機能性僧帽弁閉鎖不全症や拡張型心筋症に対するデュアル形成術【2021年最新版】

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最終更新日 2021年1月2日

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⬛️ デュアル形成とは?

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2019年のアメリカ胸部外科学会僧帽弁シンポジウムで発表した図です

私たちが開発した乳頭筋最適化(略称PHO)術と、心尖部凍結型左室形成術を同時に施行する手術のことです。

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これまで乳頭筋最適化術は左室の直径が65mmを大きく超える時には必ずしも安定した効果を出せないと考えて来ました。全国的にも世界的にもそうした患者さんは弁形成の対象外でした。

しかし心尖部凍結型左室形成術を加えることで、左室の直径が80mmー90mmを超える、「末期」と言われる患者さんでも安定した弁形成の結果を出せるようになりました。人工弁を使うとどうしても左室のパワーが落ちるため弁形成にこだわりがあります。

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そのため重症の機能性僧帽弁閉鎖不全症、虚血性僧帽弁閉鎖不全症にこれまでにない効果的な術式と考えるようになりました。

以下はここまで主要学会(アメリカ胸部外科学会、アジア弁膜症シンポジウム、日本胸部外科学会、日本心臓病学会、日本冠疾患学会、日本冠動脈外科学会など)で議論した内容の抜粋です。

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⬛️  なぜ心臓が良くなるの?

過去30年間の研究と、内外の心臓外科医との共同研究やディスカッションで判明している範囲でご説明します。

1。僧帽弁閉鎖不全症が軽減ないし解消できる。心不全に合併する僧帽弁閉鎖不全症は弁そのものが悪いのではなく、左室が歪むため弁も引っ張られて歪み(これをテザリングと呼びます)、逆流が発生します。左室の歪みを治すため弁も治るのです。

2。心機能が改善、つまり心臓のパワーアップができる。心不全の心臓で乳頭筋を前方へ吊り上げると、それだけで心機能の改善が図れるという科学データがあります。これを弁ー心室連関と呼びます。加えて左室心尖部をベスト状態に形成するため、弁ー左室ー心尖部の連関が改善できるのです。これらによって心機能はさらに改善しますが、さらに1。の僧帽弁閉鎖不全症が軽減するためいっそう心機能が有利に運ぶのです。

3。これらの結果、心臓とくに左室左房のうっ血が軽くなります。具体的に申せば左室拡張末期圧が下がるのです。このため患者さんの運動能力は改善します。

4。致死性不整脈が減る。手術前に致死性不整脈が出ていた方々が、術後は出なくなるという経験を8割の患者さんでしています。おそらく3。の左室拡張末期圧が下がり、心臓の筋肉の状態が改善するためと考えています。冷凍凝固などで左室の内側を焼くと不整脈が止まることがありますが、これは左室の筋肉を壊すためあまり広いエリアに使いたくないのです。

 

まだ改善の理由が完全には解明できておらず、現在検討を進めています。近い将来その成果も発表できるものと考えています。

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⬛️  カテーテルでとり付けるMクリップとはどう違う?

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Mクリップは上記の4つの改善のうち1。つまり僧帽弁閉鎖不全症をある程度改善するのですが、左室そのものに効く治療ではありません。弁逆流が減った結果、間接的に左室が一時改善することはありますが、本来弁の先端部を形成するだけの弁治療であり、心室治療ではないのです。

じっさい、Mクリップでは心機能が悪い患者さんでは効果が上がりにくいことがMITRO-FRなどの大規模臨床試験で示されています。→→→もっと見る

ここまでのデータで、Mクリップが効かない大きな左室でもデュアル形成なら治せるのです。

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⬛️ これまでの乳頭筋最適化術プラス従来型の左室形成術(ドール手術やセーブ手術)とどう違う?

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手術で心臓を止める時間が短縮でき、術後の立ち上がりが違います。かつ乳頭筋の位置が自然状態により近くなり、左室の形や左室心尖部も同じです。

このため僧帽弁形成術としてより効果が高く、また左室のパワーアップも図りやすいものと考えています。

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詳細は現在検討中ですが、左室の自然なねじれ運動が回復しやすいという印象を得ています。

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⬛️  どんな時に効きにくい?

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これまで効きにくかったケースはないのですが、理論的には僧帽弁後尖が縮んだり硬くなったりしたケースでは後尖の拡大が必要かも知れません。そうしたケースでは最初から後尖拡大を併せ行う予定です。なるべく人工弁・弁置換は避けたいものです。心機能を低下させるからです。

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⬛️ どんな時に特に良く効く?

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機能性僧帽弁閉鎖不全症が高度なとき(つまり弁逆流が多いとき)、拡張型心筋症が虚血性のとき、とくに心尖部が梗塞後の時などは、特に効果が大きいという印象を得ています。術後の改善度が大きく、あるいは左室の悪い部分を形成するためです。

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⬛️  今後の展開は?

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機能性僧帽弁閉鎖不全症に対してMクリップというカテーテル治療を行い、それがうまく行かなかったケースをお助けできればと考えています。もちろん若い患者さんや、ご高齢でも活発な生活を望まれる方々にも好適かと思います。Mクリップでは難しそうという時には最初からこの手術を施行するのが安全かも知れません。

これまでの経験で、「不治の病」とか「看取りしかない」と言われた人たちが、このデュアル形成手術によって続々と仕事復帰、社会復帰を果たしておられるお姿を拝見し、これからもっと啓蒙活動を進めなければと痛感しています。→→心移植を検討中の方々へ

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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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