メタボリック症候群の患者さんたちと接していますと、そのお話の中に太る理由、やせにくい理由が見え、患者さんの指導に役立つだけでなく、自分自身や他の患者さんにも役立ちます。
その一部をご紹介します。
事例1: 私は毎朝健康食を食べているのに太ります!
朝食の内容はパン2枚、バナナ、ヨーグルト、フルーツ、タマゴでした。
一見ヘルシーな内容ですが、パン2枚とバナナはどちらも炭水化物で太る内容がダブっています。どちらかにすべきです。パンなら1枚が良いでしょう。
ヨーグルトも聞くと砂糖入りでした。これはダメです。
フルーツは、その内容にもよりますが、太るものも多いです。とくに夏のフルーツたとえばスイカ、桃、ブドウなどは糖分たっぷりで太ります。つまり
フルーツよりも野菜を食べるのです。野菜+糖分=フルーツ ですから。
タマゴそのものは太らないのですが、多量の炭水化物(パンとバナナ)と一緒に食べると太ります
事例2: 私は徹底して炭水化物を減らしてるのに、痩せません
いろいろ聞いてもまあしっかり炭 水化物を減らしておられます。
うーむ、どこかに潜む炭水化物があるのだろう、と思っていました。
ふと、はちみつはおいしいですね!と言ったところ、そうなんです、毎日はちみつをたっぷり食べています!と返ってきました。
これが原因のひとつだったようです。はちみつは美容に良い成分も入っているかも知れませんが、その多くは砂糖です。太らないはずがないものです。
事例3: 炭水化物を減らすと痩せるそうなので、私は脂肪も減らしてうんと痩せようとしたのですが、かえって太りました!
というのは炭水化物を減らした上に、脂肪も減らすとどうなるか
どこからもエネルギーが入らなくなり、お腹が空きます
空腹感に悩まされ、いらいらして周囲に八つ当たりしたり、さらに進めば、夜中などに台所をごそごそ動き回っては食べ物を探すことになります。
そして見つけたおせんべいやアイスクリーム、あんころ餅その他を夜中に食べて、ますます太るのです
脂肪さえ増やせばこうはならなかったはずです
事例4: 私はパンが大好きで、どうにもなりません。パンが食べられないのなら、糖質制限食はやりたくありません。
良い方法があります。ふすまパンなら、まあまあ美味しくて、かつ炭水化物がほとんど入っていないため、太りません。ちょっと割高ですが、メタボになるよりは良いと思います。
通信販売、ネット販売でも入手できます。私のお勧めは「楽園フーズ」です。力作の太らないパンやケーキがいろいろあります。
事例5: 私は便がたくさんでないと気分が悪いのです。糖質制限食をやると便が減るのでやる気になれません。
これは重要点をついた良いコメントです。
実際、糖質制限食で便は減り気味になります。というのは炭水化物とは糖質+繊維分(ファイバー)であり、繊維分が減れば便も減るからです。
そこで糖質制限食をやるときには、ちょっと多いなと思うほどに野菜を食べるのです。海草なども良いでしょう。そうして便の量を増やすと理想的な糖質制限食に一歩近づきます。
事例6: 私は仕事柄、外食することが多いのでなかなかダイエットできません。
なんだかお気持ちは わかるのですが、外食でもかなりの程度まで糖質制限食はできます。ようするに定食のうち、ごはん(お米)を食べずに、油や野菜やたんぱくの多いおかずを一品加えれば良いのです。あるいはご飯を食べずに、あとでナッツを食べておけば良いのです。
私は病院の職員食堂でお昼でダイエットするときは、ご飯をもらいません。そのままでは少し空腹感がでるので、サラダにマヨネーズをおおめにかけて食べます。これでダイエットが進み、満腹感もまあまあ得られます。
少し気になるのが、ダイエットができない原因を仕事や外食のせいにして、努力から逃げているように見えることです。こんなに簡単にできることをなぜしないのか、と考えると、結局は「ダイエットする意思がない」と思えるのです。
まあそういう場合はあえて無理をせず、患者さんがその気になられるのを待つようにしています。
事例7: 私は仕事の都合上、夕食が遅いのでダイエットができません。
遅い夕食は確かに、できる範囲でなるべく早くするのが理想です。
しかし理想ばかり論じても現実がそれを許してくれないのであれば、遅い夕食の範囲内で工夫する必要があります。
ローカーボダイエットは、こうした遅い夕食にもうってつけの方法です。ローカーボでしっかり食べて、バタン+グーでも太らないのです。
ただし胃が満タンになった状態で寝ることの問題、たとえば逆流性食道炎とか慢性胃炎その他のトラブルが次第に起こるかも知れません。それは遅い食事そのものの問題であって、ローカーボの問題ではないのですが、ともあれ、健康を守るという視点からは、少しでも早い夕食をお願いします。
事例8: おそばなら太らないと聞いたのでおそばを食べていたら、いくらそれ以外はローカーボのメニューでも痩せられません
これもよくある誤解です。おそばが太らないというのはご飯やうどんと比べてすこしマシというだけの話で、食べないよりは食べた分だけ太ります。
これはローカーボダイエットでステーキや焼き肉、ハンバーガーなどを食べても太らないのと意味が違います。
おそばで太るのははちみつで太るのと同じ意味合いです。
事例9: 麦飯は太らないはずなので食べてますが、それ以外はローカーボしてるのに痩せられません
これもおそばと同じ意味合いです。
麦飯は素晴らしい食品です。しかしそれは白米と比べての意味であり、何も食べないよりは麦飯は太ります。
麦飯を食べるなら、一日1回、白米を食べるときに、その代わりに食べる、これなら良いたべものとして威力が発揮されるでしょう。
事例10: 健康のため毎朝市販 の野菜ジュースを飲んでいます。ダイエットしても痩せません。
野菜ジュースはたとえお砂糖を添加していなくても糖分が多量に含まれるものが多いのです。中に含まれる人参その他の影響のようです。
そもそも野菜の中で大切なのは繊維分、ファイバーです。ジュースではこの多くが失われます。また濃縮果汁還元などの場合は壊れやすいビタミンも激減し、これまた野菜とはちがうのです。自然に行きましょう。それがベストでは? (右図はオレンジジュースですが、野菜ジュース同様、ダイエットにはやや要注意です)
事例11:和食は健康に良いと聞いたので食事は和食、お菓子は和菓子にしていますが、太って困りま す
和食も和菓子も炭水化物は多いのです。洋食や中華と比べるとはっきりします。
しかし和食は太らないという方もおられます。たとえば和食の割烹の店の方などですね。確かに和食は量が少なく、トータルのカロリーが少ないこともあり、その場合はそれほど太りませんが、盲点がありそれに陥ると太ります。
その一方、洋食や中華では脂っこいものは多いですが、パンやごはん、麺類を食べなければ理想的なローカーボ食となり太りません。極端な例では、ビーフステーキにフォアグラを乗せてたっぷりな野菜とともに食べても炭水化物を抜くなら太らないのです。コレステロールなども下がります。この意味がわかると痩せるのには苦労しなくなります。
事例12: 朝食はトーストとコーヒーだけにしているのですが、、、痩せられません。
朝食に もローカーボ(糖質制限食)をやる場合、それではだめですね
フルコースの朝食からトーストを抜いて食べると、お腹も膨れてしかもやせられてばっちりですよ。
つまりサラダ、卵、ハムかベーコン、砂糖抜きのヨーグルトとコーヒーですね。
ちなみにもしよろしければコーヒーより紅茶のほうが食欲増進しないので有利です。
事例13: 私は夕食時にご飯を1ぜんだけにしていますが痩せません。
夕食時にご飯1ぜんだけというのはそう悪くありません。どちらかと言えば痩せやすいかも知れません。
しかしここでいちおう糖質制限だからといってお肉やハム、魚その他をしっかり食べたのでは太る恐れが大なのです。
というのはわずかなご飯のため膵臓からインシュリンが出ると、お肉などの油分がしっかり吸収されて体の中に蓄積するからです。
ご飯1ぜんは悪くない、しかしそのためにお肉その他が悪さをする、というわけです。
この場合の解決法は、ご飯をゼロにするか、お肉や脂っこいものをうんと減らすかでしょう。
うまく頭を切り替えてご飯を食べる場合と食べない場合のメニューを工夫しましょう。
(以下つづく)
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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