【第五十二号】科学的ダイエットの本を出しました

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 【第五十二号】
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           発行:心臓外科手術情報WEB
           http://www.masashikomeda.com
           編集・執筆:米田正始
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すっかり寒い季節になりましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか。

郷里の奈良に「かんさいハートセンター」を立ち上げて1か月半が経ちました

が、お陰さまで大変忙しくさせて頂いております。関東、九州、沖縄はじめ遠

方からも、近郊からも患者さんがお越しくださり、ひとつでも二つでも多くお

役に立ちたいと頑張っています。

高の原中央病院かんさいハートセンターのご案内はこちらです
https://www.shinzougekashujutsu.com/web/2013/08/khcopen.html

この件はちかぢかのメールマガジンでご報告させて戴きます。

今日のお話しは、待望の科学的ダイエットの本をようやく出版いたしました、

そのご案内です。

「正しく知る、糖質制限食」
~科学でひも解くゆるやかな糖質制限~

NPO法人日本ローカーボ食研究会 
技術評論社 刊

以前からローカーボダイエットつまり糖質制限食を自分の趣味として、さらに

心臓手術後の患者さんの健康増進のために勉強して参りました。

とくに心臓手術の患者さんについては、手術後に心臓が良くなると、ご飯がお

いしい、体調が良くなったということでふっくらとなる方が少なくありません

。それ自体はうれしいことなのですが、そのままにしておくと、メタボになり

かねません。そこで心臓が良くなったのを受けて、食生活や運動などもリセッ

トしましょうという啓蒙活動をしているわけです。

とくに食事は大切です。というのは人間のからだは省エネ設計になっており、

多少運動してもそれだけで痩せることは難しく、やはりダイエットとセットで

行ってこそ効果があるからです。

さらに、これまでのダイエットはどうしてもお腹が空く、つまり根性に支えら

れる傾向が強く、結局長続きしませんでした。

何事も、楽しく面白くやれることが大切と思っています。

そこでこのローカーボダイエット、糖質制限食なのです。

ただしすでに同様のタイトルの本は多数世に出ています。一種のブームになっ

ているのです。ところがそのほとんどが非科学的、民間療法的で、そこに書か

れた内容をそのまま実行したらがんや動脈硬化つまり脳卒中や心臓病さえ増え

る懸念があるのです。

それではせっかくの糖質制限食が消えてしまうため、私たち臨床経験の豊富な

医師が集まってNPO法人日本ローカーボ食研究会を立ち上げ、その事業の一

つとして上記の本を企画したのです。

そのご案内は次のページをご参照ください。
https://www.shinzougekashujutsu.com/web/2013/11/cardtextbook.html

私のHPのメディアのページにもその概説が載せてあります
https://www.shinzougekashujutsu.com/web/2008/01/post-0f92.html

じっさいこの糖質制限食のおかげで、心臓手術を受けられない状態の患者さん

の状態が良くなり、それからゆうゆうと手術を受けて元気になられたという方

がすでに10名を超えています。この本ではそうしたケースも一部ご紹介して

います。

これらをご参照のうえ、健康生活を楽しんで頂ければと思います。

判りにくい点や込み入ったご質問などは私(一般内科外来は米田医院でやって

おります)や名古屋エリアでは灰本先生、安井先生、小早川先生、中村先生は

じめ著者の先生方の外来で聞かれるのも一法かと思います。

民間療法ではなく、健康管理のひとつとして行うのが理想的ですので、医療と

いいますか、ある意味、予防医療としてきちんと行うと安全安心で効果も大き

いからです。

ともあれ皆さんの御意見を楽しみにしております。

蛇足で恐縮ですが、インフルエンザワクチンがそろそろ役立つ季節になりまし

た。多少のお金がかかるのが弱点ですが、それをはるかに上回るメリットがあ

ると思います。とくに心臓病や糖尿病、肺疾患、がんその他をおもちの方々に

は命を救う結果になるほどの効果があります。

その記事はこちらにあります
https://www.shinzougekashujutsu.com/web/2008/11/post-b85d.html

ぜひご検討下さい

それではみなさん、お元気にお過ごしください。

敬具

平成25年11月20日

米田正始 拝

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Copyright (c) 2009 心臓外科手術情報WEB
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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正しく知る糖質制限食 ――医学書として通用する初めてのダイエット本

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これまで糖質制限食(別名ローカーボダイエット)の本は多数出版されて来ました。

 

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心臓手術のあと体調が良すぎて?メタボになる患者さんがおられるため、科学的ダイエットに関心を持つようになりました

いずれも持ち味があり、ひとりの読者として勉強させて戴き感謝しています。

5年ほど前に春日井の開業医、灰本元先生と親しくなってから私もこの糖質制限食に強い関心をもつようになり、勉強を始めました。

というのは心臓病の患者さんは心臓手術のあと、心不全が取れて元気になられ、食欲も出て次第に太り、メタボになる方が少なくないため、単に心臓手術しただけでは患者さんたちのお役に十分は立てていないのではないかと考えていたからです。

しかし勉強会・研究会を灰本先生をはじめとした内科医、その他医師、薬剤師、管理栄養士、看護師、研究者などの方々とやっているうちに、糖質制限食にも限界や弱点があることを次第に知るようになりました。

なかでもハーバード大学のチームが10万人の被験者を10年間フォローして成し遂げた空前絶後の臨床研究で、やりすぎの糖質制限食は寿命を縮めることを示された論文はショックでした。

さらにWHOなどの研究でも、BMIが23前後の、やや小太りの方の寿命がもっとも長いこと、つまり痩せすぎるとかえって短命になることや、糖尿病のコントロールもHbA1cで7.5が一番長生きと言う研究も同じ意味で衝撃的でした。

そこから学んだことは炭水化物は摂り過ぎてもダメだが、不足しても有害であるということです。

よくよく考えてみれば、炭水化物は糖質+ファイバー(繊維分)であり、からだにきわめて重要なファイバーの宝庫であることや、炭水化物イコール植物性であり、人間の体にとって基本的に重要で安全な側面をもつことから、炭水化物を悪とするのは不適切と考えるようになりました。

ある意味、糖質制限食の素晴らしさを学ぶ中から、炭水化物の大切さも知ってしまったと言えましょう。

こうした経緯の中から、世の中の糖質制限食をより科学的に、より安全なものにしそれを全国に発信することで、これまでの糖質制限食の先駆者のお仕事がより生きることになるだろうと教科書を創ることになりました。NPO法人日本ローカーボ食研究会の皆さんがちからを合わせて執筆完成したのが本書です。

Cover4-2内容はつぎのとおりです。

序章 糖質制限食(ローカーボ)の背景にあること

第1章 まず糖質制限食(ローカーボ)を理解しよう

第2章 糖尿病をコントロールするために


第3章 糖質制限食(ローカーボ)と肥満、脂質異常症


第4章 病状に応じて糖質制限食(ローカーボ)を使い分ける


第5章 糖質制限食(ローカーボ)の実施と表で覚える糖質量


第6章 糖質制限食(ローカーボ)の課題と展望


補遺 生命進化から見た糖質代謝の意義とポイント


巻末付録 食品別・献立別の糖質量/糖質を多く含む注意すべき食品


この本の末尾に引用科学文献が多数掲載されています。いかに科学データにもとづいてこの本が書かれたかを知って頂ければ幸いです。上記のハーバード大学での偉大な研究論文も含まれますし、灰本先生の日本発データの論文もあります。

科学的・医学的であること、これが本書の最大の特長なのです。

医師が執筆した第1-4章、第6章はメタボ関係の生活習慣病を治すという観点から書かれた力作ですが、管理栄養士が執筆した第5章はおかずという視点から親しみやすく、実用的な内容になっています。執筆された医師はみな経験豊富な臨床医で、しかも学術論文も十分に勉強されている熱心な方々ぞろいです。あえて申し上げればこの中では私が一番不勉強でしょうか!

巻末付録の糖質量のリストは意外なほど役にたちます。たとえばサーロインステーキがほとんど糖質を含まないこと、つまりうまく食べればほとんど太らないことや、同じ牛肉でも牛丼はサーロインステーキの100倍も糖質を含んでおり、太りたいひとにはぴったりの食べ物であることなどもわかります。

読者がご自身のお好きなメニューが太りやすいものかそうでないかを見極めるのに役立つことでしょう。

お酒の飲み方、どんなお酒がダイエットに良くどんな銘柄が悪いかというユニークな解説もあります。また生命進化という学問的な視点から考えた極めてアカデミックなコーナーもあります。

蛇足ですが私が執筆させて戴いたコラムは、糖質制限食を心臓手術に活用することで、これまで手術できないと言われていた患者さんでもできるようになった事例をいくつかご紹介しています。つまり医療のなかで、これまでになかった治療法としてダイエットをとらえているつもりです。

製薬会社の方々のなかにはこのダイエットによって薬の売り上げが減ることを心配しておられる方も多いようですが、正しいダイエットによって患者さんが健康を回復し長生きされれば、ご高齢者のことですから長期間の間には別の観点から薬が必要となることもあり、結局患者さんがハッピーに楽しく永く暮らせることが製薬会社にとってもメリットがあるのです。物事は長期的に見て頂きたく思います。

この書が日本の正しく健全な糖質制限食の発展に役立ち、ひいては心臓病を含めた生活習慣病の安全確実な克服に結びつくことを信じてこのご紹介文を閉じたく思います。

 

平成25年11月

高の原中央病院かんさいハートセンター

米田正始 拝

 

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
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元・京都大学医学部教授
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患者さんから学ぶ糖質制限食の盲点

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メタボリック症候群の患者さんたちと接していますと、そのお話の中に太る理由、やせにくい理由が見え、患者さんの指導に役立つだけでなく、自分自身や他の患者さんにも役立ちます。

その一部をご紹介します。

事例1: 私は毎朝健康食を食べているのに太ります!

Ilm18_bc02009-s朝食の内容はパン2枚、バナナ、ヨーグルト、フルーツ、タマゴでした。

一見ヘルシーな内容ですが、パン2枚とバナナはどちらも炭水化物で太る内容がダブっています。どちらかにすべきです。パンなら1枚が良いでしょう。

ヨーグルトも聞くと砂糖入りでした。これはダメです。

フルーツは、その内容にもよりますが、太るものも多いです。とくに夏のフルーツたとえばスイカ、桃、ブドウなどは糖分たっぷりで太ります。つまり

フルーツよりも野菜を食べるのです。野菜+糖分=フルーツ ですから。

タマゴそのものは太らないのですが、多量の炭水化物(パンとバナナ)と一緒に食べると太ります

事例2: 私は徹底して炭水化物を減らしてるのに、痩せません

いろいろ聞いてもまあしっかり炭 A304_022水化物を減らしておられます。

うーむ、どこかに潜む炭水化物があるのだろう、と思っていました。

ふと、はちみつはおいしいですね!と言ったところ、そうなんです、毎日はちみつをたっぷり食べています!と返ってきました。

これが原因のひとつだったようです。はちみつは美容に良い成分も入っているかも知れませんが、その多くは砂糖です。太らないはずがないものです。

事例3: 炭水化物を減らすと痩せるそうなので、私は脂肪も減らしてうんと痩せようとしたのですが、かえって太りました!

Egg_yudetamago_hanjukuお気持ちはわかりますが、それはダメ法です。

というのは炭水化物を減らした上に、脂肪も減らすとどうなるか

どこからもエネルギーが入らなくなり、お腹が空きます

空腹感に悩まされ、いらいらして周囲に八つ当たりしたり、さらに進めば、夜中などに台所をごそごそ動き回っては食べ物を探すことになります。

そして見つけたおせんべいやアイスクリーム、あんころ餅その他を夜中に食べて、ますます太るのです

脂肪さえ増やせばこうはならなかったはずです

Cooking_toaster事例4: 私はパンが大好きで、どうにもなりません。パンが食べられないのなら、糖質制限食はやりたくありません。

良い方法があります。ふすまパンなら、まあまあ美味しくて、かつ炭水化物がほとんど入っていないため、太りません。ちょっと割高ですが、メタボになるよりは良いと思います。

通信販売、ネット販売でも入手できます。私のお勧めは「楽園フーズ」です。力作の太らないパンやケーキがいろいろあります。

 

料理000679m事例5: 私は便がたくさんでないと気分が悪いのです。糖質制限食をやると便が減るのでやる気になれません。

これは重要点をついた良いコメントです。

実際、糖質制限食で便は減り気味になります。というのは炭水化物とは糖質+繊維分(ファイバー)であり、繊維分が減れば便も減るからです。

そこで糖質制限食をやるときには、ちょっと多いなと思うほどに野菜を食べるのです。海草なども良いでしょう。そうして便の量を増やすと理想的な糖質制限食に一歩近づきます。

 

事例6: 私は仕事柄、外食することが多いのでなかなかダイエットできません。

なんだかお気持ちは Toshikoshisobaわかるのですが、外食でもかなりの程度まで糖質制限食はできます。ようするに定食のうち、ごはん(お米)を食べずに、油や野菜やたんぱくの多いおかずを一品加えれば良いのです。あるいはご飯を食べずに、あとでナッツを食べておけば良いのです。

私は病院の職員食堂でお昼でダイエットするときは、ご飯をもらいません。そのままでは少し空腹感がでるので、サラダにマヨネーズをおおめにかけて食べます。これでダイエットが進み、満腹感もまあまあ得られます。

少し気になるのが、ダイエットができない原因を仕事や外食のせいにして、努力から逃げているように見えることです。こんなに簡単にできることをなぜしないのか、と考えると、結局は「ダイエットする意思がない」と思えるのです。

まあそういう場合はあえて無理をせず、患者さんがその気になられるのを待つようにしています。

Ilm20_ae01008-s事例7: 私は仕事の都合上、夕食が遅いのでダイエットができません。

遅い夕食は確かに、できる範囲でなるべく早くするのが理想です。

しかし理想ばかり論じても現実がそれを許してくれないのであれば、遅い夕食の範囲内で工夫する必要があります。

ローカーボダイエットは、こうした遅い夕食にもうってつけの方法です。ローカーボでしっかり食べて、バタン+グーでも太らないのです。

ただし胃が満タンになった状態で寝ることの問題、たとえば逆流性食道炎とか慢性胃炎その他のトラブルが次第に起こるかも知れません。それは遅い食事そのものの問題であって、ローカーボの問題ではないのですが、ともあれ、健康を守るという視点からは、少しでも早い夕食をお願いします。

Food_morisoba事例8: おそばなら太らないと聞いたのでおそばを食べていたら、いくらそれ以外はローカーボのメニューでも痩せられません

これもよくある誤解です。おそばが太らないというのはご飯やうどんと比べてすこしマシというだけの話で、食べないよりは食べた分だけ太ります。

これはローカーボダイエットでステーキや焼き肉、ハンバーガーなどを食べても太らないのと意味が違います。

おそばで太るのははちみつで太るのと同じ意味合いです。

事例9: 麦飯は太らないはずなので食べてますが、それ以外はローカーボしてるのに痩せられません

これもおそばと同じ意味合いです。

麦飯は素晴らしい食品です。しかしそれは白米と比べての意味であり、何も食べないよりは麦飯は太ります。

麦飯を食べるなら、一日1回、白米を食べるときに、その代わりに食べる、これなら良いたべものとして威力が発揮されるでしょう。

事例10: 健康のため毎朝市販 Ilm04_ea05003-sの野菜ジュースを飲んでいます。ダイエットしても痩せません。

野菜ジュースはたとえお砂糖を添加していなくても糖分が多量に含まれるものが多いのです。中に含まれる人参その他の影響のようです。

そもそも野菜の中で大切なのは繊維分、ファイバーです。ジュースではこの多くが失われます。また濃縮果汁還元などの場合は壊れやすいビタミンも激減し、これまた野菜とはちがうのです。自然に行きましょう。それがベストでは? (右図はオレンジジュースですが、野菜ジュース同様、ダイエットにはやや要注意です)

事例11:和食は健康に良いと聞いたので食事は和食、お菓子は和菓子にしていますが、太って困りま Setsubun_ehomaki3

和食も和菓子も炭水化物は多いのです。洋食や中華と比べるとはっきりします。

しかし和食は太らないという方もおられます。たとえば和食の割烹の店の方などですね。確かに和食は量が少なく、トータルのカロリーが少ないこともあり、その場合はそれほど太りませんが、盲点がありそれに陥ると太ります。

その一方、洋食や中華では脂っこいものは多いですが、パンやごはん、麺類を食べなければ理想的なローカーボ食となり太りません。極端な例では、ビーフステーキにフォアグラを乗せてたっぷりな野菜とともに食べても炭水化物を抜くなら太らないのです。コレステロールなども下がります。この意味がわかると痩せるのには苦労しなくなります。

事例12: 朝食はトーストとコーヒーだけにしているのですが、、、痩せられません。

朝食に 朝食もローカーボ(糖質制限食)をやる場合、それではだめですね

フルコースの朝食からトーストを抜いて食べると、お腹も膨れてしかもやせられてばっちりですよ。

つまりサラダ、卵、ハムかベーコン、砂糖抜きのヨーグルトとコーヒーですね。

ちなみにもしよろしければコーヒーより紅茶のほうが食欲増進しないので有利です。


事例13: 私は夕食時にご飯を1ぜんだけにしていますが痩せません。

これは糖質制限食の Food_okayu盲点のひとつかもしれません。

夕食時にご飯1ぜんだけというのはそう悪くありません。どちらかと言えば痩せやすいかも知れません。

しかしここでいちおう糖質制限だからといってお肉やハム、魚その他をしっかり食べたのでは太る恐れが大なのです。

というのはわずかなご飯のため膵臓からインシュリンが出ると、お肉などの油分がしっかり吸収されて体の中に蓄積するからです。

ご飯1ぜんは悪くない、しかしそのためにお肉その他が悪さをする、というわけです。

この場合の解決法は、ご飯をゼロにするか、お肉や脂っこいものをうんと減らすかでしょう。

うまく頭を切り替えてご飯を食べる場合と食べない場合のメニューを工夫しましょう。

 

(以下つづく)

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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ローカーボダイエットの実際は

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この低炭水化物・高脂肪ダイエット(糖質制限食)のポイントは、

 

1.もちろん炭水化物つまりご飯、うどん、パン、甘いものなどを減らす。

たとえば朝食と夕食うどんは美味しいですがうまく食べないと太るもとです でご飯・うどん・パンなどを食べない。

軽くやりたい方には夕食だけとか朝食と昼食で。

目標体重になればある程度緩めることができるでしょう。

炭水化物が多く含まれる食品にご注意を!

たとえばバナナ、イモ類、かぼちゃ、にんじん、豆、レンコン、牛乳などは炭水化物が多く含まれ、やや太りやすくなることを知って下さい

ただ牛乳やニンジンなどでわかるように、からだに良い優れた食べ物も多いため、ある程度の量は食べるべきです。量を過ごさないように、そしてその分どこかで炭水化物を節約する必要がある、ことを知って頂きたいのです。

 

2.炭水化物を食べないときは脂肪はしっかり食べて良い。

それによって空腹感が取れて苦痛が少なく長続きします。

これが従来のカロリー計算主体のダイエットとの違いです。

すると夕食でステーキや焼き肉をたべても、ご飯やパンやイモ類を食べなければそう太らないわけです。

あるいはハンバーグの大盛りやてんぷらを食べてもおなじ注意をすれば太らないのです。なおてんぷらは衣の部分に炭水化物が少し含まれるため、その分、ご飯や甘いものを食べないようにすればよいのです。

 

天丼などのように油と炭水化物を同時に食べるのは不利です 3.しかし炭水化物と脂肪は同時にはあまり摂ってはいけないのです。

これが盲点でこれを克服できればあとは楽です。

 

4.タンパク質はこれまで通りの摂取でOKです。

野菜は積極的にたくさん食べましょう。お豆腐やあげなどの植物性の食品もしっかり食べてください。

赤肉つまり牛肉や豚肉は、ある程度食べるのは良いのですが、食べ過ぎるとがんその他の問題が発生します。

その反対に、チキンや魚の肉はがんを増やさず健康食たんぱくとなります。

 

5.おやつにはナッツ類(植物性!)を勧めます。

アーモンド、ピーナッツ、くるみなどですね。今話題のω3脂肪酸をたっぷり含み、それ自体が健康に良いのですが、満腹感が得られるため余計なつまみぐいをしなくて済むという大きなメリットがあります。

植物性でファイバーやポリフェノールも含まれて良い食べ物です。

それ以外では砂糖抜きのヨーグルト、たとえばダノンやLG黒ラベル、時にはチーズなども良いでしょう。

 

6.御心配な方には定期的に血液検査(血糖値や中性脂肪、善玉HDL、悪玉LDL、肝臓、腎臓など)で体が良くなることを確認されることを勧めます。

私の外来では定期健診のなかに血液検査を含めています。

炭水化物を減らし、脂肪を増やしても、血液の中のあぶら、つまり中性脂肪や悪玉は増えません。

ともあれ検査を定期的に受ければ安全安心です。

 

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ローカーボダイエット(糖質制限食)

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1. 糖質制限食が必要になった背景

現代は飽食の時代のためか、さまざまなダイエット法が行われ紹介されています。

メタボリック症候群、肥満は糖尿病を誘発したり悪化させますし、高脂血症のようにコレステ ロールや中性脂肪を増やし、高血圧を悪くします。

それらのために腎臓や狭心症などの心臓病を引き起こしたり脳血管障害から脳梗塞などに至ることも少なくありません。
肥満は現代人の大きな問題です。

肥満対策として食事と運動が大切なことにはどなたも異存はないと思います。
ただし運動は少々頑張っても消費カロリーは少なく、すでに肥満になっている方が普通の運動だけで痩せるというのは無理があります。

もっとも運動は筋肉を増やし基礎代謝率をあげる、つまり休憩や睡眠中でもカロリーを消費してくれるため、運動そのものは意味があります。

ただ運動で脂肪をすぐ消すほどのパワーはないのです。
つまりやせるためには食事療法、ダイエットが必要なわけです。

2. そこで糖質制限食の誕生

ダイエットブームの中で10年ほど前から、糖質制限食、別名ローカーボダイエットが話題となり普及していきました。

1. ローカーボダイエット(糖質制限食)とは?その内容・特徴を解説します。

糖質制限食とは単に糖分や炭水化物を減らすだけではありません
それではお腹がすいて、長続きしないのです
脂肪をうまく食べて糖質の代わりをさせる、これがポイントなのです

ローカーボダイエット(糖質制限食)とは?

2. ローカーボダイエットの実際は

意外に簡単なような、しかし盲点もあり、やはりきちんとした知識を得てからやるのが良さそうですね。

何しろ、「私はこんなに真面目にローカーボやってるのにほとんど痩せない!」という方から、「4か月で12kgも痩せました(#^.^#)」と言う方まで、実にさまざまです。
そういう差がでるのにはわけがあります。これを実際の食事のなかで考えましょう

ローカーボダイエットの実際

3. 患者さんから学ぶ糖質制限食の盲点

メタボや肥満で苦しんでおられる患者さんこそ最高の師匠です。
患者さんの声に耳を傾けると、どうすれば良いか、おのずと見えてくるのです。

患者さんから学ぶ糖質制限食の盲点

  • 市民公開講座から、糖質制限食の解説です

    なぜ苦痛なく痩せられるか、そのコツは、盲点や注意点とともにお話します

  • 市民公開講座から、栄養士さんのお話です

    より身近なところから解説してくれます

3. 日本ローカーボダイエット(糖質制限食)研究会:

灰本元先生のご指導のもと、安井先生、中村先生、加藤先生はじめ実力派の先生方のお力で誕生したNPO法人研究会です。私も僭越ながら理事として立ち上げから参加させて頂いています。

巷によくある民間療法的なものではなく、科学的な、EBMにもとづいた、医学としての科学的ダイエットを極める研究会です。民間療法のダイエットではがんや動脈硬化を増やし長期死亡率を上げることが報告されているのです。

1. 第1回日本ローカーボダイエット研究会にて

ついに研究会を立ち上げました!

詳細はこちら

2. 第2回日本ローカーボダイエット研究会にて

ハートセンターの栄養士さんも発表してくれました。

詳細はこちら

3. 第3回日本ローカーボダイエット研究会にて

活発な討論内容の印象記です。畏友新井先生も素晴らしい内容を発表して下さいました

詳細はこちら

4. 第4回日本ローカーボダイエット研究会にて

下記の新・教科書の発刊を記念する学術集会を兼ねて多数のご参加のもと、内容ある発表と議論がなされました

詳細はこちら

5. 第八回日本ローカーボダイエット研究会にて

健やかに老いるための高齢者の生活管理というテーマで開催されました。

詳細はこちら

<お知らせ>

平成25年11月についに上記NPO法人日本ローカーボダイエット研究会から教科書を発刊いたしました。
この画期的な糖質制限食の教科書のご説明はこちらをご覧ください。
正しく、科学的で安全な、本物のローカーボダイエット(糖質制限食)の真髄に迫ります。
医療関係者、糖尿病やメタボの患者さん、健康にスリムになりたい方々などにお役に立てれば幸いです。
ぜひご笑覧ください。もよりの書店やアマゾン、あるいは仁泉会病院受付でも販売しています。また御意見やご質問などをお寄せ頂ければと思います。

6. 第30回 奈良市民公開健康講座で「最新の心臓手術と科学的ダイエット」というテーマで講演しました。

その内容を平成26年3月10日付奈良新聞に掲載して戴きました。
参考になればうれしいことです。

5. NHK文化センター京都教室で講演

「このままでは危ない!心臓病と科学的ダイエット」 2014/4/13(日) 13:00-15:00 案内から:心臓外科名医として数多くのマスコミに取り上げられてきたスーパードクターの講演会。
突然訪れる心臓病について、有名人の心臓手術を例にとりながら、予防・治療・手術などの観点から、ためになるお話をして頂きます。また、予防のための正しいダイエット指導もございます。
(講演は盛況の中、終わりました。皆さん、ありがとうございました)

5. NHK文化センター梅田教室で講演

「糖質制限食ダイエットを心臓病の治療にも活かす」 2014/5/11(日) 13:00-15:00 案内から:心臓外科の名医として数多くのマスコミに取り上げられてきたスーパードクターの講演会。
話題の糖質制限食が心臓病の予防や治療にも役立つことがわかりました。心臓病や心臓手術を通して正しいダイエットを考えます。
(おしゃれな建物で、講演はにぎやかに終了しました。皆さんに感謝しております。)

メモ
お茶と科学的ダイエットは切っても切れないご縁があります。
どちらも役立てて行きたいものですね。

<お茶の効用1>

煎茶の会での講演内容、お茶がどう健康によいかを考えました。科学の眼で調べてみました。

詳細はこちら

<お茶の効用2>

全国お茶サミット2012での講演内容をまとめました。

詳細はこちら

心臓手術のお問い合わせはこちら患者さんの声はこちら

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第一回日本ローカーボ食(糖質制限食)研究会

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昨日、日本ローカーボ研究会(糖質制限食の研究会です)の第一回研究会(学術集会)が名古屋で開かれました。

 

立ち上げて間もない新たな研究会の、それも第一回集会とあって、

少人数で親しくアットホームにやろうと考えていましたが、

IMG_0013ふたを開けてみますと70名を超える方々のご参加があり、会場は満員の盛況でした。

 

今回は初めての集まりのため、世話人を中心として基調講演を行い、

そこからより多くの方々のご意見や次の活動へとつないでいこうというスタンスでした。

まずこの会の代表世話人である灰本元先生(春日井市の灰本クリニック)からご挨拶がありました。

 

基調講演は医史学と漢方内科の大家である安井廣迪先生(安井医院)で進められました。

Ilm15_bb02002-s まず(1)灰本クリニック 灰本 元先生が、ローカーボ食(糖質制限食)の現状と課題を概説されました。

8年以上の経験の中から築き上げて来られた安全なローカーボ食の方法が、

この1年間でさらに磨きがかけられたと感嘆いたしました。


ついで
中村 了先生(中京クリニカル)が

 (2)ローカーボ食(糖質制限食)の症例: 糖尿病と肥満について実際の治療経験の中からお話しされました。

プライマリケアと地域医療を熱心に進めて来られた中で、

ローカーボ食(糖質制限食)を無理なく患者さんが実践できるよう工夫されているのが良くわかりました。


名大名誉教授(生物学) 加藤 潔先生は

 (3)稲作民にとってのローカーボ食(糖質制限食)というテーマでご自身の20年以上の糖尿病対策のご経験を披露されました。

いかにも本物の学者らしい、緻密なデータの集積に感心しました。

CIMG1918 不肖、私(米田正始)は

(4)血圧管理へのローカーボ食(糖質制限食)の応用というテーマで、心臓外科医の立場からなぜローカーボ食に関心をもち、なぜそれを推進するようになったかをお話ししました。

まず名古屋ハートセンター心臓外科での実際の心臓手術事例を3例ほど提示しました。

患者さんの術後の苦痛をやわらげ早い社会復帰をうながすMICS(低侵襲心臓手術)ポートアクセス法)の実際を供覧し(写真はポートアクセス法での僧帽弁形成術のあとの創です、右乳腺のすぐ横にある短い線が創部です)、それがメタボの方の場合どのように難しくなるか、また術後もどういう対策が必要かなどを解説するなかでローカーボ食の意義をお話ししました。

さらに急性大動脈解離緊急手術で助かった若い患者さんが108kgの体重のままでは長期的な健康は守りきれないことからローカーボ食(糖質制限食)で肥満を減らす中で高血圧を改善する様子をお示ししました。

さらにオフポンプ冠動脈バイパス手術でカテーテル治療PCIではできないような長期安定した状態を示すなかで、二次予防のためローカーボ食(糖質制限食)でのメタボ改善が役立つことを示しました。

そのうえで実家の内科外来でローカーボ食で体重を大きく減少させるのに成功された患者さんのデータの中から、高血圧の治療への貢献を示しました。

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小又接骨院 村坂克之先生は 

(5) 食事と飲酒前後の血糖値測定の体験というテーマで、実にユニークな講演をされました。

堂々としたご体格と酒のことなら何でも聞いて下さいといわんがばかりのお酒好きの先生が、

さまざまなお酒、たとえば赤や白のワインからビール、日本酒、焼酎、梅酒その他の飲用後の血糖値の変化を自らが被験者となって調べられました。

ワインは赤だけでなく白でも辛口なら血糖値はそう上がらないことや、焼酎やシャンパンも良いことが示されました。

しかし血糖値が上がる甘口ワインやビールなどのほうが酔い心地が強かったとされたあたりはお酒を心から愛する先生の想いが伝わり納得してしまいました。

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最後に灰本クリニック 管理栄養士 篠壁多恵さんが(6)ローカーボ食(糖質制限食)の指導方法 というテーマで有効なローカーボ食指導の実際を紹介されました。

医師の講演とはまた一味ちがう、管理栄養士さんからの、実用性あふれるお話しでした。

笹壁さんはこれまで実によく勉強し毎日の医療の仕事から論文を含めた学術的ことまでこつこつと積み上げて来られた方ですが、

その努力の一部がよく見える充実した内容でした。

 

この会が今後、医師や医療、厚生省、製薬会社といった従来のパラダイムから、

さまざまな医療者、農水省、食品会社といった、

より幅広い枠組みで展開することを予想させてくれる内容でした。

 

IMG_0101基調講演のあと、安井廣迪先生の司会でパネルディスカッションが行われ、さまざまな質疑応答が行われました。

満員御礼の会場にはローカーボ食(糖質制限食)を医療の中ですでに実践しておられる先生方や栄養士さん、看護師さんらも多数おられ、

これからの大きな展開を予感させてくれる熱い雰囲気でした。

ご参加も名古屋市内各地はもとより東海地方全域、さらに関西や裏日本、中には下関から来て下さったかたもあり、うれしく思いました。

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研究会のあと、懇親会が行われました。普通の研究会後の懇親会と違うのは、

ローカーボ食品(糖質制限食品)がメーカーさんのご協力で並べられ、実際に味見をしながら説明が聞けたことです。

まだlow carbo+high fatまでは熟し切れない傾向を感じながらも、

これからの展開が楽しみになる、すでに基盤はできつつあることを感じました。

 

ご参加の方々と直接お話ししていますと、従来の食事療法とローカーボ食(糖質制限食)が違いすぎて、なかなか受け入れられないのではないか、というご意見もあり、

実際糖尿病学会やそのジャーナルではローカーボは排斥される傾向があるようで、

いつの時代もパイオニアは大変だと思いました。

しかし患者さんが元気になるという結果が蓄積され、より多くの患者さんや市民が賛同・参加され、

より多くの医師・医療者・健康関係者が集うようになればおのずと道が拓けるように感じました。

 

昔ある先生から別件で教えられた、パイオニアの概念を以下に記します。

 

「10人の人間がいる中で新しいことをする人が1人いるとき、彼は単なる変わり者だ。誰も彼を相手にしないかも知れないし、迫害さえする人もあるかも知れない。

しかし新しいことをする人が3人になれば、少し事情は違ってくる。その3人はもはや変わり者ではなくパイオニアであり、他の7人は正常人というよりは時代遅れだ。

新しいことをやる人が5人になれば、残る5人はもはや焦りと不安にかられる存在に堕落するかも知れない」と。

 

良いものは良い、という信念をもちつつ、着実に結果を残して行く、

また従来の方法を実践する人たちを決して批判したり無視したりするのではなく、

一緒に勉強するというスタンスで進めるのが望ましいように思った研究会でした。

次回は半年後ですが、より多くの先生方・医療者・健康関係者の方々のご発表やご参加を頂けるのが楽しみです。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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日本ローカーボ食(糖質制限食)研究会に期待します

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この5月に日本ローカーボ食研究会が立ち上がりました。ローカーボ(糖質制限食)とはご飯や麺類、パンなどの炭水化物をうまく減らした食事のことです。

メタボ全盛の現代、患者さんの健康を守るには適切なダイエットが必須であることはこれまでも多くの方々が考えて来られたことです。

Ilm09_ag04009-s 私は心臓血管外科の専門医で、これをライフワークとして、ひとりでも多くの患者さんをお助けすることにちからを入れてまいりました。たとえ他の病院でダメと言われたかたでも、自分たちの経験上、助かる可能性がある程度以上あれば、救命努力して来ました。京大病院でも豊橋ハートセンターでも名古屋ハートセンターでも、多くの方々のご協力のおかげで、多くの患者さんのお役に立つことができ、その都度、患者さんや周囲の方々の頑張りから感動を頂いて、また次の心臓手術や治療への糧にしてきました。

しかしメタボはさまざまな生活習慣病の原因です。糖尿 Ilm19_ca03020-s 病、高血圧、虚血性心疾患腎臓病血管病動脈瘤弁膜症心不全、など枚挙にいとまがありません。手術や薬だけ頑張ってもメタボ対策を立てないと、本当に患者さんをお助けしたことにはならないと痛感していました。

そんなとき、名古屋で実力派の開業医・灰本元先生と偶々出会い、そこでの勉強の中から、ローカーボ食(糖質制限食)の研究会を立ち上げようというお話を聞き、ぜひやりましょうということになりました。内科医の中村了先生、漢方医学の安井広迪先生、生物学の加藤潔先生、老年科の井口昭久先生といった、多彩かつ多才な先生方とともに、準備を進めてまいりました。また灰本クリニックの栄養士・笹壁さんやコメディカルの方々の積極的参加がこの会のバランスを一層優れたものにしていると思います。

ローカーボ食(糖質制限食)のユニークさや利点はこのホームページのローカーボダイエットのページや、立ち上がった日本ローカーボ食研究会のホームページをご参照いただくとして、これからこの食事療法をもっと科学的に解明し、正しい情報や方法を啓蒙していくことが必要と考えています。

というのは世の中のダイエット法には商業主義に走ったものや、中には危険な民間療法のようなものまであるため、それらと一線を画し、多くの患者さんの治療に役立つ、一般の方々のメタボ予防にも役立つ、医学的・科学的で安全安心なものを確立する必要があるからです。

Cj009b-s また開業医の先生からや内科・内分泌代謝内科・循環器科・老年化その他の先生方や製薬業界の方々の積極的なご参加が必要です。それによってこのローカーボ食(糖質制限食)という医学的方法は正しく成長し、人類に貢献するレベルに達すると信じるからです。

しかし現実は、ローカーボ食(糖質制限食)によって、たとえば糖尿病や高脂血症が大きく改善し、薬の売り上げが減るなどといった近視眼的な見方も一部にあるようです。それは本末転倒であり、患者さんが元気に長生きできるようになって初めて医療も製薬業界も長期的な繁栄があると信じます。

こうしたことを踏まえ、日本ローカーボ食研究会では勉強会・研究会開催とともに、ホームページなどで世界の医学論文を紹介したり、さまざまな建設的議論を通じて医療関係者や一般市民にまで情報提供を行う予定です。

皆様の積極的なご参加やご支援をお願い申し上げます。

(追記: この研究会のHPに私のブログが掲載されました。ご参考まで)

 

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新しいダイエット法、糖質制限食ダイエットについて―コロンブスの卵?

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私は心臓血管外科医ですのでメタボリック症候群の治療そのものはこれまで内科の先生方にお願いして来ました。

それは今後も同じと思いますが、手術前後の患者さんの治療の中で、私たち心臓血管外科医も積極的にメタボリック対策を進めることが患者さんに益するところが大きいと思うようになりました。

 

油が悪いのではありません、炭水化物が問題なのです。またカロリーがすべてでもありません。 名古屋ハートセンターがスタートした2008年10月から予想を大きく超える患者さんたちが手術のために来院下さり、

1年で約150例の心臓と大血管の手術ができました。

2年目は約200例、そして5年目には300例近くに達し、関係の先生方に深く感謝しております。(註:米田正始は2015年7月から仁泉会病院(外来や術後のリハビリ入院で)および医誠会病院(手術や治療)に異動いたしました)

毎日の仕事のなかでたまたま春日井市の開業医・灰本クリニックの灰本元先生から新しいダイエット法を学ぶ機会を得ました。

それが低炭水化物・高脂肪食ダイエット法(ローカーボダイエット、糖質制限食)です。

 

灰本先生はこのダイエット法(糖質制限食)を7年前に開始され、

豊富な経験の中で、血糖値を改善し、中性脂肪や悪玉コレステロールを下げ、善玉を増やし、それと同時に体重をしっかり減らせることを証明されました。

アメリカの国際ジャーナルでもその成果を発信しておられます。

その理論と実データを知り、私もこの低炭水化物・高脂肪ダイエットは良いと確信するに至りました。

 

そこで患者さんにいろいろご指導する前に、私自身でこのダイエット法(糖質制限食)を実践してみました。ステーキや焼き肉などもお腹いっぱい食べましたがダイエット成功しました

何しろ炭水化物を食べないときは脂肪はしっかり食べて良い、ということですから、

焼き肉やステーキ、ハンバーグ、魚は好きなように食べ、

天婦羅や唐揚げ、トンカツ・ヒレカツもしっかり食べ、

野菜にはドレッシングやマヨネーズ(!)をたっぷりかけて、

そこそこ運動はして半年間で8kg減量できました。

 

血液所見も、もともとすべて正常範囲でしたが、それがいっそう良くなりました。

中性脂肪や悪玉コレステロールがさらに減り、善玉は増えていました。

お腹にあった脂肪がぺしゃんこになり、体が軽いこと、比較的長時間の手術でも体が軽いため楽です。

灰本先生に感謝!しつつ、それを名古屋ハートセンター、かんさいハートセンターの心臓病患者さんや奈良の実家(米田医院)の患者さんに使うようになりました。

よろこびをおすそ分けするつもりでやっています。

真剣に取り組んで下さる患者さんでは効果は絶大です。

体重が5kg以上減った方は皆、上記の血液データや血圧などが明らかに改善していました。

中には10年も切れなかったインシュリン注射が3か月で切れ、しかも血糖値も良好安定したとか、

何年もA1cHbが10を超えていたのが、薬を変えずにダイエットだけで数か月で7まで改善したという方もありました。

 

私の友人の中にこの方法(糖質制限食)が気に入り、1カ月で8kg減らしたひとがいます。

ちょっと凄すぎますが、それほど効くのです。

2-3kg減らした方はすでに多数おられます。

それでも血液のデータ、とくにA1CHb(1か月の平均血糖値)やTG(中性脂肪)、HDL(善玉コレステロール)などは大きく改善していました。

 

このダイエット法(糖質制限食)は自然の摂理に合ったところがすばらしいと思います。

昔、弥生時代に稲作稲作は画期的な素晴らしいことでしたがインシュリン分泌を刺激し、肥満のもとになったと言われています。ご飯は上手に食べることが大切です。 が始まるまでの何百万年の間、人類は木の実や動物昆虫などを食べて、低炭水化物・高脂肪食を普通に実践していたのです。

現在もエスキモーの方々は同じタイプの食事を摂り、糖尿病も高脂血症もありません。

つまり現代人は膵臓が耐えられないほどの多量の炭水化物を食べた結果、メタボリックになってしまったのです。

 

そのカギはインシュリンを体にあまり出させないというところにあります。

インシュリンとは別名肥満ホルモンですから食べたものを体に脂肪として取りこんでしまいます。

このダイエット法ではインシュリンを膵臓にあまり出させないため、膵臓にも良いですし、

あまったエネルギーは体に取り込まれることなく尿に溶けて体外へ出てしまうのです。

ケトン体という形で。なのであらゆるメタボに有用なのです。

 

なお動物性の油を摂りすぎるはよくない、なるべく植物性をと指導しています。

事実、最近のNEJM誌(世界でいちばん信頼されている臨床系雑誌です)でも動物油を摂りすぎるときの弊害が報告されました。

逆に、植物性の食べ物をしっかり食べているとその弊害がむしろ普通以上に減るとされています。

 

ということでこの新しいダイエット法(糖質制限食)は心臓血管手術の患者さんの中で肥満が気になる方に米田がお教えしています。

奈良県の患者さんには米田医院の私の外来(月2回)で指導致しております。

より高度なダイエット(糖質制限食)には愛知県春日井市の 灰本クリニック・灰本元先生にお問い合わせください。

 

また日本ローカーボ食研究会という研究会を灰本先生らと立ち上げ、HPも公開致しております(日本ローカーボ食研究会ホームページ)。

ここで最近の欧米の論文やデータも得られるでしょう。医師、医療者とくに栄養士、看護師、薬剤師、製薬業界、食品業界、厚生労働省、農林水産省などの広範な支援で日本の国民健康増進に役立つでしょう。

ご期待下さい。

 

このダイエット(糖質制限食)では炭水化物(糖質)を食べないときに脂肪を摂ることを勧めていますが、

それが従来の食事栄養指導と正反対に見えて混乱する患者さんや医師が少なからずおられます。

しかし私の意見では、まったく矛盾しないのです。

 

というのは従来の食事栄養指導はご飯などの炭水化物を食べるという前提で脂肪制限やカロリー制限を行っていたのに対し、

ローカーボ食(糖質制限食)では炭水化物を食べないときに脂肪を食べて良い、と指導しているからです。

つまり炭水化物を同時に食べるかどうかという前提が違うだけなのです。

 事実、ローカーボ食(糖質制限食)でも炭水化物を同時に食べるときには脂肪はほどほどに、少な目にして下さいと指導しています。

 

つまり従来の食事栄養指導とローカーボ食は矛盾するのではなく、

その前提条件(炭水化物摂取)を変えたともいえるわけです。現

代のコロンブスの卵ともいえましょう。

 

そういうことでこれまでの食事療法で社会貢献して来られた糖尿病の先生方や管理栄養士の方々にもどしどし参加し、

より立派なものをいっしょに造って頂ければと願うのです。

お知らせ:平成25年11月に待望の教科書「正しく知る糖質制限食」が出版されました。単なるダイエット本ではなく医学書としても通用する内容をもった、医療者や患者さん向けの書です。ぜひご一読下さい。

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