事例: PCI後、急性心筋梗塞後の冠動脈バイパス手術

Pocket

冠動脈バイパス手術(CABG)の良さがあらためて認識されつつあります。

このことは昨年改訂された日本循環器学会のガイドラインが物語るところです。

3枝病変や左主幹部病変で複雑な病変があるケースはCABGが第一選択と明記されたのです。

さらに若い先生方を中心に、ガイドラインを順守する向きが増えたことも一因です。

ただしそれまでも患者さんの状況や状態によってはカテーテル治療(PCI)ができる場合でも前向きにCABGを選択されることはよくありました。

患者さんは46歳男性です。

冠動脈3枝病変があり、カテーテル治療PCI後で、最近急性心筋梗塞AMIで来院されました。

来院前は近くの診療所で心室細動VFになり、AEDで蘇生ののち救急車で当院へ搬送されるという、ぎりぎりの状態でした。

来院当夜は緊急カテーテルで右冠動脈1番にステントを入れて救命できました。しかしそれ以外の冠動脈にも問題がありました。

もともとびまん性病変つまり冠動脈のあちこちが悪くなっている、しかも若い患者さんのため、長期的な安全を考えて、PCIではなくバイパス手術を行うことにいたしました。

 

胸骨正中切開ののち両側内胸動脈と左大伏在静脈SVGを採取しました。

図1心膜を切開し、まず右内胸動脈RITAを左前下降枝LADにオンレイパッチ吻合しました。

この患者さんのLADは数か所の狭窄がありましたので、

末梢側の狭窄を切開しこれを拡大する形でバイパスをつけ、広域を灌流するよう努めました(写真左)。

切開した狭窄症は内膜が肥厚・石灰化し針を通すのに工夫を要しました。

ドップラーにて良好なフローパタンを確認しました。

図2ついで心臓を脱転し、左内胸動脈LITAをまず中間枝IMに側側吻合しました(写真右)。

IMはLAO viewで比較的良い血管に見えたためバイパスをつけることにしましたが、

血管を開けてみますとやや細く、ドップラーでのフローも少ないパタンでした。

図3このLITAをさらに末梢の鈍縁枝OMに端側吻合しました(写真左)。

この吻合もプラークを切開し灌流域を広げるようにしました。

ドップラーで良好なフローパタンを確認しました。

回旋枝末梢枝は細く、かつ病変で策状になっていたためバイパスはつけませんでした。

 

ここでSVGを 図4上行大動脈にデバイスを用いて吻合し、心臓を頭側へ脱転し、このSVGを4PD枝に吻合し、操作を完了しました(写真右)。

良好なフローパタンを確認しました。

 

手術中、血圧・血行動態は安定していました。

経食エコーにて良好な心機能を確認しました。入念な止血ののち、無輸血にて手術を終えました。

術後経過は順調で、出血も少なく、血行動態も良好なため、術当日夕方、人工呼吸から離脱し、翌朝、一般病棟へ戻られました。

00021915_20090113_CT_501_5_5 00021915_20090113_CT_501_4_4術後のMDCTでバイパスはすべて開存し、良く流れている様子でした。

左図は両側内胸動脈グラフトが開存し、

右図は静脈グラフトが開存している状態を示します。

 

その後も経過良好のため術後10日目に元気に退院されました。

来院前はAEDで蘇生救命されるなど、じつに間一髪の危ない状況でしたが、すっかり良い形になられました。

これから永く楽しく過ごして頂ければと思います。

 

冠動脈バイパス手術のページにもどる

オフポンプバイパス手術のページにもどる

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。