学生さんからのお便り1: 臨床実習を終えて

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学士入学というのはアメリカでは標準なのですが、日本ではいわば出遅れ組に属するかたちになります。

日本の臨床研修とくに外科系のそれは、病院その

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日本の研修とくに外科系研修のなかでは個人の工夫と努力は海外以上に必要なのです

ものが集約化されていないつまり一施設あたりの症例数、手術数が他国より少ないというこの国の特徴が災いして、効率のわるいものになりがちです。

 

この効率の低さが学士入学組の先生方には重い負担になっています。というのは外科系は20代30代の若い時期にしっかりと腕を磨かないとそれ以後少々努力してもなんとなく不器用、という結果になりがちだからです。これはスポーツや音楽と似ているように思います。手術は本来頭でやるものなのですが、手を動かすことを介して行うという特徴からやはり若いスタートが有利になるのだと思います。

しかしそうとわかれば対策が立つ、というのが私の持論です。

20代半ばから手術の練習をやり、海外での進展を期してそれに必要な英語を磨き、何より年齢にこだわらない、柔軟な頭をもつことが大きな進歩につながると思います。

学士入学した医学生や研修医の実習ではこれらを考慮して私なりに特別メニューで指導しています。気持ちは「失った数年という時間を取り返す」です。

以下はことしの夏に臨床実習された学士入学の学生さんからのお便りです。

1年生で医学を何も知らないのに実習?という考えが多いようですが、まだ感受性の高い、何も毒されていない1年生だからこそ実習が意義深いと私は思います。医学を知らないから患者目線で見ることができるのです。

最初に戴いたメールと、実習後のものをUpします。個人情報は伏せて、ご本人のOKを頂いています。これからしっかり展開してくれればこれほどうれしいことはありません。

 

******** 学生さんからの最初のメール *******

米田正始 先生

はじめまして。
私、**大学医学部医学科1回生の****と申します。

この度、「心臓外科手術情報WEB」の記事を拝見致しました。1回生からでも学生実習を受け入れていただけるということ、また、「一流」になるための進路相談も受け付けてくださるということを知り、連絡させていただきました。

私は、**大学を卒業した後、**大学医学部に入学した所謂「スタートに出遅れた」人間です。現在、24歳です。だからこそ、人と同じことをしていたのでは絶対「一流」にはなれない!と思い、少しでも早く「一流」の先生に教えを請わねば、と考えて、医学部入学以来、ずっとチャンスを探しておりました。

心臓外科は、「一流」になるまでに大変長い時間がかかると言われています。ましてや、私のような「スタートに出遅れた」人間は尚更不利でしょう。しかし、「一流」になれば、自分の腕一つで、目の前の人を救える。そしてその高みに到達するために生涯通して修練を続けていく、そんな「プロフェッショナル」な生き方をしたくて、私は医師を志しました。また、先生の書かれたブログには、私のような「スタート出遅れ組」向けのアツいメッセージもありました。ブログに書かれていたモデルプランと同じく、私はちょうど30歳で医師になる予定です。40歳までに一人立ち、そのために今から何をすべきか、なるべく早いうちに理解しておきたいと考えています。

是非、米田先生に、「一流」になるためのヒントを与えていただきたい!と思い、連絡させてもらいました。

私は、8月の後半に時間があるので、その時期に実習をさせていただきたいのですが、このような連絡をさせていただくのは初めてなので、失礼がありましたら申し訳ありません。

お忙しいとは思いますが、ご検討よろしくお願い申し上げます。

**大学医学部医学科
1回生
****

 

******* 実習後に戴いたお便り ********

米田 先生

先日はたいへんお世話になりました。**大学医学部の****です。

お忙しい中、私のような無知な一学生にわざわざ時間を割いていただき、本当に感謝しております。

今回の実習は、たった1週間という短い時間でしたが、私にとってはいろんな意味で「ターニングポイント」となった経験でした。

まず、医療現場の実際をリアルに体験することができたこと。特に手術にとても近い距離で関わらせてもらったことは非常に刺激になりました。わからないなりに、少しでもわかるようになりたいと、毎晩ホテルに帰ってからテキストで今日の手術の復習と明日の手術の予習をしていました。もちろん、まだまだわからないことだらけでしたが、ここに来なければ知り得なかったこともたくさんありました。

次に、米田先生直々にたくさんの教えをいただいたこと。空いた時間に数名の患者さんとお話させてもらいましたが、どの方も「米田先生に助けていただいた大切な命」とおっしゃっていました。それでいて、おごることなく、ただ毎日淡々と目の前の命と向き合い、プロの仕事を完遂する、そんな先生の「超一流」な仕事の姿勢、生き方に、私は本当に感銘を受け、自分も必ずこんな超一流の心臓外科医になる!と心に決めました。

そんな素晴らしい先生に、直々に教えをいただけたのは、私の財産ですし、これからもまだまだ先生からたくさん学びたいと思っています。

まずは、先生に教えていただいたように、医学生の6年間でしっかり下準備をしていこうと思います。そして、まとまった時間が取れる時には、こまめに病院実習に行かせて下さい。また、各ハートセンターはもちろんのこと、先生の人脈で、いろんな病院を紹介していただけたら、と思っています。やはり実際に臨床現場を体験するだけでも、バンバン知識が入っていきますし、何より高いモチベーションを保てるので。よろしくお願いします。

今の時代、なかなか言わないのかもしれませんが…

僕を弟子にして下さい!
お願いします!

最後になりましたが、北村先生、木村先生はじめ、看護師の方々や他のスタッフの方々によろしくお伝え下さい。

皆様のおかげで、自分の医師人生の第一歩を最高の形で踏み出すことができました、と。

本当にありがとうございました。次は、新設のかんさいハートセンターに勉強しに行かせて下さい。よろしくお願いします。また先生にお会いできるのを楽しみに、しっかり修練を積んでおきます!

別件

手術道具ですが、どういう手続きになりますか?
また教えてくださると思いますが、一応、私の現住所を記しておきます。

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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