最終更新日 2025年9月12日
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⬛️ Mクリップとは?
**MitraClip(Mクリップ)**は、カテーテルで行う僧帽弁逆流(僧帽弁閉鎖不全症:MR)の低侵襲治療です。→→Mクリップの解説はこちら
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主な対象:
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機能性僧帽弁閉鎖不全症(FMR)
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拡張型心筋症(DCM)に伴う弁逆流
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心筋梗塞やステント治療後の虚血性僧帽弁閉鎖不全症(IMR)
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僧帽弁の前尖と後尖を小さなクリップで中央部につなぎ、逆流を軽減させます。
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メリット:全身麻酔不要、胸を開けない、早期回復が可能。
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課題:逆流が完全には消えにくく、再発しやすい傾向が報告されています。
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⬛️ Mクリップで効果が不十分な場合
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一時的に改善しても、数か月~数年で逆流が再発することがあります。
- 特に心機能が悪いときや、後尖角度が45度を超える重症例では成績が良くありません
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欧米の報告では、Mクリップ後に弁が損傷し、**人工弁置換(弁を丸ごと取り換える手術)**になった例もあります。
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人工弁は有効な手段ですが、左室の形を不自然に変えることがあり、心機能低下のリスクを伴います。
👉 そのため、Mクリップ後の外科的再建が検討されるケースがあります。
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⬛️ 外科手術でも「弁形成」を目指す
当院では20年以上にわたり、機能性・虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術に力を注いできました。
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左室駆出率が30〜50%から時に20%台に落ちた重症心不全でも、弁形成で逆流を改善し心機能を回復させてきました。
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弁置換ではなく、弁形成にこだわる理由:
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左室の収縮力をできるだけ温存
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再入院のリスクを減らす
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社会復帰を目指せる
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⬛️ 最新の方法:デュアル形成術
私たちが開発した**Dual Repair(デュアル形成術)**は、
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乳頭筋前方吊り上げ術(PHO)
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心尖部凍結型左室形成術(Frozen-Apex SVR)
を組み合わせた新しい術式です。
この方法により:
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Mクリップでは改善が難しい大きく拡張した左室でも弁形成が可能
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弁逆流を減らすだけでなく、心臓のポンプ力を回復
COAPT試験やMITRA-FR試験で「Mクリップは効果が乏しい」とされたような患者群でも、当院のデュアル形成術で改善しているケースが多数あります。
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⬛️ 諦める前にご相談を
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Mクリップ後に逆流が再発してしまった方
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「もう移植しかない」と言われた方
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人工弁置換を避けたい方
こうした患者さんでも、弁形成+左室再建によって心機能を取り戻し、仕事や社会復帰を果たしている例が増えています。
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⬛️ まとめ
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Mクリップは低侵襲で有用ですが、全ての症例に効果的とは限りません。
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効果が不十分な場合でも、**弁形成術+左室形成術(デュアル形成)**という選択肢があります。
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「Mクリップが効かなかったら終わり」ではありません。
諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。
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執筆:米田 正始
福田総合病院心臓センター長 仁泉会病院心臓外科部長
医学博士 心臓血管外科専門医 心臓血管外科指導医
元・京都大学医学部教授
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