事例: 虚血性心筋症に対する新しい左室形成術 その2

Pocket

虚血性心筋症は現在も重症でしばしば心移植しか治療法がないと言われます。

そうはいっても心移植はなかなか順番が回ってきませんし、補助循環(いわゆる人工心臓)を使っている人たちが優先することが多いですので、普通の心不全の症状では逆に治療法に困ることがあるのです。

患者さんは60代男性で起座呼吸を主訴として来院されました。

つまり心不全としては4段階の4、つまり最重症に入ります。

過去20年間に4回のPCIつまりカテーテルによるステント治療を受けておられます。しかし心不全が悪化し、来院されました。心エコーにて左室駆出率28%つまり健康者の半分以下、そして僧帽弁閉鎖不全症の増悪も認められました。このままではもう、あまり長くは生きられないという状況でした。

しかしよく見ればまだ心筋がかなり残存している所見があり、左室の悪い部分が比較的明瞭で、心図1SVG-4PD臓手術とくに冠動脈バイパス手術左室形成術そして僧帽弁形成術で改善できると判断しました。

体外循環下、心拍動下にまず静脈グラフトを右冠動脈に取り付けました。

さらに左室を前壁で開け、中を調べました。

図2左室切開前壁と心室中隔の前部分が心筋梗塞でやられており、それ以外は比較的壊れていませんでした。

これは治せるという所見です。

そこでDor手術の簡便さとSAVE手術のきれいな形の両方をもつ、私が開発した方向性Dor手術を行いました

通常のフ 図3四分割Fontan糸ォンタン糸と呼ばれる糸を4分割して梗塞部分と健常部分の境界部にとりつけました。

そしてその糸をくくることで左室の短軸つまり横方向に主に縮小させました。

左室はかなり小さくなり、予定のサイズまで戻りました。

それと同時に形を長細い、洋なし型に整えました。

図4左室縮小前 図5左室縮小後

左写真の左側は縮小前、同右側は縮小後の姿です。

主に横方向に小さくしていますが、

心尖部が瘤化しているため長軸方向にもある程度は縮小しています。

これで左 図6パッチ縫着後室のパワーアップに役立つのです。

最後にパッチを縫い付けて左室形成術を半ば完成させました。

そのうえで、左房を開けて僧帽弁を調べました。

やはり左室 図9MAPと吊り上げ後が悪化したために弁が閉じなくなっただけで、弁そのものは良好でした。

そのため私が考案した乳頭筋の前方吊り上げを行い、それも前尖と後尖のどちらもが前方へ引かれるように工夫し、リングをつけて完成しました。

弁はきれいに閉じるようになりました。

図10LITA-LADと左室閉鎖後最後に左室の切開部を閉じ、内胸動脈LITAを前下降枝にバイパスし、操作を完了しました。

術後経過は良好で、まもなくお元気に退院されました。

あれから5年が経ちますが、お元気に普通の生活を送っておられます。

その後もこの左室形成術で多数の患者さんをお助けできていますが、昔、救命できなかった患者さんのことを想いだしてはさらに精進しお役に立てるような心臓手術を磨いていきたく思うのです。

 

Heart_dRR
お問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

事例: 虚血性心筋症に対する新しい左室形成術

Pocket

虚血性心筋症拡張型心筋症に対する左室形成術は適切な患者選択によって大きな成果を上げることができます。しかしこのことは循環器内科の先生方に十分知られているとは限りません。

つまり左室形成術によって救命し、さらに元気を回復できる、そうした患者さんが恩恵を受けられないというケースが全国で発生しています。

現在、全国の仲間の協力で重症心不全研究会が立ち上がりEBMデータを蓄積し、多くの内科医・臨床医のご理解を頂けるように努力しています。

ここで提示する事例は関東在住の30歳代前半の男性で、3か月前に大きな心筋梗塞をわずらい、近くの病院で治療を受けて何とか退院されました。ところが心不全が次第に悪化し、複数の有名な病院でも心臓手術は無理と断られ、私の外来へ来られました。

術前検査で左室Dd(拡張末期径)89mm、左室駆出率0%(計算上)と危険な状態でした(末尾ちかくにある術前後のエコーの比較をご参照ください)。左冠動脈前下降枝は完全閉塞しており、これが原因の虚血性心筋症と考えられました。

こういう患者さんをこれまで長年、お助けしてきましたのでお引き図1左室切開受けすることにしました。

まず体外循環を回し、

心拍動のままで左室を開けました(写真右)。

左室内には血栓があり、

図2左室血栓摘除これが脳へ流れれば脳梗塞になるため完全に摘除しました。

写真左は血栓摘除中の様子です。

ついで心筋梗塞でやられた部分とそうでない部分の境目に糸をかけ(これをフォンタン糸と言います)、

通常のDor手術(ドール手術)ではこの 図5新フォンタン糸かけ後フォンタン糸をただ締めてくくるのですが、

これを前もって4分割し、

主に横方向に左室を小さくするという私の考案した「方向性Dor」という左室形成術を行いました。

図7パッチ縫着後左室がSAVE手術(セーブ手術)に負けないきれいな洋ナシ形で、

しかもより短時間で正常サイズに近づいたところでパッチを縫着し、

左室を閉鎖して仕上げました。

僧帽弁が術前にかなりゆがんでいたため、僧帽弁形成術を併せ行いまし 図9MAPた(写真右下)。

 

術後経過はおおむね良好で、一度だけ歓談中の不整脈発作でお互い冷や汗をかきましたが、チーム全員が努力して患者さんを守り抜き、元気に退院して行かれました。

図10術前後の心エコー真左は術前後の心臓の様子をエコ―でみたものです。

ほとんど動いていなかった左心室がかなり回復し、形もきれいで安定度が増したのがわかります。

あれから6年以上の月日が経ちますがお元気と聞いてい ます。

左室形成術は適応を選び、うまく使うと患者さんに大変お役に立つ手術です。

本来心移植をしても不思議でないほどの重症患者さんですので楽な治療ではありませんが、心移植の数が限られていることから、患者さんにお役に立つ心臓手術と申せましょう。

こういう重症の患者さんは手間がかかり赤字になりしかもリスクも高いため病院からは嫌われることが多いのですが、日々治療法を改善しながらチームを育てて多くの皆さんの理解を頂きながら患者さんの救命ができるように努力しています。

 

 患者さんからのお便りのトップページにもどる

Heart_dRR
お問い合わせはこちら

 

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

事例: デービッド手術を受けたマルファン症候群の患者さん 2

Pocket

デービッド手術大動脈基部拡張症に対する自己弁温存手術として大きな役割をになっています。

かつてこの手術をトロントで恩師デービッド先生が開発されたとき、私はチームの一員として参加していました。ホモグラフト、ステントレス弁、ロス手術、上行大動脈置換術などの手術を磨き上げるなかで、おのずと必然的にこの基部再建手術が生まれていったことをアートとサイエンスのすばらしい一例と思いました。

20年以上前にこの術式を行っていましたが、実のところ、この良さだけでなく弱点盲点も知っていたため、その後この術式を見合わせていました。しかしトロントやスタンフォードでの長期成績がでて、自分の中で疑問が解消したため、数年前から再開していたのです。

この手術を希望してあちこちから患者さんが来られますが、次の患者さんは関西から来られました。

患者さんは約40歳の男性で

以前からマルファン症候群を指摘されていました。術前CT

2年ほど前から大動脈基部拡張症のため近くの病院でフォローを受けておられました。

最近胸痛発作が起こるようになり、セカンドオピニオンで米田正始の外来へ来られました。

当院での治療を希望されたため、その後検査を施行しました。

大動脈基部は直径50mmに達しており、大動脈弁もやや寸足らずになり始めて軽度の大動脈弁閉鎖不全症が発生していました。

マルファン症候群では大動脈組織が弱いため、一般の大動脈基部拡張症の図1基部剥離患者さんより一歩早く治すことが勧められているため、心臓手術することにしました。

体外循環・大動脈遮断下に

拡張した上行大動脈(写真左)を横切開、離断しました。

まず大動脈 図2弁計測中基部のサイズを測定し(写真右)、

大動脈弁再建の予測を立てました。

それから大動脈基部の骨格部分をきれいに出して、患者さんご自身の弁尖を温存しつつ、人工血管をその周囲に 図3第一層糸かけ縫い付ける準備をしました。

適切なサイズのダクロン人工血管を大動脈基部の外側に配置し、固定しました(写真左)。

さらに、大 図5第2層糸かけ動脈基部の骨格部分を人工血管の内側に縫い付けました(写真右)。

このとき、弁尖の形、かみ合わせ、位置関係が最適になるように微調整を行いました。

水テストで弁逆流がないことを確認しました。

図6左冠動脈入口部そこで左冠動脈の入口部分を人工血管に小穴をあけて、

そこへ縫い付けました(写真左)。

同様に右冠動脈の入口部分も人工血管に縫い付けて、

冠動脈の流れがスムースに行くように、

かつまったく血液がもれないようにしました(写真右下)。

 

大動脈弁の 図7右冠動脈入口部一番高いところ、いわゆるSTJ(Sino-Tubular Junction)と呼ばれるところに糸をかけて、

大動脈基部のバルサルバ洞と呼ばれる部位が適度なふくらみをもつようにしました。

図10出来上がりあとは人工血管のもう一方の端を弓部大動脈に吻合して操作を完了しました(写真左)。

術後エコーで大動脈弁の機能は良好で、CTにて人工血管がきれいになじんでいることが示されました(写真右下)。

術後経過は 術後CT順調で術後2週間を待たずに元気に退院されました。

術後1年の外来でもお元気で仕事をこなしておられ、心臓のホルモンであるProBNPも102と正常で、心臓・大動脈とも安定していました。

術後3年が経過し、お元気で順調です。

デービッド手術はこうした若い患者さんたちの予後や生活の質(QOL)の改善に大きく貢献するものと思います。

現在はこのデービッド手術を小さい創でおこなうミックス法で行うようにしており、若い患者さんが手術後にできるだけ精神的ストレスのないように心がけています。

さらに大動脈弁形成術を適宜併用してできるだけ自然で長持ちする弁形態を整えるようにしています。

こうした努力の積み重ねでさらに成績は向上していくでしょう。

 

Heart_dRR
お問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

事例: 交連部の僧帽弁形成術 2

Pocket

患者さんは40代男性で僧帽弁閉鎖不全症心房細動のため弁形成術不整脈手術を求めて遠方からお越し下さいました。

お仕事の都合でイギリス在住でした。イギリスは心臓外科先進国ですが、その在住エリアの中心的病院で人工弁による僧帽弁置換術しかないと言われてはるばる私の外来へ来られました。

調べますと後交連部を中心とした比較的広い範囲の僧帽弁逸脱と逆流でした。

私にとってはいつもの手術ですので95%以上は形成可能と判断し、あわせて私たちのメイズ手術は単なる肺静脈隔離(PV isolation)より成績が格段に良いためこれも行うことになりました。

図6サマリーPCとA3逸脱術中、まず弁を調べますと、後尖交連部のPCと呼ばれる部分が腱索断裂し瘤化して完全に逸脱していました。

となりの後尖右側のP3と呼ばれるところは低形成かつ逸脱し、

さらに前尖の右側部分であるA3も逸脱し、逆流ジェットが当たっていたためか肥厚していました(写真右)。

前尖も弁輪もかなり大きく、余裕があったため

シンプルで 図10弁輪再建ののち弁尖再建中長期の安定性が証明されている四角切除を行うことにしました。

弁として作動できない部分を四角に切除し弁輪を少し整えたあと前後の弁尖を再建しました(写真左)。

逆流試図16最終逆流試験OK験にて結果良好でしたので

リング30mmを縫着しました。余裕あるサイズでした(写真右)。

インクテストでも十分な弁尖のかみ合わせが確認でき(写真左下)、

図17インクテストもOK長期間安定しやすい形ができていました。

写真の青いところが特殊インクで染まった部分で、白いところが弁尖のかみ合わせ部分となります。

なおこのインクは無害でまもなく消滅します。

リングの糸をくくる前に冷凍凝固法にてメイズ手術を施行しました(写真右下)。図14クライオメイズ

お若いご年齢を考慮し、極力再発しないように冠静脈洞の外側からもブロックラインを造りました。

写真左下がそのときのものです。心臓の外側にも不整脈の原因があるためこれを丁寧に治します。

心拍動下に 右房のメイズも行いました。

図15冠静脈洞にもクライオ術後の経食エコーにて僧帽弁、三尖弁とも良好であることを確認しました。

心房ペーシングが良く効き、心房細動が治ったことをも確認しました。

術後経過は順調で約10日で退院され、しばし郷里で体調を整えてからイギリスへ戻られました。

術後の定期検診でも弁、リズム、心機能とも正常で、仕事にも精出しておられ、うれしい限りです。もちろん利尿剤も不整脈のお薬もワーファリンもなしで行けています。

すでに心臓手術から4年以上が経ちます。この弁はおそらく一生お役に立ち続けるものと考えます。また定期検診でお会いしましょう。

 

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

事例: 交連部の僧帽弁形成術 1

Pocket

患者さんは40代の医師で僧帽弁閉鎖不全症のため北海道からお越し下さいました。仕事熱心な先生でなるべく短期間で健康な生活に戻りたいというご希望で来院されました。

やや複雑な逸脱のため地元では僧帽弁形成術ができるかどうか??ということではるばるハートセンターを選んでくださったようです。図1弁チェックA3PC


お若く体力もあるためか当初、比較的症状は軽かったのですが
、発作性心房細動を外来で起こされ、心臓手術を何年も先ではなく今やろうと決意されました。 

図2弁チェックP3術中、僧帽弁を見ますと術前のエコー予想どおり、後交連部の逸脱でした。(写真右上)

なかでも前尖A3つまり向かって右側の太い腱索が断裂しており、A2つまり前尖中ほども逸脱、PCつまり後交連部も逸脱していました。

A2-3とPCだけでなく後尖P3つまり後尖右側も軽度逸脱(写真左上)していたため、これらをすべて良い形にすることが長期の安定につながると判断しました。図3A3へのGT

そこでA3に4本人工腱索を立て、PCとバランスをとることでこれを守り(写真右)、

 

かつA2にも人工腱索を立てて正常化を図りました(写真左下)。

ここで生理食塩水を左室内へ注入し僧帽弁がきれいにか 図4A2へのGTみ合い、逆流がないことを確認しました。

リングをもちいて弁輪形成し、

念のため逆流試験で良い結果を確認(写真右下)し、

ピオクタニン色素で深いかみ合わせができていることも確認しまし 図5逆流試験OKた。

術前に発作性心房細動を何度か繰り返しておられたため、両心房メイズで心房細動を根治し、

後顧の憂いなく仕事に集中していただけるようにしました(写真左下)。

図7左房メイズ術後経過は順調で10日あまりで元気に退院されました。

その後も外来でお元気なお姿を拝見するにつれうれしさがこみあげてきます。

あれから4年、ますますのご健勝とご活躍をお祈りいたします。

 

健康人と見分けがつかないほどの良い治り方は弁形成術ならではの利点です。複雑弁形成が必要なため人工弁による僧帽弁置換術になるかも、と言われた患者さんはセカンドオピニオンをもらって本当に僧帽弁形成術ができないかどうか、確認されることを勧めます。

それともう一点、現在ではこうした心臓手術ポートアクセス法などのMICSでできるようになっています。多数の経験をもつ専門施設に限られますが、こうしたことを検討するのも大切です。

Heart_dRR
心臓手術のお問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

事例:リウマチ性僧帽弁閉鎖不全症への弁形成術

Pocket

弁膜症の中でリウマチ性は今なお少なくない病気です。

ご高齢の患者さんでは若いころにリウマチ熱にかかり、知らない間に治って、その際に弁が軽く壊れて、その後何十年の間に悪化するというパタンもありますし、地方ではまだ健診態勢が不十分なため見逃されることもあり、決して油断してはならない病気です。

患者さんは40代半ばの女性です。沖縄から来て下さいました。

若いころにリウマチ熱の既往があります。

来院時は階段2階までは登れるもののそれ以上では息切れがしました。ときに下肢がむくむとのこと。

夜枕が低いときに息苦しくなり座ると楽になる、いわゆる起座呼吸が見られました。

心エコー図にて高度の僧帽弁閉鎖不全症と中等度の僧帽弁狭窄症がみとめられました。

僧帽弁は拡張期にドーム状の形を呈して開放制限があり、リウマチ性弁膜症の所見でした。

まだお若いご年齢からぜひ僧帽弁置換術ではなく 図1交連切開僧帽弁形成術を受けたいと希望して米田正始の外来へ来られました。

手術ではまず僧帽弁のヒンジの部分が癒合していて開かなくなっていたため、交連切開しました。右写真はその作業中のものです。

図2交連切開後これで少し開きやすくなりました。

しかし後尖が硬くてあまり動きません(左写真)。弁として機能しないため、ここへ自己心膜パッチで十分なサイズになるように形成しました(右下写真)。

さらに後尖を支え 図5自己心膜でPML拡大る腱索という糸のような組織が硬く短くなっていたため、これらを切除しました。

後尖はかなり動くようになりましたので、

ここで弁形成用のリングを縫い付けました(左下写真)。

図⒏仕上がり逆流試験をしますと、後尖の起き上がりがまだ不足しているため、硬い弁下組織をさらに切除し、徹底して弁機能を回復するようにしました。

その結果、後尖がきれいに起きて弁が正常に作動するようになりました。

ピオクタニン 図9インク試験で良い結果色素をもちいたインクテストでも僧帽弁は十分なかみ合わせを持つことが示されました(右写真)。

術後経過は順調で術後10日目に元気に退院されました。

その後沖縄にて仕事を含めて普通に生活をしておられましたが、一度、感染性心内膜炎にかかられ、近くの病院で薬による治療を受け、全快されました。

術後1年経った外来でのエコー結果は良好でした。ごく軽い僧帽弁閉鎖不全症と同じく軽い狭窄症を認めますが、問題ない程度で、心機能も良好で左房の拡張も軽快していました。元気に暮らしておられます。

感染性心内膜炎は虫歯やけがなどでばい菌が体内に入ると起こることがあり、人工弁の場合はかなり治りにくいのですが、弁形成のあとなら人工弁の場合よりはかなり治しやすいことが知られています。

こうした意味でも弁形成ができて良かったと言えましょう。もちろんワーファリンは無しで行けますし。しかし今後のために感染の徹底予防策をさらにお話しし、安全を確保するようにしています。

学生時代に沖縄県立中部病院や沖縄徳洲会病院などで実習させていただき、沖縄好きの私としてはこうした形ででもお役に立ててうれしく思っています。

 

リウマチ性僧帽弁閉鎖不全症のページにもどる

Heart_dRR
お問い合わせはこちら


患者さんからのお便りのトップページにもどる

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

手術事例: 虚血性心筋症に心室中隔穿孔(VSP)を合併した80代男性

Pocket

心筋梗塞後の心室中隔穿孔(略称VSP)は緊急手術を要する、きわめて重い病気です。

多くの場合、心臓手術しなければ、あるいはそのタイミングが遅れれば患者さんは死にいたります。何とかそれを避けねばなりません。

そこで私たちは患者さんが来院されると同時に、心臓と全身を守る治療を開始し、それと並行して素早く確定診断をつけて緊急手術へと進みます。

かつては比較的元気な左室に急性心筋梗塞が起こり、つづいて心室中隔穿孔が合併して緊急手術になった方が多かったのですが、最近はすでにうんと悪化した心臓に合併するというケースがみられるようになりました。まさに絶対絶命の状況です。

こうした患者さんをお助けすることに力をいれています。

患者さんは84歳男性です。

胸痛のため当院へ来院されました。

来院時、心エコーにて駆出率19%(正常は60%台ですから、19%は心移植に近いレベルです)と左室機能の極度の低下を認め、心尖部に瘤つまりこぶのような広がりがあり、以前に心筋梗塞を患われた跡がみられました。

つまり梗塞で左室の一部が死んでしまい、それが圧に負けて次第にこぶのように大きくなってしまったわけです。左室全体のちからも落ちて、いわゆる虚血性心筋症という重症の状態です。

 

血圧が十分にはでないショック状態のため、集中治療室ICUで強心剤の点滴を受けつつ、カテーテル検査に臨みました。

その結果、左冠動脈前下降枝が100%閉塞し、回旋枝も90%狭窄となっていました。そこでこれらの枝にカテーテル治療PCIでステントを留置し、改善を見ました。循環器内科の先生方のご努力に感謝です。

 

ところがその3日後、突然状態が悪化し、心エコーにて心室中隔穿孔が認められました。つまり心室中隔に穴が開いたわけです。

その穴を通って左室の血液が右室へと流れ込み、心不全と肺の強いうっ血が起こり危険な状態でした。

そこでただちにIABPという心臓補助のバルン(ふうせん)で状態を維持しつつ、まもなく緊急手術へと進みました。

 

図1左室切開後体外循環(人工の心肺です)・心拍動下に観察しますと左室前壁は心尖部から左室基部側2/3まで広い範囲にやられて薄くなっていました。

これを切開して左心室の中に入りました。

すでに壊れたところを切るため、心臓や患者さんへの影響はありません。


左室内を観察しますと、心室中隔と左室前壁が広い範囲にわたって薄くなり、その根っこがわ近くに直径6mmの穴が開いており(これが心室中隔穿孔VSPです)、その周辺部組織も死んでいました。

右上図の矢印がVSPです。周囲の心筋が壊死してぐちゃぐちゃになっているため、良く見ないと分かりにくいものです。

そこでまずこのVSPをプレジェット付き糸で直接閉鎖しました。

 

左室の瘤化した図2 4分割Fontan糸部分を形成しないと術後心機能が危険なレベルのため、私たちが考案した一方向性Dor手術を行うことにしました。

この方法では左室の洋ナシ型形態を保ちつつ、必要な左室縮小ができるからです。

神が創られた形に戻す、これがいちばん自然で良い結果が期待できるのです。

左室の中で、心筋梗塞・瘢痕部と正常部の境目に 図3 4分割Fontan糸完成後糸をかけ、おもに横方向にこの糸を引き、縫縮しました。

上図はその糸をかけているところです。

これできれいな形を取り戻すことができました。

右図はその糸をかけてくくった後の姿です。

上図とくらべて左室が細長い、自然な形にもどっているのが見えるでしょうか。

自然な形こそパワーを出しやすくする秘訣なのです。これはその後のいくつもの研究で証明されています。

図4パッチ縫着後そのうえで大きめのパッチを縫着し、パッチが良く膨らむようにしました。

これにより適正な左室容積が保てると判断したためです


左図はパッチをつけた後の姿をしめします。この時点ではまだわずかな圧しかかかっていませんが、すでにきれいに膨らみ、新しい左室の姿の一部を示しています。

体外循環を比較的少ない強心剤で無事離脱しました。

経食エコーでもVSPシャントつまり血液の漏れは消失していました。左室も適正な形と容積になり、動きも改善しました。

薬剤溶出ステントのための抗血小板剤プラビックスが3日前まで入っていたため、入念に止血を行いました。

術後経過は順調で、血行動態は改善し肺動脈圧も術前の50台から30台へ改善し、尿量も十分で術当夜には覚醒されたため抜管し、翌朝、一般病棟へ退室されました。

その後も経過が良く、術後2週間で元気に退院されました。

心臓手術から5年の時間が経ちます。すでに89歳におなりですがお元気に外来に定期健診に来られます。駆出率も38%にまで改善しておられます。

ご高齢だからといって、あるいは重症だからといって、内容を吟味せずに諦めるのは間違いと私は考えています。患者さんを比較的高い確率で救命でき、かつその後は楽しく暮らせる見込みが高ければ、頑張るべきと思います。

 

天皇陛下の冠動脈バイパス手術のあとで執刀医の天野先生が言われたのは、陛下がお元気で公務に復帰された時点で手術成功と言える、でした。このVSP患者さんの場合も同様で、本来の元気で楽しめる生活に戻ったところで成功だったと言えると思います。そしてその成功が5年以上維持できたとなれば、これは患者さんにとって極めて良い心臓手術になりましたと言っても支障ないと思います。

 

患者さんやご家族の頑張りに敬意を表するとともに、今後もお身体を大切に永く楽しく生きて頂きたく思います。

Heart_dRR
お問い合わせはこちら

患者さんからのお便りのトップページにもどる

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

事例:石灰化僧帽弁(MAC)と虚血性心筋症に僧帽弁置換を行った患者さん

Pocket

慢性腎不全・血液透析の患者さんには独特な注意とケアが大切です。

冠動脈はじめ全身の動脈に硬化がおこり、血管が詰まったり狭くなったりします。

また僧帽弁や大動脈弁も壊れやすくなります。

とくにMACと呼ばれる僧帽弁輪への石灰沈着は高度になると手術の障壁になりかねません。弁形成や弁置換しようにも針が石灰を通らなくなるからです。

しかし現代はこのMACにも対策があり、治せる病気になりました。

患者さんは56歳男性です。

19年前に慢性腎炎による腎不全のため血液透析を導入されています。

以前から僧帽弁閉鎖不全症大動脈弁狭窄症が見られていますが心電図で左脚ブロックが次第に強くなるため当院内科へ来られました。

00040121_20091111_CR_1_1_1内科にて精査の結果、冠動脈左前下降枝と右冠動脈に狭窄がみつかり、それぞれロータブレーターと薬剤ステントDESをもちいたカテーテル治療PCIにて軽快しました。3か月後の検査で左前下降枝は再狭窄していたためここにも薬剤ステントを入れられました。

その半年後に僧帽弁閉鎖不全症のため心不全がコントロールできなくなり、心臓外科に紹介されました。

右図はそのときの胸部X線写真です。

00040121_20091006_US_1_16_13b僧帽弁には僧帽弁輪石灰化MACがあり、肺高血圧症PHもある、虚血性心筋症・心不全(駆出率27%と正常の半分以下)ともいえる状態でした。(左図)

PCI後に時々起こる心筋症です。

胸骨正中切開・心膜切開で心臓にアプローチしました。心臓は拡張著明でした。
体外循環・大動脈遮断下に左房を右側切開しました。

僧帽弁は後尖のP2(後尖の中ほど部分です)弁輪に石灰化著明で、P1(後尖の前交連側)とP3(後尖の後交連側)にも石灰化は及んでいました。また前尖A1(前尖の前交連側)とAC(前交連部)にも石灰は強くありました。

後尖腱索の大半を切除し後尖を反転させてこれらの石灰化を左室筋肉に傷をつけないよう注意しながら摘除しました。

最初はロンジュールという道具で石灰を砕いてはずし、以後は超音波破砕器CUSA(キューサ)で石灰化を乳状化して溶かすように切除し心筋にまで影響が及ばないようにしました。

後尖と後尖弁輪が石灰摘除のためやや弱くなったため、前尖を弁輪から5mmのところで切断しこれを左右に二分して後尖側へ再固定し、後尖縫合部の補強と心機能の改善・左室破裂の予防を図りました。

その上でSJM機械弁27mmを縫着しました。

この患者さんの体格からは十分なサイズで、かつ拡張した左室の基部をある程度縮小し心機能を改善する効果も多少は期待できるサイズです。

石灰摘除部でも人工弁がきれいに乗っていることを確認し、念のため逆流試験にて縫合部や弁の開閉に問題がないことを確認しました。左房を2層に閉じて87分で大動脈遮断を解除しました。

00040121_20091124_US_1_18_18b体外循環を離脱しました。術前心機能の弱い患者さんでしたが離脱はカテコラミンなしで容易でした。入念な止血ののち、手術を終えました。
経食エコーにて良好な弁の縫着と機能を確認しました(右図)。

術後経過は順調で、血行動態安定し出血も少なく、術翌朝抜管し透析を行っています。

透析と心不全のため時間をかけて回復を促し、手術後1か月半で元気に退院されました。

00040121_20130115_CR_1_1_1手術から3年あまりが経過し、外来へ定期健診にこられます。

左室駆出率も術直後の11%から27%まで回復し、まずまずお元気です。

今後も健康管理をしっかりし、お元気で暮らして頂きたく思います。

Heart_dRR
お問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

心臓弁膜症のトップページへ戻る

僧帽弁膜症の関連リンク

原因 

閉鎖不全症 

狭窄症

◆  機能性僧帽弁閉鎖不全症

弁形成術

◆ リング


虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対するもの

腱索転位術(トランスロケーション法)

両弁尖形成法(Bileaflet Optimization)

乳頭筋最適化手術(Papillary Head Optimization PHO)

 

④ 弁置換術

◆ ミックス手術(ポートアクセス法)によるもの  


⑤ 人工弁

    ◆ 機械弁

生体弁 

       ◆ ステントレス僧帽弁: ブログ記事で紹介

心房細動

メイズ手術

心房縮小メイズ手術

心房縮小メ イズ手術 


Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

事例: 肝臓がん術後の大動脈弁狭窄症

Pocket

大動脈弁狭窄症は年齢とともに増加する疾患で、なかでも80歳を超えると急増します。

患者さんは77歳男性で、肝臓がんのため東京の大手大学病院で手術治療を受け、安定したのもつかの間、今度は大動脈弁狭窄症が発生し、運動時に息切れがしたり動悸が起こるようになり、米田正始の外来へ来られました。

持病として気管支拡張症も合併していましたので対策を立てて進みました。

適応のため心臓手術を行いました。

全身麻酔下に

川瀬 A弁b胸骨正中切開、心膜切開で心臓にアプローチしました。

体外循環・大動脈遮断下に上行大動脈を横切開しました。

大動脈弁は3尖で右冠尖RCCと無冠尖NCCがやや小さい形でした(写真右)。

これほど硬くなりますと、弁尖の先端、つまり弁の中央部がボールペンの先ほどしか開かなくなります。

川瀬 切除A弁b肥厚・硬化・石灰化は著明でした。

弁尖と石灰を摘除しました(写真左)。

ウシ生体弁19mm(通常の生体弁の23mm相当)を縫着しました。

右下がその挿入中の写真です川瀬 マグナ弁が入るところ

生体弁の弁尖(弁のひらひら動く部分)とくにその先端を触らないように注意しています。

体外循環をカテコラミ ン(強心剤)なしで容易に離脱しました。

左下写真は生体弁が入ったところ、大動脈弁置換術の仕上がり状態です。

写真の川瀬 AVR完成生体弁のつのの部分まで弁尖は開きます。手術前よりはるかに大きく開くことがわかります。

経食エコーに良好な人工弁と心機能を確認しました。
C型肝炎のためもあってか、出血傾向が認められたため、入念な止血ののち手術を行いました。

術後経過はおおむね順調で、血行動態良好で、当初あった出血傾向も次第に軽快しました。

手術翌朝抜管し、一般病室へもどられました。

術前に紹介医の内科先生のお力添えで、気管支拡張症も落ち着きCRP(ばい菌などの指標です)も陰性化し、安全な手術に役立ちました。

術後経過はおおむね良好でしたが、肝臓がんの術後ということもあり、少し時間をかけて回復をはかり、手術後3週間で元気に退院されました。

こうしたがんと心臓病の組み合わせの治療は、今後の展開としてはこの患者さんのように心臓手術を行ったり、カテーテル弁(略称TAVIまたはTAVR)を適宜使い分けて、より効果的かつ安全に行えるようになるでしょう。

ともあれ、あれから4年が経ち、今も外来でお元気なお顔を見せて下さいます。

肝臓のほうも落ち着いており、うれしいことです。

私たちを信頼し、ともに頑張って下さったこと、患者さんというより盟友のような気がします。

大動脈弁狭窄症のページにもどる

大動脈弁置換術のページにもどる

Heart_dRR
お問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。

事例:大動脈弁狭窄症とHOCMのご高齢女性

Pocket

高齢化社会を迎えて大動脈弁狭窄症は増加の一途にあります。今や最も多い弁膜症のひとつです。

その中に弁のすぐ下の筋肉、心室中隔の筋肉が異常に張り出してもうひとつの狭窄を造るタイプ、HOCMまたはIHSSの合併例がときどきあります。

左室がより駆出しづらく、より心不全になりがちです。

患者さんは81歳女性です。

最近労作時の息切れがひどくなり、近くの病院で大動脈弁狭窄症の診断を受けられました。

息切れが強く、20m以上は歩けないとのことです。脊椎の変形が強く、いわゆる猫背です。(右図)00029421_20090311_CR_2_1_1

最初お会いしたときにはホントにこの体で心臓手術ができるのかしらと思ったほどでした。

精査の血管、大動脈弁狭窄症ASは圧格差が 130mmHgもあり、平均圧較差も74mmHg、弁口面積0.56㎝2、最高流速5.64m/sと、突然死してもそうおかしくない重篤な状態でした。

しかも閉塞性肥大型心筋症HOCM、上行大動脈石灰化、が併せて見られました。

脊椎の変形が著明でしたので、まえもって仰臥位が安全に成り立つことを確認しておきました。

図1胸骨正中切開、心膜切開で心臓にアプローチしました。上行大動脈の遠位部がもっとも硬化が少ないためここを遮断部位といたしました。
体外循環・大動脈遮断下に上行大動脈を横切開しました。

大動脈弁は3尖で左冠尖のみがかろうじて可動性があり、他は岩石のように固定していました(写真左)。

写真 図2右は切除弁尖です。石灰化も著明で弁尖から弁輪を超えて大動脈壁にまで進展していました。

また無冠尖と右冠尖のバルサルバ洞にも幅広い石灰化がありました。

まず弁を切除し、石灰化を摘除しました。

図3人工弁のサイザーを入れようとしましたが上記の上行大動脈石灰化のため入らず、石灰部を摘除するため上行大動脈の内膜切除を上記の2か所とも行い(写真左、セッシで把持した板状のものが石灰です)、ようやくサイザーが上行大動脈を通過しました。
 

図6ウシ心膜弁19mmがぴったりで入りました(写真右)。

市販の生体弁で最小サイズですが、この患者さんの体格からは十分なサイズであることを確認しました。

人工弁の縫着に先立って、左室流出路を検索しますと、異常心筋が突出していました。

図5術後左室が小さくなる状態が発生する時に左室流出路の狭窄が顕著になることを回避するため、大動脈越しに心筋片を必要最小限切除しました(写真左)。

体外循環離脱はカテコラミン無しで容易に行えました(写真右 図7)。

経食エコーにて大動脈弁(人工弁)と左室の機能良好、そして僧帽弁閉鎖不全が軽微であることを確認しました。

左室流出路も十分な広さが確認できました。入念な止血ののち手術を終えました。

術後経過は順調で、血行動態良好で出血も少なく、神経学的異常もなく、背中の皮膚も健常で、術翌朝抜管しました。

術後経過良好で、手術後10日で元気に退院されました。

その後2年が経過し、お元気に暮らしておられます。毎日喫茶店へ行くのが楽しみとのことです。

最近すこし物忘れが見られるようになり、認知症対策をかかりつけの先生と進めています。

大動脈弁狭窄症のページにもどる

大動脈弁置換術のページにもどる

Heart_dRR
お問い合わせはこちら

pen

患者さんからのお便りのページへ

 

 

僧帽弁膜症のリンク

原因 

◆  HOCM(IHSS)にともなう僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁形成術

◆ リング

④ 僧帽弁置換術

⑤ 人工弁

    ◆ 機械弁

生体弁 

.

Pocket

----------------------------------------------------------------------
執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
----------------------------------------------------------------------
当サイトはリンクフリーです。ご自由にお張り下さい。