だけだからと内科の先生が放置した結果、気が付いたときにはすでにDICという全身が危険な状態で出血のため手術もできなくなっていたという不幸なケースを聞いたこともあります。

油断してはならない病気なのです。


術前SevereTR患者さんは大阪から来られた80歳近い男性で、10年前に近くの大学病院で高度の三尖弁閉鎖不全症と心房細動と診断され、薬などで治療されていました。

4か月前から急に息切れが強くなり、手術が必要だが危険だと言われて私の外来へ来られました。

術前SeverePH度の三尖弁閉鎖不全症(TR)があり、その背景に左室の強い拡張機能障害つまり左室壁が硬くなって、血液を入れ込むべき拡張期に血液を取り込みにくくなる、吸い込みにくくなる状態がありました。そのために血圧と同じほどの、高度の肺高血圧症もありました。

心臓のホルモンであるProBNPは3170と極めて高くなり、重い心不全の所見でした。

心臓と肝臓さらに調べますとチャイルド分類Aの肝硬変を合併していました。コリンエステラーゼChEは148と低下し、内蔵うっ血のため血小板は9.3万、ヘマトクリットも25.5とかなり少なくなっていました。CTで肝臓は縮小気味でした。さらに悪いことにクレアチニンCr 1.45と腎臓も弱っている、いわゆるCKD状態でした。

そこで私たちの方法をもちいて、まず入院していただき、たっぷり時間と手間をかけて心臓や肝臓のうっ血を軽減するようにしました。

努力の結果、6週間後には肝臓も少し落ち着き、水分が取れて体重も軽くなり、上記の肺高血圧も血圧の半分ぐらいまで改善し、全身状態も改善したため、このベストタTAP後イミングで手術しました。

患者さんのからだへの負担を最小限とするため、ポートアクセス法という右胸に小さい創をひとつつけるだけの、患者さんにやさしい手術法でアプローチし、三尖弁形成術を行いました。

三尖弁だけの手術で、かつ安全性を高めるため、心臓を止めずに動かしたまま三尖弁形成術を行いました。

術後経過は順調で、翌朝には集中治療室ICUを出ることができました。心配された肝機能もまずまずよく持ちこたえ、総ビリルビンも4弱で治まり、あとは正常化して行きました。自然のペースメー 術後TR軽快カーが弱く、術後は心房細動は取れて正常リズムにはなりましたが、徐脈(脈拍が遅いこと)のため、術後2週間でペースメーカーを入れて改善安定しました。

遠方でかつ重症であることを考慮し、術後3週間入院治療を行い、それから元気に退院されました。

比較的ご高齢で肝臓も腎臓も弱っている状態でも心臓手術に耐えられることを示して下さったと思います。外来でお会いするのが楽しみです。

 

弁膜症のトップページにもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

 

 

参考ページのIndex:

MICS(ミックス手術)とは 

  とくにポートアクセス手術とは
  
  ハートポートとは
  
  ポートアクセスの位置づけ
  
  それが前向きに安全な場合
  
  美しいポートアクセス・心臓手術のためのLSH法とは
  
  かかる費用は?
  
  ミックスは危険なの
  
  術後の痛み軽減について
  
  社会復帰が早いわけは?
  
  心臓手術と美容について
  
  胸骨「下部」部分切開法とは
  
ビデオ 心臓手術:ポートアクセス法による僧帽弁形成術
  

 
三尖弁

  ミックス法による三尖弁形成術

  同、メイズ手術

患者さんやご家族からのお便り

お便り48: すみやかに社会復帰された患者さん

お便り54: 僧帽弁形成術を受けた若者患者さん

お便り59: 被災地支援へ!ポートアクセス法の僧帽弁形成術を受けられた患者さん

お便り63: 同、複雑僧帽弁形成術を受けられた患者さん

お便り65: 同、僧帽弁形成術で元気になられた患者さん

お便り68: 同法の僧帽弁形成術を受けたバーロー症候群患者さん

お便り74: 同法で僧帽弁形成術とメイズ手術を受けた患者さん

 

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り74 ポートアクセス法で僧帽弁形成術とメイズ手術を受けた患者さん

Pocket

Hana_1

 

僧帽弁形成術は僧帽弁閉鎖不全症の患者さんを長期にわたって守る、優れた手術法です。

なかでもポートアクセス法による、小さい創で骨も切らずに行うミックス手術(低侵襲手術)は、患者さんの社会復帰が早く、僧帽弁形成術の良さをいっそう引き出す方法と思います。

つぎのお便りは、大阪から来られた50代男性患者さんからのものです。

僧帽弁閉鎖不全症と心房細動のため、ポートアクセスで僧帽弁形成術と左房メイズ手術を行いました。

弁の逆流はきれいに取れ、リズムも正常にもどりました。

経過良好で、遠方のためすこしゆったりとリハビリをしながら入院していただき、術後10日目に元気に退院されました。

 以下はその患者さんからのお便りです。

 

 *******患者さんからのお便り*******

6月7日に手術を受け経過も良く本日6月17日退院させていただく事になりました

心臓弁膜症とメイズ手術を同時に受けました。

ポートアクセス法にて(メイズ手術)も同時にして頂き、体への負担も少なく、痛みもそれ程感じませんでした。

経過も良好で本日6月17日退院します。

お世話になった米田ドクター、北村ドクター、深谷ドクター、木村ドクター始め沢山のナース、スタッフの方ありがとうございました。

若い看護師さんも沢山いて皆さん元気で頑張っておられます。

上司の方や、特に若手の医師の方にお願いです。 看護師さんを大事にしてあげて下さい。 また たまには励ましの
一言をかけてあげて下さい。

また、米田先生の外科医としての高い技術を頼りここに来て本当に良かったと思います。

本日6/17 日 退院します。

ここに来て思った事の1つに一流の方はどこまで行っても謙虚であられるという事です。

また米田先生はもちろんのこと北村先生を始め全スタッフの方に感謝いたします。

ありがとうございました。

 

************************

その後、この患者さんはたまたまお腹の急病を発生し、危篤状態となられ近くの病院でお腹の緊急手術を受けられました。

大きな手術でしたが、心臓はびくともせず、患者さんももちまえの頑張りで見事に回復され、私の外来へ健診と報告にお越しになりました。

こうした不慮の場合も考えますと、僧帽弁置換術に比べた僧帽弁形成術の良さは一段とひかると思います。

それだけばい菌にも強く、出血もしにくく、他手術も安全に行いやすいわけです。

患者さんがこれから健康を完全に取戻し、楽しい生活を送られることを信じ、また祈っています。

 

患者さんからのお便りのトップページにもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り68 ポートアクセス法の僧帽弁形成術を受けたバーロー症候群患者さん

Pocket

 

僧帽弁形成術は年々進化を続けています。

私たちも内外の仲間と常に切磋琢磨しながら、患者さんのお礼のことばを糧として、日々反省と勉強を続けています。おそらくこの仕事を続けるかぎり、その熱い毎日は止むことなく続くでしょう。

バーロー症候群はかつては弁形成がなかなか難しいilm23_df01001-sと言われました。現在でも慣れないチームには難問です。

私たちもかつてはバーロー症候群で形成があと一歩のところで仕上がらず、涙を呑んで弁置換したことがありました。もう20年近く前のことですが、あの悔しさは今も忘れることができません。

そうした経験をもとに、いつしかバーロー症候群といえども、とくに問題なく普通に形成できるようになりました。

現在はこれをポートアクセス法という、ミックス手術のなかでも一番創の小さい、難しい視野の手術で普通にこなせるまでになりました。

そうすることで、より多くの患者さんが、より少ない痛みや苦しみで、より短期間に仕事復帰し、しかも心の傷がより小さくなって明るく人生の再出発ができるようになったことを、大変うれしく思っています。

以下はそうしたバーロー症候群の僧帽弁閉鎖不全症に対してポートアクセス法での複雑な僧帽弁形成術を受け、元気に退院された患者さんからのお便りです。

お役に立てて、こんなにうれしいことはありません。

 

*******患者さんからのお便り(心臓手術の体験記)******

 

米田正始先生

謹啓 9月になりましたが、まだ暑い日が続いています。

先生はじめ名古屋ハートセンターの皆様にはご清祥のことと存じます。

8月18日に退院し、長野県に戻りました。

手術に際しましては大変お世話になりました。

皆様優しい方ばかりで良い環境で入院生活を送ることができました。感謝申し上げます。

 

今振り返りますと、ここ2年ほど風邪がなかなか治らないような感じで調子の悪い時が何回かありました。

6月1日から36.9度~37.1度くらいの微熱が続き、たまに頭が痛い。

重いものを持ったり、5分も歩くと疲れてしまう。

自分の判断では、肝炎かもしれないと思いました。

かかりつけ医のところで血液尿検査を行いましたが、問題はない。

1ヶ月続いたところで総合病院に紹介していただき、7月6日(金)に診ていただきました。

内科の先生が聴診器を胸にあてて雑音を発見、心エコー検査して、すぐに循環器内科へ回されました。

「弁に逆流がある」「僧帽弁閉鎖不全症」「手術しないと治りません」「すぐに入院してください」私は、体の状態は理解できましたが、仕事のこともありすぐ入院といわれ焦りました。

「仕事の段取りを整えなければいけないので一度職場へ行かなければなりません」

「それじゃ、今日もう一度来てください。必ず来てください」 ‥‥ 16時再び参りました。

「月曜日入院してください」経食道エコーとカテーテル検査で2泊入院ということでした。

すぐ入院ではなかったのか。一度帰宅したときにインターネットで調べて職場には、本日入院、手術後3ヶ月療養と告げてきました。

 

時間をいただきましたので、土日インターネットで調べました。

闘病体験記がいくつもあり、写真を掲載しているものもありました。

スーパードクターを紹介するものもあり、低侵襲手術についても載っていました。

ポートアクセスのMICS手術は経験豊富な外科医が熟練したチームでおこなう。

どこの病院でもできるわけではない。

複数の病院がわかりました。

米田先生の「心臓血管外科WEB」「遠方の患者さんの場合は ‥‥ 自宅と病院の往復回数をできるだけ減らすよう、必要な検査等は集中的に行い ‥‥ 」とても姿勢が良い。患者思いの先生だと思いました。

「心臓血管外科WEB」に心カテーテル検査と経食道エコーは必要ないと書かれています。

私は検査を受けた方がよいのかメールで相談いたしました。

30分で返事が来ました。うける必要はないということでした。

米田先生の迅速な対応にビックリしました。

翌日、両方断っては申し訳ないと思い、経食道エコーだけは受けました。

担当の先生と話して、米田先生に手術をお願いしたいと考えていますと伝えました。

「じゃあ、紹介状書くから」と検査を受けないことを許してくれました。

帰宅後、名古屋ハートセンターへ電話し、米田先生の診察を予約しました。

担当の看護師さんに伝えてくださってあり、米田先生ってきめ細かいなあと感心しました。

夕方、手術日はいつか、職場復帰はいつ頃かメールでたずねました。

20分で返事が来てまたまたビックリしました。

 

7月18日名古屋ハートセンターで検査と米田先生の診察です。

手術日は8月7日と決まりました。

MICS手術でいける。

療養期間は8月いっぱい。9月から職場復帰。

CTも撮りました。

8月3日入院しました。

米田先生には、8月6日の手術が夜までかかり遅い時間にもかかわらず、私と家族に翌日の手術について1時間説明してくださいました。

私自身は、52歳でもう人生に悔いはないといつも悟ったような気持ちでいました。

加えて米田先生を信頼していましたので、手術に関して心配事はありませんでした。

「心臓血管外科WEB」で学習しているので、理解するというより確認するという感じです。

16日間入院し、僧帽弁形成術で治していただきました。

オペ室スタッフの皆様、北村先生、深谷先生、木村先生にもお世話になりました。

看護師さん、食事担当の皆様どうもありがとうございました。

清掃は行き届いていました。

担当の皆様ありがとうございました。

これで安心して残りの職業生活を続けられます。

1ヶ月後にはまた名古屋へ参ります。お世話になります。

 

 20日には元の総合病院へ行ってきました。

担当の先生は、胸を見て、「ほう、右胸を切ったんだ。珍しい手術だね。内視鏡見ながらやるのかね。珍しいね。」とおっしゃるので、「見ていないのでわかりませんが、たぶんそうです」と答えました。

 米田先生、お忙しいスケジュールと思います。無理をなさいませぬよう患者の一人としてお願い申し上げます。

また、名古屋ハートセンターがますます発展されますようお祈り申し上げます。      

 

敬白 

 平成24年9月1日
                                                   ****

 

*註:米田正始は現在、医誠会病院仁泉会病院で仕事しています

 

患者さんからのお便りのトップページにもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

お便り65: ポートアクセス法による僧帽弁形成術で元気になられた患者さん

Pocket

僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術はポートアクセスなどのミックス法の出現でますます進化をとげています。

患者さんは30代前半の男性です。兵庫県の遠方からお越し下さいました。

魚心あれば水心という心境で私の方も思わず力が入りました。ilm23_ee01001-s

以前から僧帽弁閉鎖不全症をかかりつけの先生に言われていたそうですが、良い治療法の出現をまっていたそうです。

弁は前尖と交連部つまり弁のヒンジの部分が壊れている、世間的にいえばやや複雑な形成でしたが、私たちにはよくあるタイプですので、いつもどおりポートアクセス法で僧帽弁形成術を行いました。

ゴアテックスの糸を4本つけて人工腱索とし、さらに交連部を微調整し、リングで仕上げて逆流はきれいに消えました。

小さい創で痛みもすくなく、外から創はほとんど見えないという、長年望んでおられた治療法で良い結果がえられ、よろこんで頂けました。

以下はその患者さんからのお便りです。

 

******** 患者さんからのお便り *********


メールにて失礼いたします。

米田正始先生、このたびは本当にありがとうございました。

8月5日に退院させて頂きました****です。

退院日が日曜日でしたので、米田先生へお礼の挨拶もできず、大変失礼いたしました。

名古屋ハートセンターにて先生の手術を受けることができ、本当に良かったです。

2年前に心臓の病気が見つかってからというもの、常に、手術になったらどうしよう、手術がうまくいかなければどうしようと、

気が休まる日は無かったです、他の病院で手術が必要だといわれてからも、自分が納得できておらず、

このまま手術を受けていいのかと、悩んだり迷ったり、精神衛生上も非常に良くない日々を送っておりました、

心臓の手術はそうそうあることではないので、多少場所が遠くても自分で納得できる病院、先生を探そうと思い色々と調べ始め、

そんな時インターネットで米田先生のブログを拝見し、

米田先生は他の病院で弁形成術を行ったが調子が悪くなった患者さんの

再形成手術等もされているという情報を見つけ、名古屋ハートセンターを訪れました。

先生の診察を受け、やはり手術が必要となりましたが、先生は患者が不安にならないよう、丁寧に納得いくまで説明してくださり、

また、手術まで何度も何度も名古屋まで足を運ぶのだろうなと思っていたのですが、

遠方からの患者ということで、手術に必要な検査をまとめてやってくださったり、患者の負担を減らすように心がけてくださり、手術の日まで、たいした不安も無くすごせました。

本当にありがとうございました、感謝しても仕切れません。

今は自宅にて療養とリハビリの最中です、早く健康な体になれるようがんばっていきます。

先生は多忙な毎日だとは思いますが、なにとぞお体大切になさって下さい。

それでは失礼いたします。

患者さんからのお便りのトップページにもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

中国での心臓外科国際シンポジウムに行って参りました

Pocket

 8月のお盆休みにたまたまご招待を頂いたため、第一回国際心臓胸部外科シンポジウムのため中国の保定市(Baoding市)へ行って参りました。尖閣諸島問題で騒々しい中をまあ何とかなるだろうと参加しました。

 
保定市と言っても日本ではあまりなじ 2012-08-17 17.51.22みがないと思います。
北京から南西方向にクルマで2時間半のところにある町ですが、なんと人口は1000万人を超える大都会です。中国は何につけてもスケールが大きいと思いました。

これまで何度か心臓手術をするために訪問した天津は北京から南東にクルマで2時間あまりのところにあるため、この3つの大都市が正三角形をなしているという位置関係です。

保定市はかつては河北省の省都だったそうですが、現在は省都を天津に譲っているそうです。
ともあれ保定市でもこれから医療を国際化、先進化して村おこしの一助にしようということでこの第一回国際心臓胸部外科シンポジウムが企画されたようです。

 

日本からは私・米田正始と東京大学教授の許俊鋭先生が招待を受けて参加しました。
許先生とは長年のおつきあいというよりお世話になって来ましたので、久しぶりに楽しいひと時になりました。

北京空港で数十名の参加者が集合し、コオディネーターの丁さんのお世話でバスで保定市まで移動しました。参加者はヨーロッパ、アジア、アフリカなど多彩で、心臓胸部外科関係はもちろん、それに関連した循環器内科、移植、腎移植、内科、脳外科、基礎医学など多彩でした。

中国といえば、英語が通じるというのがこれまでの私の印象でしたが、たった2時間地方へ移動するとあまり通じない別世界であることを知りました。この国は巨大で、医療でも何でも国の隅々まで行き届かせるのは大変だろうとすぐ理解できました。

ホテルはまずまず近代的なものでしたが、周囲の街並みは現代と過去が混在したような、あるいは豊かさと貧困さが入り混じった形で、急速に発展する中国の地方都市の姿を象徴しているようでした。地方都市といっても人口1000万人以上の、東京なみの大都市ですからこの国のポテンシャルはすごいとも思いました。

2012-08-16 19.19.22中国の良き慣例で、到着当夜の歓迎パーティは豪華かつ楽しい中華料理で、大型テーブルが電動式に動いているのが面白く、20名以上が食卓をともにすると、デーブルを動かしておかねばなかなか食べ物が回ってこないためでしょうか。

同様の部屋がいくつもあって、20名単位で親交を深めるということのようでした。

内容は数えきれないほどの中華料理のバリエーションと、マオタイやワインその他の飲み物でしたが、美味なマオタイに比べて中国のワインはまだ発展途上という印象でした。タバコとライターが時々回ってくるのと、食事中でもタバコを吸うひとがいるあたりアジアのおっさん時代の名残を感じました。
中国式に何度も乾杯しながら楽しいひとときでした。

翌日から病院(保定市第二病院)の大講堂でシンポジウムは始まりました。

二日間の予定で、心臓外科、呼吸器外科、移植とそれらに関連した領域のトピックスが論じられました。

図1

驚いたのは発表も討論もすべて中国語で行われ、許先生や私の発表はもちろん英語でなされたのですが、中国語の通訳がついてのものでした。

英語に堪能な中国人の本国で、それも人口1000万の大都市でもここは僻地じゃというのはこの国を統治することの大変さをうかがわせるものでした。

許先生と、こんな巨大な国をたかだか100万か200万の軍隊で支配しようとした旧日本軍はこの国を知らなさすぎたですねと、あらためて日本の世界知らずを実感した次第です。

さらに面白かったのは、香港の先生が中国語で発表されても、それが大半の聴衆に理解されず、やむなく英語発表に切り替えられ、それを台湾の先生がボランティアで通訳されたことでした。

この国は巨大だと再度痛感しました。ちなみに許先生や私の発表を通訳して下さったのも台湾の先生でした。

許先生はライフワークでもある補助循環・人工心臓・心移植を中心としたお話しで、この領域の目覚ましい進歩を改めて実感させてくれるものでした。

補助循環はこの数年間、日本発の小型デバイスを含めた、より優しい小さいデバイスの進歩で治療成績が格段に改善していることを確認できました。

もはや心移植の成績にさえ比肩できるレベルに来ているというのは、心不全患者を預かるものとして感謝に絶えないことでした。

私はより多くの患者さんに役立つミックス手術というテーマでお話ししました。

ミックス手術とは小切開低侵襲手術(Minimally Invasive Cardiac Surger, MICS)の略称ですが、まだ簡単な手術にしか使われていない、それもエキスパートがいる病院に限定されているという問題があります。

エキスパートややるべき手術というのは今後もそうあるべきと思うのですが、簡単な手術にしか使えないというのは世の中への貢献という意味では劣ると考え、それへの対策をお話ししました。

 

つまり、その患者さんの病気や重症度に応じて、さまざまな段階のMICSを使い分け駆使することでより多くの患者さんにお役に立とうというわけです。

ミックスが行われるのは通常、心房中隔欠損症ASDや僧帽弁形成術の簡単なタイプなどが主ですが、私たちの工夫によって、複雑弁形成でも、大動脈弁形成でも、2弁でも3弁でも、比較的高齢者でもミックス手術ができることをお示ししました。

2012-08-17 19.47.261日目のシンポジウムが終わったあと、ディナーパーティが開かれました。中国のもてなしの素晴らしさを見る思いのパーティで、力の入った出し物のあと、何度も乾杯しながら見事なご馳走を山ほど頂きました。

山ほどというのは文字通りの表現で、テーブルに乗り切らないほどの料理が出てきて、それらを互い違いに上へ上へと積んで行くのです。

 

なるほど、こうすれば普通の数倍の料理が並び、かつそのどれも選べることができます。

中国式の実用主義の一端を見せて頂いた思いです。

しかしお皿の下側はきれいなんでしょうねと確認したく思ったひともあったようで2012-08-17 20.33.05す。

冒頭にお書きしました尖閣諸島の問題は、シンポジウム中にはまったくその空気もありませんでしたが、ホテルでテレビを見ますとその報道をしていました。

 

中国政府やメディアによれば、尖閣諸島は5世紀の昔から中国人がよく訪れ魚を取ったりなじみのある島で、位置からいっても当然中国領でしょという報道でした。

英語放送で見ましたので比較的正確に聞き取れたと思います。

これは国民感情に訴えやすい論法ですが、国際法上は誤りです。

それを知っているはずの政府がこうした報道をするのは問題と思いました。

 

しかし同時に中国は今後絶対に仲良くすべき大切な国です。それは韓国を含めたすべてのアジア諸国も同じです。

どうすれば仲良くできるか、幅広く意見を集めて具体的かつ積極的に実行していくことが長期的には一番重要と思いました。

私はこれまで中国に何度も心臓手術や講演でお邪魔させていただいていますが、今回はちょっとユニークな、これまでにない経験をさせて頂いたように思います。

地方都市のためでしょうか。

上海、北京、大連などそれぞれ複数回お邪魔しても見られなかったものが見られて面白い経験となりました。

シンポジウムはもう一日あったのですが、許先生も私も、それぞれ日本で学会の公用があり、朝4時半にクルマで北京へ向かいました。

わずか3日間の旅でしたが、楽しく有意義なひとときでした。

お世話になったYao Lu先生や中国の先生方、秘書のRachelさんはじめ多数の皆様、そして許先生に感謝申し上げます。

平成24年8月18日 米田正始 拝

 

ブログのトップページにもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。